マイクロソフトの戻れぬ道、「.NET Myservices」がテイクオフ

2001/12/18

 マイクロソフトのプロジェクトの中でも、最も議論を呼んでいるサービス「.NET My Services」がついにテイクオフする。ジェイアール東日本情報システム、JTB、ニッセン、NTT東日本の4社が.NET MyServicesの早期評価・検証を開始しているほか、12月17日には開発者向けに.NET MyServicesのSDKの配布が開始された。「利用者のプライバシー情報をマイクロソフト1社が管理するのではないか」と言われてきたサービスが、開発者による実証段階に入る。

 .NET MyServicesは、ユーザーのプロフィールやスケジュール、クレジット番号などの個人情報をマイクロソフトが保管し、ユーザー自身や、ユーザーが認めたWebサイトなどがその情報を参照することができるサービス(将来はサードパーティによる運用も視野に入っている)。12月17日の同社のプレス向け発表会では、旅行会社大手のJTBや通信販売大手のニッセンなどが.NET MyServicesを利用したデモンストレーションを作成し、披露した。

 JTBのデモでは、スキー旅行の予約日時とスキー宅配便の日時の連携が行われ、ニッセンのデモでは、同社のWebサイトを訪れたユーザーのプロフィールに合わせたお薦め商品の表示が行われた。いずれもユーザーの個人情報やスケジュールが.NET MyServicesに保存してあり、それを引き出して実現したものだ。こうしたWebサイトと.NET MyServicesの間をつなぐのがWebサービスとなる。「.NET MyServicesによって、個人情報データベースなどを自社で抱えることなく、容易にWebサイトに対してパーソナライズのような付加価値を与えられるようになる」(マイクロソフト .NETマーケティング部 部長 安藤浩二氏)。

 同社は.NET MyServicesを利用してサービスを展開する企業に対して課金する予定で、その規模に応じて3種類のメニューを用意する。ただし「金額などは、デベロッパからのフィードバックを得て、2002年中に決める」(米マイクロソフト シニアバイスプレジデント エリック・ラダー(Eric Rudder)氏)。という。また、同社代表取締役社長 阿多親市氏は、「Webサービスを利用して、ユーザーがWindowsやOfficeなどのアップグレードを有償で行う、といったこともありうる」とした。この場合は、エンドユーザーに直接課金するモデルになる。いずれにせよ、マクロソフトは、インターネットを通じたサービスの提供で利益を上げる、という新しいビジネスモデルへ、最初の大きな一歩を踏み出した。

 しかしこのサービスには、欠点と見られている部分もある。.NET MyServicesでは顧客情報をマイクロソフトが保管する。これは、個人情報データベースという非常に厳格な運用が求められる部分をアウトソースできるという点では優れているが、顧客情報を分析し、それに合わせたイベントの実施や商品開発を行いたいと思っても、実際に顧客に接している企業の手元に、顧客情報はない。.NET MyServicesがこうしたCRM的なニーズに対応できるのかどうかは未知数だ。また、.NET MyServicesの対抗プロジェクトである、サン・マイクロシステムズが提唱する「Liberty Alliance」には、AOLなど多くの有力企業が参加している。さらに、プライバシー情報の取り扱いは、日本でも審議中の個人情報保護法案など、運用には厳格さが強く求められており、サービスの運用にもそうした法準拠を貫くための難しさが反映されることは明らかだ。

 インターネットとWebサービスの普及によって、ソフトウェアがパッケージで提供される時代から、ネットを通じたサービスによって提供される時代へと大きく変わろうとしている。パッケージソフトの時代に帝国を作り上げた同社が、次の時代にもその地位を維持し続けるためには、だれよりも強いサービスプロバイダにならなければならないわけだ。つまり.NET MyServicesのようなサービスの展開は、たとえ困難であっても進まなければならない、同社の新しい方向であることは間違いない。

(編集局 新野淳一)

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