「実行あるのみ」と、Webサービス市場で挑戦するHP

2001/12/7

 日本ヒューレット・パッカードは先日、Webアプリケーション「hp application server 8.0」を無償で配布すると発表した(「HPがアプリケーション・サーバを無償提供、その狙いは?」参照)。この分野では後発のスタートとなったHPだが、今年初めにアプリケーションサーバ・ベンダBluestoneを買収し、新ソフトウェア戦略を発表して以来、市場への食い込みを図っている。
米HP バイスプレジデント ビル・ラッセル(William V. Russell)氏

 昨年秋より白熱しているWebサービス市場だが、てこ入れした新ソフトウェア事業部のもと、HPも積極的に展開中だ(「Netactionの詳細を発表、「開発者コミュニティ形成に取り組む」」参照)。現在、同社のソフトウェア部門の年間売上高は15〜20億ドル程度(UNIX OSを除く)。売り上げベースでは、独立したソフトウェア会社であればトップ10に入る成績という。そのソフトウェア事業部の総指揮官である米HP バイスプレジデント ビル・ラッセル(William V. Russell)氏(コンピュ―ティイング・システム ソフトウェア・ソリューションズ・オーガニゼーション バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャ)が来日し、無償化の狙いや同社のソフトウェア戦略について語った。

シンプル=分かりやすさ、実行しやすさ

 開口一番、「戦略はシンプル。変化の激しい環境で、変革に対応できる技術を提供すること」とラッセル氏は語った。ハードウェアでは歴史がある同社だが、ソフトウェア分野は歴史が浅い。「単一の戦略を持つことにより、分かりやすく実行しやすくなる」とラッセル氏は語る。

 “変革”は3つのベクトルを持つ――1)Webサービス(HPでは“e-services”と呼ぶ)の実現、2)さまざまなデバイスを介しての資産(情報、アプリケーション、システムなど)の提供、3)24時間365日稼働可能なインフラの構築。この3つをサポートすることが、同社の戦略。今後、ソフトウェア事業部全体でこの単一の戦略を貫いていく。

 ソフトウェアの注力エリアは、管理ソフトウェアの「OpenView」とWebサービスの開発・統合・展開の「netaction」の2つ。すでにOpenViewは実績・定評がある。業界全体が“Webサービス”に期待を寄せるなか、現在のHPのチャレンジはnetactionにあるといえよう。

HPに勤務して21年目というラッセル氏 直近の結果には「満足していない」と、目標の高さをうかがわせた

戦いの場を上位に移す

 その最初の大きなアクションともいえる、アプリケーションサーバの無償化について、ラッセル氏は次のように語る。「アプリケーション・サーバを無償で提供することは、IBM(WebSphere)やBEAシステムズ(WebLogic)との競合やシェア奪回を狙ったわけではない。すでに浸透しているアプリケーション・サーバでは勝負はついており、この市場で戦っても無駄。われわれは(まだ覇者のいない)その上の層で勝負にする」(ラッセル氏)。HPは、戦いの場を土台となるアプリケーション・サーバ層から上位のサービス層へと移すイニシアティブをとったことになる。「アプリケーションサーバはどのみちベーシックなOSの一部となる。われわれはその動きを加速したに過ぎない」とラッセル氏は続ける。

 HPでは、その“上位のサービス層”として、「Web service platform」「Web Service registry」「Web Services transactions」「process management」「Java messaging」「syndication server」の6つのモジュールから構成される「IOE Web Services Platform」を用意し、すべてWebサービスに対応している。アプリケーションサービスの無償化により、このサービス層で収益を得るビジネスモデルを打ち立てたHPとしては、ここで差別化を図る必要がある。「他社はこれらの機能をアプリケーションサーバとセットで提供すると言っているかもしれないが、言うことは簡単。HPには中身がある」とラッセル氏は強調。具体的には、成功したOpenViewの手法を用いるとした。「OpenViewが成功したのは、製品を細分化して提供した点、ROIが早く回収でき、大きなフレームワークで生じる“ロックイン”がなかった。この手法をnetactionにも用いる」(ラッセル氏)。プラットフォームを問わないことや、自由に組み合わせられるいった特徴が生かされることになる。

 今後は「実行あるのみ」。順調なOpenViewはそのまま進め、初の市場となるnetactionは拡充をしつつ既存顧客から取り込んで行くという。「実績で評価して欲しい」と技術カンパニーらしい抱負の言葉を述べた。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
日本ヒューレット・パッカード

[関連記事]
HPがアプリケーション・サーバを無償提供、その狙いは? (@ITNews)
HPが初のappサーバを発表、Webサービス市場へ本格進出 (@ITNews)
HP、アプリサーバ市場で勝負へ(@ITNews)
[ガートナー特別寄稿] Webサービス普及の下地は整った (@ITNews)
e-servicesでサービス中心のコンピューティングを実現、HP (@ITNews)
「J2EEと.NETは共存、統合可能なWebサービス構築を」とBEA (@ITNews)
Webサービスで攻勢をかけるIBM (@ITNews)
Webサービス、次のステージへ  (NewsInsight)

 

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)