マイクロソフトが歴史から学ぶことはあるか?
〜Windows 2000 Serverはノベル 4.xの歴史を繰り返すのか?〜

2001/8/7
By Wayne Spivak, VARBusiness 12:02 PM EST Fri., July 13, 2001

 ジョージ・バーナード・ショウ(George Bernard Shaw)は、「われわれは人間が歴史から何も学ぶことができないということを歴史から学ぶ」と書いた。Windows 2000に関するマイクロソフトの行動を見ていると、マイクロソフトのトップたちがここ最近の歴史を学んでいないだけではなく、間違いをどうしても繰り返そうとしていることは明白である。

 もっと単純だった時代を思い出してみよう。それほど遠い昔のことではない。そのころ、価格も手ごろで、一般的な方法で入手することができる最高速のPCといえば486マシンだった(P5も間近に見えていたが)。そして、ノベルはネットワークオペレーティングシステム(OS)の最有力ベンダで、NetWare 3.1という製品を持っていた。

 このNetWareは、何と素晴らしいOSだったことか。クリーンで比較的インストールもインプリメントもメンテナンスもしやすいOSだった(CDはまだ手ごろな価格ではなく、フロッピーディスクが数え切れないほどの数になったが...)。NetWare 3.1、3.11、そして3.12は拡張性があり、さらに重要なことには安定して動いていた。

この素晴らしいOSが、社員3人程度の小さなSOHOからFortune 100にランクインするMIS部門まで、ありとあらゆるオフィスに導入されたのも不思議ではなかった。

 過去と同様、今日も、そして疑いなく未来にも、小規模の企業やワークグループには、Fortune 5000企業の社内全体にサービスを提供するサーバよりも多くのネットワークやサーバが導入される。

 この計算は簡単だ。米国中小企業庁は国勢調査局の統計に基づく1999年のレポートの中で、「民間の非農業従事者の53%は従業員500人以下の小規模企業が雇用している。また、1990年から1995年にかけて、新しい雇用の76%は従業員500人以下の小規模企業が作り出したものだ」と書かれている。

 これらの統計は、分散化された大企業の小規模ワークグループについては取り上げていない。また、中小企業庁が提供する別のデータでは、従業員500人以下のカテゴリに入る企業の大半は、従業員が実際には100人に満たないことが示されている。そして、このサブカテゴリでは従業員50人以下のクラスの方が従業員50人以上のクラスよりも多いのだ。

 このデータを見るもう1つの見方が、ソフトウェアベンダ各社がどのように自社のソフトウェアをライセンスしているかという点に反映されている。ライセンスは通常1ユーザー単位で販売されるが、5ユーザー、10ユーザー、25ユーザー、もしくは50ユーザーという複数ユーザーのものも販売される。ソフトウェアベンダも国勢調査局の統計に目を通していることは明らだ。

 ではここでちょっと時間を進めて、NetWare 3.12の開発を中止してNetWare 4.xという新しいOSに着手したノベルの判断を考えてみよう。このマーケティングプログラムは結果的には大きな間違いだった。NetWare 4.xにはすばらしい新機能がいくつかあり、プログラムの中心にあったのがNDSだった。NDSは、x.25ディレクトリサービスを徹底的に作り直したもので、Fortune 5000をはじめとした企業サイトのネットワーク化と管理の向上に寄与した機能だ。

 しかし、ノベルはNDSを開発するにあたって非常に重要な要素を忘れていた。彼らは、NDSを使う必要のない5〜25人の小規模ユーザーを、調査することも考慮することもしなかったのだ。NDSは、当時も今もあまりにも複雑で、セットアップやメンテナンスには非常に多くの時間を要する。昔もいまも、小規模カスタマー向けにはなっていないのだ。小規模のカスタマーがNDSを導入するということは、昔のテレビドラマのモンティ・パイソン(Monty Python)のエピソードのように、蚊を殺すためにバズーカ砲を使うようなものだった。

 では、NetWare 3.xのサポートを受けられなくなってしまったこれらのカスタマーはどうしただろう?――彼らは当然の判断としてWindows NTに移行してしまった。それは、NTの方がNetWareよりも優れていたからではない。グラフィカルでWindowsに似てなくもなかったし、導入、実装、管理が簡単だったからだ。さらに、TCP/IPを最初からネイティブでサポートしていたので、先進的な考えを持つ企業はインターネットにアクセスすることができた。

