[Interview]
JMP4は、「人の意思と能力を生かす」データ分析ソフト

2001/9/26

 「データマイニング」「ビジネスインテリジェンス」など、データを分析してビジネスに役立てようという提案が盛んだ。しかし、実際導入するとなると、価格面やユーザー側の知識不足などでまだ、広く認知されてはいない状況だ。

 そんな中、比較的安価な本格派データ分析ソフト「JMP(ジャンプ)」のバージョン4(JMP4)日本語版が発売されることになった。1989年の発売以来、主に企業の製品企画開発部門や品質管理部門、データ分析担当者、医療・製薬、大学などの教育機関で利用されてきたものだが、最近ではビジネス分野でも利用されるようになってきているという。

SASインスティチュートジャパン JMPジャパン事業部 事業部長 井上 憲樹氏

 日本におけるJMPの総責任者、株式会社SASインスティチュートジャパンJMPジャパン事業部 事業部長の井上 憲樹氏にお話を伺った。


JMPの操作性とスプレッドシートとの違いは?

井上氏 JMPではグラフありき、の設計になっています。グラフとして得られた結果から、また次のアクションに移れます。

 グラフにするというのは、視覚的に違いを見つけやすいのがポイントです。例えば、回帰分析を行う場合、どんな数値であっても式に当てはめれば答えは出てきますが、散布図に回帰線を重ねて表示すれば、一見して当てはまっているかどうか、直感でつかむことができます。

JMPは、統計処理の結果を視覚化して分かりやすく表示できる

 グラフを見るだけというのでは、「分析」とはいえないかもしれませんが、大きな間違いや異常を早い段階で簡単に見つけられます。

 数値の集計・分析ということでは表計算ソフトを利用される方も多いでしょう。表計算に対するJMPのメリットを考えてみると、スプレッドシートではまず、データの件数で制限があります。1万件もあるデータではまず動かないのです。JMPは100MBぐらいのデータを操作できます。VBAなどを覚える必要もありません。また、表計算ソフトだと、グラフを作る前に集計や並べ替えなどの処理が必要になることが普通です。

 表計算ソフトのグラフの特徴に、数値を変えると即座にグラフも変更されるといった点もありますが、これだと変更前と後を比較できません。JMPの場合は、元の数値を変えたり、ある数値を一時的に統計処理から外して計算させるなどした場合に、それぞれにグラフを表示するのでパターンの変化をつかむことができるようになっています。シミュレーションすることに主眼が置かれているわけです。

統計分析のビジネス利用は進んでいるのですか?

井上氏 現状、JMPは製造業などでの利用が主ですが、営業やマーケティングでも利用する例が出てきています。あるいは、経営手法としてシックスシグマなどもあります。これは元はといえば製造業から出てきたもので、経営改善の手法ですから、企業のトップから末端まで関係してくるものです。つまり、いまやすべての企業活動で統計的な分析が必要になってきます。

統計を使いこなすには、それなりの知識が必要では?

井上氏 「統計」というと難しそうで、それだけで毛嫌いされそうですが、実際に営業やマーケティング関係の方にJMPのデモをお見せすると、多くの方から「検討したい」「買います」という前向きなお言葉が返ってきます。

 しかし、ビジネスで統計を利用するには、できれば学生のうちから、データ分析の見方・考え方を身に付けられれば理想的でしょう。例えば、慶応SFCでは「データ分析入門」という初級講座があって、そこでJMPの簡易版「JMP IN」を使っています。統計に興味を持ってもらうことが目的にしていて、数式が出てこない講座なのですが、狙いどおり統計に興味を持つ人が増えています。

ビジネスで統計をうまく使用するポイントはどこにあるか?

井上氏 JMPを使いこなすのに、統計知識がまったく必要ないというつもりはありませんが、グラフを作り、データの傾向をつかむことは可能でしょう。まずグラフを作り、それを見ながら予想する、本当にそうなのか、正しいかどうか確認するといった、自分で考えてみる、アクションしてみるということが大事だと思います。

 統計解析は、どういう分析をしたいかという推測統計であり、推測するのは人間なのです。ボタンを押せば、自動的に答えが出てくるわけではありません。もともと実際の市場や売上のデータといったようなリアルなデータを使った場合、きれいな結果は出にくいのですが、それを推測し、読み取るのは人間なのです。

 マーケティングデータなどの情報系のデータは、状況が常に変わるわけです。ある結果に基づいて、自社がマーケティング上の行動を行えば、それだけマーケット自体が変わります。従って、統計分析を1回行って終わりというわけではなく、繰り返し分析を行う必要があります。

 JMPという製品名に、Uがないのは「You」を加えて、“Jump”できるという意味が込められています。人がいて初めて、JMPは力を発揮できるわけです。その意味で、JMPは人の意思と能力を活かすツールなんです。

 いままで製造業や学校・教育関係では知られていたソフトでしたが、最新の日本語版が登場したことで、ビジネスをはじめ、幅広いユーザーにアピールしていきたいですね。

[関連リンク]
SASインスティチュート ジャパンの「JMPバージョン4日本語版」の発表資料
JMPの情報ページ

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