“組み込みJavaは遅い”の常識を覆すHPのChai

2001/12/1

 初の日本での開催となった「JavaOne Conference in Japan」が11月30日まで横浜で開催された。そのJavaを、組み込み機器向けに独自開発し「hp Chai」として発表しているヒューレット・パッカードは11月28日、Chaiの説明をJavaOne会場近くで行った。

jornadaを手に、説明を行うTeksler氏。「開発者のメリットとしては、ネイティブ環境でコンパイラを使う必要がないこと」

 今回のJavaOne開催の背景には、日本およびアジア地域でのモバイルでの成功がある。携帯事業者などに技術をライセンス提供するサンとは異なり、HPではPDA「hp jornada」などモバイルデバイスそのものの製造も行っている。この日説明を行った米HP エンベデッドソフトウェア事業部 マーケティング&セールス シニア・ディレクター Boris Teksler氏は、冒頭で、同社が組み込み技術を搭載した機器を製造していることに触れた。

 「プリンタ、PDA、家庭用STB……、HP自身が開発・製造してきた」(Teksler氏)。そして、「Javaはサーバ用に設計されたものだが、エンベデッド専用に設計したのがChai」と、機器メーカーによる機器メーカー向けの組み込みソフトウェア環境であることを強調した。HPはデバイスが相互にやり取りする「CoolTown構想」を掲げているが、Chaiはその実現に大きな役割を果たす重要な技術となる。「例えばプリンタ。トナーの残りが少なくなったら自動的に発注する、といったことが可能となる」(Teksler氏)。

 ライセンス提供に関しては、1999年にChaiを発表して以来、その数は全世界で300万件以上になるという。日本ではすでに、NTTコムウェアがモバイルエージェントのプラットフォーム“TeaTray”に採用しているほか、テレマティクス向け車載サーバのデンソーなどがあり、現在家電や自動車メーカーとも話が進んでいるという。

Chaiのアーキテクチャ(クリックで拡大)

 Chaiは、LinuxやWindows CEなどのリアルタイムOS上で動作するJDK 1.1.8準拠(セキュリティに関してはJDK 1.2に準拠)のJava VM。スタンダードエディションの「ChaiVM」とマイクロエディションの「MicroChaiVM」があり、その上に「ChaiServer」などのWebコネクティビティやWebブラウザの「ChaiFarer」、そして、アプリケーションコネクティビティが乗るという仕組みだ。同社のエージェント技術「e-speak」や管理ソフト「OpenView」も、この上で展開が可能となる(左図参照)。

 同氏は、Chaiの特徴として、少容量のメモリ要求(ChaiVMが250Kバイト、MicroChaiVMが23.4Kバイト)、高速なアプリケーションの起動・実行の2点を挙げた。特に、アプリケーションの高速な起動・実行に関しては、特許技術「Chai Freezedry」が実現のカギを握る。通常、圧縮手法である“コンプレッション”の場合、ダウンロードは高速化できても解凍に時間を要する。同技術では、Javaクラスファイルを整理して無駄を省く“集中”というアプローチをとり、Javaクラスファイルの大きさを50〜90%まで縮小が可能という。アプリケーション実行には、先行コンパイラ技術「TurboChai」を採用、CPUごとに最適化されたCコンパイラ実行速度の高速化を実現する。実際、157Kビットを要するゲームソフトが21Kビットで実現するという事例もあるという。

 また、同氏は今年発表されたMicroChaiVMをクアルコムの「BREW」上で動作させ、CDMAデバイスで電子メールやゲームなどのアプリケーションが実装された例を紹介した。

(編集局 末岡洋子)

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