日本発のソフト部品産業の確立を目指すイーシー・ワン

2001/9/7

 9月6日、EJBコンポーネント流通を推進するイーシー・ワン主催の「コンポーネント・バンク フォーラム」が開催されたが、それに先立って記者を対象に経営陣による事業説明会が行われた。

 同社の取締役副社長 最首英裕氏は、コンポーネント・バンクの内容の説明の前に、コンポーネント・バンク設立にいたる動機について熱く語った。同社は1998年4月の創業時から開発をJavaに特化してきたが、それは「ただのソフトハウスを作るつもりはなかった」(同社取締役副社長 最首英裕氏)からだいう。「ソフトウェアエンジニアを労働集約的な開発スタイルから解放し、エンジニアの価値を高めたい」という思いのもと「案件の中で蓄積したEJBコンポーネントを社内で再利用するしくみを作り、エンジニア間での知識の共有を積極的に進めた結果、仕事の質が大きく変わった。このノウハウを外に出していきたいと考えた」。このことが、昨年10月の「EJBに関するコンソーシアム」の設立と、EJBコンポーネント流通の仕組みである「コンポーネント・バンク」創設につながったという。さらに最首氏は、「EJBによる開発は諸外国よりも日本が進んでいる。企業が相互にEJBを利用し合う部品産業を作って世界に輸出したい。これはイーシー・ワンの収益に関係なく、やるべきことだと考えた」とまで語った。

 コンポーネント・バンクでは、コンポーネント同士の組み合わせを簡単に行うための「cFramework」という統一フレームワークが提供されるという。このフレームワークによって作られたEJB部品がばらばらに提供されることはなく、適合するコンポーネントがあらかじめわかるように、特定用途に適合したEJBコンポーネントがプリパッケージされて提供される(cPackage)。

 再利用可能なEJBコンポーネント部品の流通によってソフトウェア開発の生産性向上を狙う試みには、コンポーネント・バンク以外にもコンポーネントスクエアや富士通コンポーネントセンターがある。3社のモデルと比較したコンポーネント・バンクの最大の特徴は、上述のとおりEJBコンポーネントの設計方法を統一している点にある。

 現在、コンポーネント・バンクのパートナーは、インテル、CTC伊藤忠テクノサイエンス、NTTコムウェア、沖電気、サントリー、サン・マイクロシステムズ、日本IBM、日本BEAシステムズ、日本ヒューレット・パッカード、日立の10社。中でも日立は自社のアプリケーションサーバ「Cosminexus 4」に、cFrameworkをバンドルし、すでに自社内の多くの開発案件でこれを採用しているという。現在、イーシー・ワン自身が提供するコンポーネントパッケージはショッピングサイト、パブリッシング、カード決済などの特定用途に向けた5種類だ。また、パートナーやユーザーがすでに開発したコンポーネントの中で、今すぐにも提供可能になるものは5〜60個。これが年内には数百単位になる予定だという。

 また、コンポーネント・バンクでは、「特定の人にわかる技術は普及しない。普通の人が使えることが大切」(最首氏)というポリシーがある。このポリシーのもと、今年11月に、コンポーネントベースの開発を支援するツール「cStudio」を投入する予定だ。cStudioは、cFrameworkに沿った開発を簡単にする機能のほか、コンポーネントが登録されたリポジトリ・サーバにアクセスし、適合するコンポーネントのピックアップ、登録が簡単にできるという。

 イーシー・ワンは、国内でコンポーネント・バンクのモデルを成功させたあと、中国で同様のモデルを展開することを狙っている。「中国は人材の宝庫。日本はメインフレームやクライアントサーバのしがらみがあり、その人口をJavaに割けない。しかし中国はいきなりJavaに入れる」(代表取締役社長 加山幸浩氏)。日本でEJB部品産業の形態を確立し、中国で質の高いEJB部品を生産、それを世界中に出荷したい考えだ。

 「なぜEJBなのか?」という問いに対し、最首氏は以下のように答える。「EJBをやっていて今までと違うと感じることは、実はこれまでの言語は特定のプラットフォームと結び付いていたということだ。Javaはプラットフォームに依存しないため、共通のノウハウを蓄積しやすい言語。さらに、手続き型でないところを除けば、だれにも入りやすい簡単な言語だ」。さらに、既存のパッケージソフトと比較されないかという点に関しては、「カスタマイズ性が低いパッケージにフラストレーションを感じているユーザーに支持されるだろう」としたうえで、「ERPなどのパッケージベンダにも部品のバラ売りをしてほしい。J2EEに従って作れば、cFrameworkの上で動く可能性も高く、コンポーネント・バンクのメニューに載せていくこともできるだろう」と述べた。

 コンポーネント・バンクは、9月6日から「Open cBankサイト」をオープンした。現在は、EJB部品コンポーネントの製品カタログや、製品のサポート情報、FAQが公開されているほか、cFreameworkの評価版が無償でダウンロードできる。将来的には、EJBコンポーネント流通を促進するためのコミュニティの展開や、Java/EJB関連の技術情報の提供も行うという。

 ところで現在イーシー・ワンは、2002年3月の株式公開を目指している。9月5日には、米サンから5000万円の出資を受け入れた。米サンが日本企業に直接出資するケースはきわめて異例であり、世界に類を見ないコンポーネン・バンクの試みにかける米サンの期待が表れているといえるだろう。

(宮下知起)

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