[Interview]
テストとモニタリングで安全なシステム運用とリスク削減を実現

2001/9/6

 負荷テストツールのベンダ、マーキュリー・インタラクティブ・ジャパンは9月5日、都内で「ユーザ・カンファレンス 2001& Solution Showcase」を開催し、主力製品の新バージョン「LoadRunner 7.02」を発表した。

 システムの複雑化やWebチャネルの拡大化が進む中、アプリケーションの事前検証やパフォーマンスの管理という課題が持ち上がっている。同社はこれまで、負荷テストツール「LoadRunner」やWebのパフォーマンス監視ツール「Topaz」といった製品で、企業のそういう課題に対応してきた。現在、分散型環境での負荷テスト市場における同社のシェアは53%、Web環境の場合は63%と過半数を占める。世界的なIT不況といわれる中、同社の昨年度の売上高は前年度比64%増の3億700万ドルを達成した。米フォーチュン誌からは、最も成長している企業100社のうち第9位に選ばれている。

 カンファレンスに合わせて来日した米マーキュリー・インタラクティブ COO ケン・クライン(Ken Klein)氏、日本法人代表取締役社長 小島康英氏に、この分野の動向や今後の戦略について話を聞いた。

クライン氏 「飛行機が離陸前に事前にチェックし、離陸後に監視を行うように、システムも万全を期さなければならない」

――負荷テストやパフォーマンス管理の重要性が高まっている

クライン氏 その通りだ。弊社では、テスト製品やモニタリング製品を通じて顧客のeビジネスの経営効率を高める。

 テスト製品の最大のメリットは、システム・ダウンを未然に防止し、アプリケーションの導入・運用コストやリスクを削減できることだ。例えば、ソニーでは、ハードウェアやデータベースのアップグレードや追加をすることなく100万ドルを節約して、Webアプリケーションのスケーラビリティを各段に向上させたうえ、既存アプリケーションの性能の向上も実現した。

 現在、米国では、新規アプリケーション開発プロジェクトの半分の時間を事前検証に当てている。それほど、事前検証やパフォーマンスのモニタリングの重要性が認知されている。

 モニタリングに関しては、例えばオンライン証券サービスでは、毎日、取引開始直後の“魔の時間”の9時10分にアクセスがピークに達する。8時30分ごろから監視を開始すれば、状況に応じてシステムを正常停止するなどの対策を取ることができる。異常停止によるロスは計り知れない。このように、システムダウンによるeビジネスの収益機会の損失を防止することができる。

――現在、マーケットでは高いシェアを占めているが、市場をどう牽引して行くのか、その戦略は?

クライン氏 1989年の創業以来、テスト製品で培ってきたベスト・プラクティスを、顧客のアプリケーションやシステムのライフサイクルに合わせて提供する。開発期では、機能テスト「WinRunner」と負荷テスト「LoadRunner」を、稼働後はパフォーマンス監視「Topaz」や「ActiveWatch」を、そしてその結果を分析し「TestDirector」によりテスト工程を管理する、というサイクルを続けて行くことを提唱する。平均的なシステムの場合、5回テストを繰り返すとパフォーマンスは2倍以上になる。

 提供形態も工夫した。ソフトウェア販売だけではなく、サービス・ベースのソリューション提供を昨年より開始した。顧客の規模や予算に応じて、製品やサービスを選択できるようになった。

 また、業界の新技術には迅速に対応していく。新バージョンの「LoadRunner」では、XMLやEJB、RMI、ストリーミング(Real Player、MS Media Player)、ワイヤレス(iモード、WAP)に対応した。来年以降に市場が立ち上がるといわれているWebサービスに関しても、マイクロソフトやサン・マイクロシステムズと関係を密にして、Webサービスの立ち上がりと同時に対応製品を出す。


 同社は1994年に日本に進出、1996年に日本法人を設立した。2000年より新体制をスタートさせ、西日本支社の設立し直販体制や日本市場向けのR&Dの強化などを進めている。2000年度は前年度比74%増の売上高を記録した。

2000年1月に日本法人の社長に就任し、新体制を牽引してきた小島社長

――今後のターゲット分野は?

小島氏 3つある。まず、ソフトウェア分野。ERPやCRM、SCMといったパッケージの導入が進むといわれているが、導入・実装にあたり、パフォーマンス監視の必要性を訴えていく。2つ目が、金融サービス市場。この市場は、オンラインバンキングなど、インターネット上の金融サービスの提供が本格化するため、ユーザーの増加が見込まれている。ミッション・クリティカルなシステムだけに、弊社のような製品が必要となるはずだ。3つ目がワイヤレスやブロードバンドなどの新技術。例えば、ブロードバンド化によりコンテンツのストリーミング配信が本格化する。2002年には広告形態のバナーからストリーミングへの移行が始まるといわれているが、ストリーミングによる広告配信にミスがあった場合、放送事故として配信業者が責任を追及されることもある。

――日本での戦略は?

小島氏 まずは啓蒙活動を通じ、テストやパフォーマンス監視の重要性を訴える。それから、パートナー戦略として、多くのSI業者と提携を進める。日本の商習慣に合わせたビジネス展開を図るため、日本の顧客のニーズをくみ取っていきたい。

(編集局 末岡洋子)

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マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン

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