eビジネスソリューションの次なるビジネスは?(上)
 〜エンドユーザーのeビジネスが実稼働に入った今、 ソリューション・プロバイダの次のビジネスチャンスを考える

2001/5/19
By Rich Cirillo, VARBusiness 4:49 PM EST Fri., May 11, 2001

 Synapse Groupが1996年、初めてeビジネス事業に進出したとき、同社は出版業界を対象にオンライン購入サービスと運用サービスを提供するという明確なコンセプトを持っていた。だが、新興企業にはITのスキルが不足しており、当初の計画を実行に移すことはできなかった。そこで、SI事業者、Edgewater Technologyとパートナーシップを組むことにした。

 「ITに精通した企業じゃなかったから、アウトソーシングに頼るしかなかった」と、同社の執行部エグゼクティブ・バイスプレジデント John Rovegno氏は振り返る。「ソフトウェア、ハードウェアの選択などデータのアーキテクチャを広範囲に手伝ってくれるプロバイダが必要だった」(Rovegno氏)

 Synapseのビジネスは成功を収め、パートナーとの関係も変化した。Synapseは自社内にWebの開発者を雇ってチームを作り、同じく新しく設けたCIO、CTOが開発チームの管轄にあたった。その間もEdgewaterはプログラミングと開発の90%を受け持ち、Synapseの社内IT部門はネットワーク管理とバックアップ設備の重要な部分を担当した。

 SI事業者にとって、“クライアントの自社内IT部門の設置を助けることは自分たちを苦境に追い込むようなもの”というイメージがつきまとうものだ。なぜなら、自社内にIT部門を持てば、クライアントはアウトソーシング・サービスを必要としなくなるからである。しかし、Edgewaterの社員は、クライアントが自分の足で立つことを成功と、つまり、引き続きEdgewaterの収益源であることのサインと見る。

 「われわれは、クライアントが独り立ちできるようコーチしてナレッジを渡す能力は大切だと信じている」とEdgewaterの創業者兼CTOであるDave Clancey氏は言う。

 実際、Clancey氏は同社のリピートビジネスの比率が高い(96%)ことは、クライアントがEdgewaterの人質になることを恐れていないことの表れだと見る。「クライアントの中には転職しても、新しい転職先からクライアントを連れてきてくれる。つまり、クライアントが動くということは、われわれも新規顧客を得られることになる」

 常に変化する顧客のニーズを理解しクライアントを大切にするEdgewaterの姿勢は、次に何がビジネスチャンスになるかわからないeビジネスのソリューション・プロバイダにとって不可決といえるだろう。

 VARBusinessがエンドユーザーを対象に行ったIT支出と戦略に関する調査によれば、回答者の86%がeビジネス戦略を持っていると回答した。世間ではドットコムの終焉といわれているが、これらのエンドユーザーに話を聞いてみたところ、eビジネスのサービス市場がなくなっていないことは明確だ。

 多くのエンドユーザーが現行の自社のeビジネス戦略に満足しているものの、eビジネスに着手した43%の企業が2000年に多少の戦略の修正を行っている。その主な理由は、需要やポリシーの変化という(35%)。その他の回答には、eビジネス戦略をより効率よくするため変更した(28%)、採用技術を変更した(20%)、などがある。

 Navy Federal Credit Unionは、数年間コンシューマ向けのWebサイトを運営した実績を持つが、社内の運用をすっきりさせる必要性があり、Sysinctとの契約に至った。SysinctはIBMのビジネスパートナーであるIkon Office Solurtionのeビジネス部門。Navy Federalは、シン・コンピューティングのビジネスモデルに移行するという全般的な改革の一環として紙ベースのバウチャーシステムをWeb対応にする必要があった。

 「まず手の届くところから着手しようと計画した。そこで、アウトソースして様子を見ようと思った」と、Navy Federalのeコマース部門マネージャのJohn Charles Herzberg氏は語る。「その後、得たナレッジを社内スタッフにも広めることができる。そうすれば、ベンダとわが社が新しい方法を作り出す“混在型アプローチ”が取れる」と同氏は語る。

 Herzberg氏は、シン・コンピューティングのビジネスモデルに移行するにあたり、わずか15%しか完了していないという。そしてSysinctとは長期にわたり付き合って行くつもりだという。

 Sysinctの営業・マーケティング部副社長 Rocco Polino氏は、SI事業者は技術を取りつけてくれる業者と見られがちであったが、エンドユーザーはいま、ITの全般的なロードマップを実行していく手助けを求めており、SI事業者を戦略的なプレーヤと意識するように変化したという。明らかにエンドユーザーのニーズは絶え間なく変化しており、学ぶべき教訓が不足することはない。

 例えば、SynapseのRovegno氏は、「もしプロジェクトが完了すれば、Synapseのトランザクション・アプリケーションをバックエンドの財務システムと密接に統合できることが実証されたことになる。つまり、顧客にプレゼンテーションする材料が増えることになる」と語る。これは、同社の次世代eイニシアティブで大切な事項の1つだという。

 まとめると、eビジネスの次の波で成功をつかむことは、クライアントの抱える問題点を指摘し、その問題をダイレクトに解決するソリューションに結び付けることだといえそうだ。

*次回(5月22日掲載予定)は、ソリューション別の事例を紹介する。

[英文記事]
What's Next For E-Business Solution Providers?

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