[データストレージEXPO開催]
iSCSIなどIP‐SANに注目が集まる

2001/6/30

 6月27日から東京・台場でストレージのイベント「第3回データストレージEXPO」(主催:リードエグジビジョン ジャパン)が開催されている。ストレージはIT業界でも成長が期待されている市場とあって、昨年の2倍規模となった。会場では130社の出展社がデモンストレーションやセミナーを行って来場者にアピールした。

堅調な伸びが予想されるストレージ市場

 6月29日の基調講演では、6月27日に日本支部発足を発表したストレージの業界団体SNIA(Storage Networking Industry Association)会長ラリー・クランツ(Larry Krantz)氏がSNIAの活動内容とストレージの最新技術について、米ガートナー・データクエスト ストレージ・チーフ・アナリスト ロジャー・コックス(Roger W. Cox)氏が市場動向について語った。

 クランツ氏はSNIAの活動を紹介した後、ストレージ技術について語った(SNIAについては「ストレージの業界団体が国内で発足」を参照のこと)。ストレージ技術は、これまで主流だったサーバに直接ストレージを接続する形態(DAS:Direct Attached Storage)から、SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)の登場により、柔軟性や拡張性、可用性などの面で大きく進化した。

 「ストレージ能力の向上は12カ月ごとに倍増している。これはムーアの法則(「1個のCPUに載るトランジスタ数は18カ月ごとに倍増する」)よりも早いペースだ」とクランツ氏。そのストレージよりも早いペースで倍増しているのが光ネットワークの速度。現在、ストレージでは光ネットワークやIPネットワークとの統合が進んでいる。

 同氏は、2002年以降には、IPとSANをiSCSIやファイバチャネルを使って接続した「IP-SAN」が主流になると見ている。iSCSIはIBMとシスコシステムズが主導で標準化を進めている規格で、スイッチを経由せずIP網を通って直接ストレージ機器と接続するアーキテクチャ。既存のインフラを使ってストレージシステムが構築できることや拡張性に富むなどのメリットがあり、ファイバチャネルにとって代わるという説もある。だが、現在の帯域では問題がないが、ギガビット・イーサネットに移行した際はCPUを大量に消費する問題などが生じる。フランツ氏によれば、現在、TOE(TCP/IP Optimization Engine)の開発が進められており、このエンジンが解決策となるかもしれないという。

 一方のファイバチャネルを使う場合、トンネリング型(FCIP)、あるいはゲートウェイ型(iFCP)がある。いずれの場合も速度はiSCSIの2倍で、現在すでに利用できることからも、現時点ではファイバチャネルの方が優勢と見る。「iSCSIかファイバチャネルかの本当の戦いは、10ギガビット・イーサネットが出てくる2003〜4年頃」とフランツ氏。だが、両技術はその後も共存すると予想している。

 最後に、「ITは節約の手段と思われてきたが、収入に貢献する技術だということに気がつき始めた」とITの価値観が変わってきていることを指摘した。「以前は技術の管理が課題だったが、いまの課題は情報の管理」と、ストレージの重要性を強調した。

ロジャー・コックス氏

 続いて登壇したガートナー・データクエストのアナリスト、コックス氏は、世界のストレージ市場動向について説明した。

 2000年のストレージ全体の市場は300億ドル規模で、サーバ内蔵のRAIDシステム(23.6%)や外付けのRAIDシステム(14.9%)を押さえ、SANに代表されるRAIDコントローラやハードディスクを独立させたシステム構築が56.7%でトップを占めた。この市場でのベンダ別のシェアは、EMC(34.6%)、コンパック(10.8%)、IBM(8.1%)が上位3社。ちなみにNASは全市場の4.8%にとどまったが、今年は高い成長が期待できるという。ユーザーの傾向としては、SAN形式のストレージの導入が進むこと、同時に、引き続きホモジニアス(同一機種環境)なディスクストレージが主流であることなどを挙げた。

 今後の市場動向について、コックス氏は米国をはじめ世界で景気動向が芳しくないことに触れ、市場規模予測を下方修正したとした。「それでもストレージ市場全体は成長市場だ」とコックス氏は言う。

 中でも、SANなどのRAIDコントローラ、ハード独立型のストレージ市場は2005年まで24.9%の成長率で成長する。「インターネットベースのアプリケーションの増加により標準ベースのストレージの需要は高い。TCO削減、拡張性や柔軟性といったメリット、さらにはiSCSIの登場などもあり成長が期待できる」とコックス氏は理由を述べる。そのiSCSIについて、2002年に本格的な供給体制が整い、将来的にはSANの20%を占めると見ている。

 ちなみにNASの成長率は48.2%、今後もパフォーマンス、拡張性、接続性などの技術が登場し、選択肢として定着すると見ている。

注目を集めるiSCSI製品

(写真1)「IBM TotalStoarge IP Storage 200i」

 会場では、EMCや日立製作所、コンパックといったベンダが各ブースに大型機器を展示し、担当者がデモンストレーションや解説を行っていた。展示の中心はSAN、NASだったが、注目のiSCSIの展示を行っていたブースもいくつかあり、どこも人気を集めていた。

 シスコと共同でiSCSI規格の標準化を進めているIBMでは、先日発表した(「IBM、iSCSI規格をサポートした新ストレージ製品を発表」参照)iSCSI対応のストレージ製品「IBM TotalStoarge IP Storage 200i」を展示していた(写真1)。

 日本でストレージ製品を早くから取り扱っているネットマークスでは、シスコの未発売のiSCSI製品「Cisco SN 5420」を参考出品していた(写真2)。シスコは今年の秋にも米国で同製品を正式に発表する予定だ。シスコのゴールドパートナーでもある同社では、シスコが発売を開始すればすぐにでも取り扱う予定という。同社の担当者によればパケット通信の不安定さなどの不安材料はあるものの、既存のLANシステムを使える点や運用管理が容易なことから、ユーザーの関心は非常に高いという。

(写真2)ネットマークスが参考出品した「Cisco SN 5420」 (写真3)「SANRAD iSCSI Vswitch 3000」

 イスラエルのメーカーSANRADのiSCSI製品「SANRAD iSCSI Vswitch 3000」を参考出展していたのは伊藤忠エレクトロニクス(写真3)。iSCSI規格に準拠し、4基のストレージ用ポートと3基のネットワーク用ポートを備えている。NASの機能や管理ツールを持たせることで差別化を図っている。同製品は2002年の第1四半期には製品化が実現する予定という。

 広帯域化が進みデータ量が増加の一途をたどる中、ますますスポットが当たるストレージだが、複雑さや相互接続性といった課題はある。次々と登場する新技術にユーザーのキャッチアップもままならないようだ。先述のコックス氏は、スピーチ後の質疑応答で「SANかNASかなどといった議論がなされるが、それぞれ一長一短ある。自社のシステムに最適なものを選ぶことが最善策」と述べていた。

[関連リンク]
第3回データストレージEXPO

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