付加価値で差別化を図るiDC、アウトソーシングのイベント開催

2001/7/20

 7月17日から3日間、東京都内で「Business Innovation EXPO アウトソーシング2001」(主催:日経BP)が開催された。第3回目の今回は153社の企業や団体が参加し、戦略的なアウトソーシング活用についてセミナーやワークショップ、展示が行われた。また、「ヒューマンキャピタル 2001」も同時開催された。同イベントは人材・組織戦略にスポットを当てたもので、今回が初めての開催となる。主催者側では期間中両イベント合わせて3万人強の来場者を見込んでいる。

データセンターは付加価値の時代

 アウトソーシング2001では、施設管理、営業・マーケティング、総務・経理、経営・情報システム、eソーシングといったテーマに分かれて各社がブースを構えていた。コンピュータ・システム関連で目立っていたのは、データ・センター(iDC)事業者とコールセンターのCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)。

 データ・センターの付加価値サービスとして、ストレージのアウトソーシング・サービスを紹介していたのは、SI事業社のTIS(旧社名:東洋情報システム)。同社が日商エレクトロニクス、日立製作所と共同で開発を進めているもので、ハードウェアから運用管理までのアウトソーシング・サービスを提供する。米国では約2年前に“SSP(ストレージ・サービス・プロバイダ)”としてストレージのASPモデルが誕生したが、日本ではまだ根付いていないサービスで、提供する会社も少ない。

 同社のサービス「インテリジェントストレージサービス」では、日立のハードウェアを用いたSAN、NASの環境を提供する。ユーザーは必要に応じてプラグ&プレイでストレージ資源を利用できる。特徴はデータのバックアップ。日商エレクトロニクスが、米アラクリタス、日立コンピュータ機器と共同開発したバーチャル・テープライブラリ・アプライアンス(VTLA)を用いる。これはディスク装置でテープライブラリを実現したもので、従来のテープ装置と比較すると、高速で信頼性も高いという。

 3社は現在、この「インテリジェントストレージサービス」をアプリケーション・ストリーミング・サービス(アプリケーションがストリーミングの形で配信されるサービス。クライアント側はプレイヤーソフトをインストールするだけで、配信されるアプリケーションを利用できる)と合わせて提供することを企画している。年内サービスインを目指して商品化中だ。

 付加価値サービスやSLA(サービス・レベル・アグリーメント)の提供は、TISに限らず出展していたiDC事業者に共通していた。通常のSI事業に合わせてハウジング・サービスを展開してきたTISだが、このところのiDC業界は競争が激しくなる一方だ。他社との競争に勝つために、ユニークな付加価値で差別化を図りたいという。同社ではストレージのほかにも、調達システム、既存インフラとの統合・最適化などのサービスを用意している。SLAに関しては、「一足飛びに米国式のように厳密な契約を結ぶことは難しい」というのがどこも一致した意見のようだ。SLAでは、責任の所在を明確にするためやりとりの窓口を一元化することなどユーザーにも厳密な管理体制が要求される。ユーザー側も意識を変えていく必要がありそうだ。

 金融会社などの受託開発を多く手がけてきたアイネスでは、会計や営業といったシステムのほか、電子自治体向けのアウトソーシング・サービス「WebRings」を展示していた。政府や自治体の電子化への取り組みが進んでいるが、この分野でもアウトソーシングへの関心は高いという。「組織内で全てを運用するのではなく、ホスティングサービス付きでのシステムの導入が増えている。やはり、管理者の負担の軽減が最大の理由ではないか」と担当者は分析していた。

HMCは、実は日本的経営手法

 「ヒューマンキャピタル 2001」では、知的資本経営についてのセミナーで、リクルート HCM事業開発室 エグゼクティブプランナー 山田裕一氏が講演を行った。

 このところ、企業価値を財務的資本と知的資本の2側面から評価する動きがある。知的資本はさらに、関係資本(ブランド、顧客、ネットワーク)、人的資本(従業員の能力・モチベーション)、構造資本(プロセス、知的所有権)の3つに分けることができるが、山田氏は人的資本のHCM(Human Capital Management)について説明した。

 “カリスマ店長”などといわれ、個人が企業価値を左右することがある。企業にイノベーションを起こすのも人なら、モチベーションが欠如した社員が多い場合はその逆もあるだろう。「昔から“最後は人”などといわれているが、人的資本を構造的に把握しているか、さらには企業にどのように生かすかがHCMだ」(山田氏)。

 人的資本は人材の調達、活用、開発という3つのステップを、「ビジョンの実現」と「イノベーションの促進」の2つの視点から設計すること。当たり前のことばかりだが、明確な定義を持つことが重要なのだという。たとえば、“調達”に関して、「出身校名で選ぶのか、それとも求める知識・技術、態度などの測定基準を設けるのか」。調達後の人材の“維持(リテンション)”についても「金銭的報酬の他にどんなリターンを提供できるか」。“やりがい”などという言葉があるが、機会(チャンス)、ナレッジ、ネットワーク、ステイタスなどさまざまな報酬が考えられる。さらには、そのリターンが会社に相乗効果を生み出すようにサイクルを回していくことが重要となるだろう。

 今後、正社員に求めていくべきことは「“スキルワーカー”ではなく“ナレッジワーカー”になること」と山田氏。スキルワーカーは課題が与えられれば、経験に基づいた技能を生かし解決できる。ナレッジワーカーは、“いかに”ではなく“何を”のレベルで課題を捉える。課題を自ら見出して設定し、知識に基づき解決していくように社員を開発し、リーダーを中心としたコミュニティを形成する必要があるという。

 「HCMはある面で非常に日本的。日本的経営とは伝統的に人を大切にするからだ」実際に欧米のHCM研究は日本企業の経営をリサーチしていることが多いという。だが、現在科学的にHCMを導入してそれなりの成果をあげているのは欧米企業ばかり。「アイデア自体は新しいものではない。認識して戦略にいかせばよいのだ」。

 アウトソースとヒューマンキャピタル、大胆な合理性と日本的経営の科学的アプローチがいまの日本企業に求められている経営法ということだろうか。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
TIS
日商エレクトロニクス
アイネス
リクルート

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