「目標は“紙の手帳”」。ワイヤレスで可能性が広がる
ハンドスプリング株式会社
デベロッパーリレーションズ・ビジネス開発部部長
田中克哉氏

モバイルでは先行しているといわれる日本。2001年もビジネスへの利用という観点から、引き続き注目を集めそうだ。携帯が普及した中、PDAがどんな可能性でユーザーを魅了してくれるのか、ハンドスプリングでサード・パーティの機能拡張開発を担当する田中克哉部長にPDAワールドを紹介してもらった。

2001/1/5

――現在の日本のPDA市場をどう見ていますか?

目標は“紙の手帳”。非PCユーザーにも抵抗なく使ってもらえるものに

 日本のPDAは2000年に市場が形成されたといえます。それ以前にもすでにIBMやシャープが製品を出していましたが、4月にパームコンピューティング、6月にハンドスプリング、10月にソニーが参入し、本格的に盛り上がりました。現在、まさに3社三つどもえの状態ですが、どこも着実に数字を伸ばしてきています。

 PDAはアメリカではかなり普及してきていますが、日本では携帯市場がすでに出来上がった中でのスタートでした。不安もありましたが、良い結果が出せてきていると感じています。

――Visorのユーザー層は? またそのユーザー層に支持されている理由はどこにあると考えていますか?

 圧倒的にビジネスマンが多いですね。ユーザーは手帳機能に利便性を感じているようです。もともと目指しているのは“紙の手帳”。いかにこれに近い機能を持たせるかに挑戦してきました。

 ハンドスプリングのコンセプトは“Zen(禅) of Palm”で、シンプルさを追求しています。本体の機能は最小限に抑え、あとは拡張スロット「Springboard」にモジュールを差し込んで機能を拡張する。つまりユーザーが必要な機能を必要なときに装着するイメージです。シンプルであることは使いやすさを意味します。非PCユーザーにも抵抗なく使ってもらうためには重要な要素です。

 PDAはPCの代わりとまではいかないでしょうが、必要十分な機能を持たせればかなりのことが実現できるようになってきました。見積もりやスケジュール、コンタクト管理ならばPDA 1台で十分です。拡張スロットのモジュールとして、非接触ICカードやバーコードスキャナなどの業務用端末も登場しました。営業はもちろん、現場での作業にも用途は広がっています。また、特別なトレーニングなしに使えるのも大きな利点といえます。

 今後、改善すべき点は重さです。例えば、Visorの現在の重量は153〜196gで、ルーズリーフよりは軽いのですが“紙の手帳”という目標には達していません。

――今後、PDAでどんなことが実現するのでしょうか?

 まず、Visorについてお話ししましょう。ハンドスプリングの拡張スロットはホットPlug & Playを実現しており、差し込むと同時にドライバを自動インストールしてプログラムが起動します。現在はゲームやMP3プレーヤ、デジタルカメラ、ボイスレコーダなどがありますが、さらにさまざまなモジュールが出てくる予定です。万歩計機能や文字放送にも対応するラジオ機能、CompactFlashアダプタ、GPS通信などのモジュールも登場します。デジタルカメラは解像度がアップし、動画も撮れるようになったものが発売される予定です。

 現在、Visorのカラー対応機種では6万5536色を実現しており、PCとの差は縮まってきました。さらに、PDAでプレゼンテーションが行えるようになれば、ビジネスシーンでの利用が広まるでしょう。

 将来的には、Plug & Playを実装する通信系のモジュールの登場も考えられます。そうなれば、携帯電話なしに直接ダイヤルアップでインターネットに接続できるようになります。

 また、海外でも使える第3次携帯電話(3G)対応のワイヤレスデバイスが登場すれば、海外でもメールのやりとりができます。IMT-2000でローミングが実現しても、時差の関係で電話よりメールの方が便利だというケースは多いので、利用価値を見いだすユーザーは多いでしょう。

――Bluetoothも本格化しそうですが、PDAと組み合わせるとどのようなことが可能になるでしょうか?