 さらに数年先へと進もう。最有力OSであるマイクロソフト NT 4.0が登場した。そして、ノベルとNetWare 5.xは生き残りを賭けて苦戦している。私は個人的には最後にいつNetWareを使ったのか覚えていないし、NetWareを運用しているオフィスを最後に訪れたのがいつだったかも思い出せない。非常に規模の大きいITの現場で働く友人、家族、そして同僚の例外を除き、NetWareは全く話題にのぼらなくなった。

 これはOSが悪いというわけではなく、多くの潜在クライアントをノベルが徹底的に切り捨てしまっただけに過ぎない。その結果、ノベルにとっては皮肉なことに、マイクロソフトがOS市場の支配権を握るのを助けてしまったのである。私はNTに対して正当な根拠のある不満をいくらでも吐き出し続けることができるが、事実は変わらない。さて、歴史から学ぶ話はどうなったのか? この事実から何がいえるだろう?

 マイクロソフトは2001年の2月初旬に、同社がWindows 2000 Serverを100万本近く販売したことを発表した。だが業界紙を読めばお分かりのように、同製品は依然としてNT 4.0市場に食い込んではいない。なぜだろう? ヒントは前述のジョージ・バーナード・ショウの言葉に隠れている。

 Active Directory Services、ブロートウェア(リソースばかり必要としてほとんど役に立たないソフトウェア)、ハードウェア要求など、聞き憶えのある言葉だろう。小規模企業、ワークグループ、もしくは部門レベルにとって導入、実装、運用をあまりにも複雑にしてしまうツールと聞いてNetWare 4.xの名前が浮かんでこないだろうか?

 私は先日、Windows 2000 Serverをインストールした。この製品は、以前はAdvanced Serverと呼ばれていたものだ。マイクロソフトは、当時Advanced Serverと呼んでいたミドルレベルのサーバ用OSにさらに機能を詰め込み、その結果、ただの“Server”に戻してしまったのだ。混乱のないようはっきりさせておきたいのだが、私が話をしているのは、DataCenter Serverでも、NT Workstationのデスクトップ向け後継バージョンのProfessionalでもない。

 もしここで混乱してしまった読者がいたとしても、ご安心を。誰もが混乱しているので心配することはない。マイクロソフトのマーケティングの問題なのだ。ダン・クェール(Dan Quayle)元副大統領の「非常に高度な要職に就くことができるのはかなりの変人で、この人たちが歴史に凄まじい影響を与える」という言葉が思い出される。つまり、クェール元副大統領のいう変な人種に属する人々がマーケティングに関与して製品名を変更し、われわれを大混乱に陥れているわけである。

 話を元に戻そう。私は友人のためにWindows 2000 Serverを小規模のネットワークにインストールしていた。実際、これは私にとって初めてのWindows 2000 Serverのインストール作業だった。インストール作業自体は確かに難しいものではなかったが、設定作業を開始すると、これをプライマリ・ドメイン・コントローラ(PDC)にするには、Active Directory、DHCP、IIS、そしてDNSをインストールするしかなかったのだ。マイクロソフトではWebサイトで11章からなるチュートリアルのほか、ステップごとのガイドなどで、役立つヒントをいくつか公開している。

 ここでまた話はバズーカ砲に戻るというわけだ。

 ではNT 4.0について考えてみよう。DNSもIISもインストールする必要はなく、DHCPはオプションで、Active Directoryは存在せず、ローカルでもグローバルでもグループを作ることができる。さらには、ポリシーを作成する必要もない。NT 4.0の方がはるかに高速かつシンプルで、管理もしやすいのだ。

 マイクロソフトはWindows 9.xおよびNTのプラットフォームから足を洗いつつあり、近い将来にはこれらのOSも時代遅れになってしまうだろう。では、ユーザーだった小規模サイトはどうすればよいのだろうか? 歴史は繰り返されるのだろうか? どこからかLinuxという声も聞こえるが……。

[英文記事]
Has Microsoft Ever Read the History Books?

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