[Interview]
「BtoCのブロードビジョン」から「BtoBのブロードビジョン」へ
エンタープライズ・ソリューション提供へ向け本格発進

2000/12/13

 CD-R/RWドライブを買おうと思って、価格.comやらAKIBA PC Hotline!やらをのぞいた。その中に入っているいくつかのショップサイトは、私が“これ”と思ったCD-R/RWドライブの詳細を表示させると、「ほかのお客さまは、この商品とともにこちらの商品も検討されました」というメッセージといくつかの商品写真を提供した。「やってる、やってる」と思った。米国に比べて2年遅れているといわれるネット通販だが、分野によってはOne-to-Oneマーケティングも一般的に利用されるようになってきたのかもしれないと感じていた。

 ところが、日本ブロードビジョン 代表取締役社長 坂寄嗣俊氏は、この日本のOne-to-Oneマーケティング市場の広がりを「山登りにたとえたら、まだ1合目にすぎない」と語る。

日本ブロードビジョン 代表取締役社長 坂寄嗣俊氏

アジア地域での戦略拠点は日本

 同社は2000年8月、それまで米BroadVision社の支社として位置付けられていた組織を株式会社に変更した。正式な日本法人の設立である。

 坂寄氏は今この時期に日本法人化した理由を、米国本社の拡大戦略の一環と語る。モノやサービスの市場への浸透はS字カーブを描くという。しばらくの我慢の後にふっと足が浮き上がる瞬間があって、その後は爆発的に市場が広がっていくというものだが、米BroadVision社は今まさに足が浮き上がった瞬間らしい。「これを追い風として世界市場での販売比率も一気に高めよう、それならアジア市場では日本だ」というわけで、組織のてこ入れとなった。今はまだ1割の普及率でしかないが、このまま日本市場を放置しておくわけにはいかないという判断もあったようだ。

 日本ブロードビジョン株式会社のミッションの1つは、「BtoCのブロードビジョン」から「BtoBのブロードビジョン」という企業メッセージの修正だ。製品価格帯が1000万円を超える同社の製品のターゲット顧客は大企業だが、彼らが求めるのはフロントエンドシステムとバックエンドシステムを統合するトータルソリューション。その要望に合わせ、同社は製品ラインナップの拡充を図っている。その典型的な例は、『MarketMaker』という新製品でのマーケットプレイス市場への参入だ。

One-to-Oneを軸に、BtoCからBtoBへ

 この分野は日本の主要コンピュータベンダー、外資系ソフトウェアベンダーがひしめく激戦区だが、One-to-Oneマーケティング手法を生かした売り手と買い手のコーディネート機能で、特色を出すという。また、バーティカル・ソリューションの構築にも意欲を見せており、直近では米NCR社との技術提携により金融業界向けパッケージ製品の開発を急いでいる。いずれにしても、システムインテグレーションがカギを握る同社の製品にとっては、BtoB分野へのベクトルのシフトは方向性として合っているようだ。

 気になる日本ブロードビジョン自身の販売体制だが、基本的にはこれまでどおりチャネルパートナーを通じた間接販売のスタイルを取るという。しかし、直販をまったく手がけないというわけではない。全売り上げ比率の5%程度は、10人の直販部隊が各業種トップ10のラージアカウント攻略を担い、チャネルパートナーがお手本にできる理想的な販売事例を作っていくという。

 「米国が6年かけたことを日本では2年で完成する必要がある」とはマーケティングディレクターの大谷修造氏。年明けには東品川から渋谷にオフィスを移し、100名体制に向けてスタッフ採用にも意欲的だ。米国で築いた「One-to-Oneのブロードビジョン」の名を日本でも確立できるか。そろそろ本番勝負の時がやってきたようだ。

(吉田育代)

[関連リンク]
米ブロードビジョン社

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