 Bluetoothはワイヤレス以上に期待したい技術であり、ハンドスプリングではすでにモジュールの開発を進めています。電波波及範囲が10mで、不特定のデバイスにつながる。携帯電話も交えて応用すれば、いろいろなことが実現するでしょう。

 例えば、駅のホームに専用アンテナみたいなものがあり、その前を通ればニュースが受信できるとか、美術館で作品の前に立つと解説が読めるとか、映画館の前で上映映画のクリッピングが流れるとか……。文字と音声を上手に提供するサービスは、ハンディキャップを持つ人にも役立つ機能となることは間違いありません。

 現在進行中のプロジェクトとしては、小型のカメラを眼鏡のフレームに装着してBluetoothに飛ばすものがあります。これをPDAで受信して見ることができる、映画『ミッション・インポッシブル』の世界が現実になるわけです。

 ワイヤレスにしてもBluetoothにしても、動的なコンテンツが配信されるという点で画期的です。これまでの辞書やゲームなどの静的なコンテンツから、利用方法が一気に広がります。PDAはある程度個人化された端末なので、自分の欲しい情報を設定しておけばプッシュ型で情報が飛んでくるようなサービスが実現する、そんな展開も十分考えられます。

――携帯がすでに普及した日本市場でのPDAは、どのように発展していくのでしょうか? PCとのすみ分けも課題となりますか?

 アメリカでは、携帯電話とPDAが一体化したものが発売されています。音声とデータが同一のデバイスに載った、いわゆる“スマートフォン”です。日本での発売は未定ですが、アメリカと同じ形で市場が発展するとは思っていません。日本のユーザーは、電話には小さいものを好むし、すでに携帯電話がこれだけ普及しています。あえてPDAと組み合わせた携帯電話を使うユーザーは少ないでしょう。

 では、日本ではどのように発展するのかというと、音声は電話に任せて、PDAはデータに絞った形になると考えています。PDAの通信機能はインターネットにつなげるのみで十分でしょう。つまり、電話はシンプルに電話をかける・受けるという機能に徹して、残りの付加価値機能をPDAで補う、これが私のイメージする将来図です。

 必然的に、PDAは携帯電話では難しかった部分を補う機能の付加に着目することになります。iモードなど、携帯電話でのインターネット利用には画面の小ささと入力のしづらさという問題があります。ここにPDAのチャンスがあります。例えば地理情報などはカラーPDAの画面の方が圧倒的に使いやすいはずです。実際、NTTドコモは位置情報サービスをPDA向けに提供する子会社を設立し、実験段階に入っています。

 もう1つ、携帯電話との差別化のポイントは、PDAはコンピュータであるという点です。つまり、データの再利用ができるわけです。例えば、株価をチェックしてグラフに出したり、独自のポートフォリオを組んでいて、ある一定の価格で売買をするように設定する、などは携帯電話では不可能です。PDAの場合、データを受け取って加工したり、過去の履歴を見たり、計算式を組んでおくことができます。コンピュータとしての複雑な使い方ができるというメリットがいろいろな場面で生かされてくるでしょう。

Visorと拡張モジュール。PDAは場面に応じて機能を拡張できるようになる

 コンテンツに関しては、携帯でもPDAでも見られるように、WAPなどの規格とは歩調を合わせていきます。ECにしろ、モバイル・コマースにしろ、使う人の利便性を考えると会社のPCでもPDAでも携帯でもチェックできるのが理想でしょう。

 Windows CEが浸透しなかった最大の理由は“PCができることをこのサイズで”がコンセプトだったからだと思います。PDAはシンプルさに徹しているため、できることの限界が多いのですが、2001年はワイヤレス、Bluetoothをキーに一気に可能性が広がります。同じ市場のプレーヤとともに、PDAの魅力を伝えていきたいと考えています。

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