Webサービスに疑問を投げかけるOMG

2001/12/20

 “Webサービス”は業界の今年のキーワードだったと言っても過言ではないだろう。来年にはマイクロソフトから一連の.NET製品が登場し、さらなる盛り上がりが予想される。だが、業界の期待の星であるWebサービスに辛口のコメントも出されている。

 オブジェクト・マネジメント・グループ・ジャパン(OMGジャパン)は12月18日、定例のエンタープライズ・コンピューティング・セミナーを開催した。今回のテーマはWebサービス。「Webサービスへの10の疑問」と題したセッションでは、OMGジャパン テクニカルマネージャー 和田周氏が、ユーザーの視点からWebサービスの現状と実際をするどく突いた。

 Webサービスは、インターネットを介して、サービスとして提供されるアプリケーション同士がやりとりをするというもので、それを実現する技術はXML、SOAP、WSDL、UDDIとされている。和田氏のセッションは、Webサービスを支えるこれらの技術が成熟していないという指摘を中心に進められた。

 例えばSOAP。SOAPの課題として、1)クライアント側、サーバ側のAPIの規定がないこと、2)サーバ側でのオブジェクトの処理法を規定していないこと、3)通信メカニズムの規定がないこと、4)セキュリティ(認証)面の規定がないこと、5)XMLのパーシング処理により高速性が望めないこと、6)対応製品間の相互運用性が確実ではないこと、などを挙げる。1)のAPIに関しては、SOAPではネットワーク上のメッセージ形式しか規定されておらず、SOAPを呼び出すインターフェイスの生成は各ベンダの提供する製品に依存する。「つまり“オープン”が呼び物だが、結局はベンダに“ロックイン”されてしまう可能性が高い」と和田氏。「SOAPは、Java RMIやCORBAなどの既存の分散オブジェクト技術を置き換えるものではない」としたうえで、その使い道を、状態を持たない大きなサービスを呼び出す場合や、レガシーなど異なる実装技術を結ぶ場合、アドホックな接続の場合、などとした。

 和田氏はそれ以外にも、Webサービスの検索やサービス品質などの課題も指摘した。しかし、Webサービスの将来性については、ほぼ肯定した。「多くのベンダがサポートしているし、さまざまな課題は標準化団体などが取り組み中。シンプルな形式から広まるだろう」(和田氏)。

 そして、最後に“ユーザーがいまできること”について以下のように語った。「環境を社内などに限定してのWebサービスは実現可能なレベル。この範囲でのSOAP、WSDLの利用は可能だ」。和田氏のもう1つのアドバイスは標準化動向への注目だ。「標準化活動は外国で進んでいることが多いため、関心を払わない開発者がいるが、どのベンダがどの仕様の標準化団体に参加しているのか把握しておくことにより、ベンダ間の相互運用性などの予想がつく。いまから動向を見ておくべきだ」。

 CORBAが“密結合”であるのに対しWebサービスは“疎結合”、対立する概念と思いがちだが、そうではないという。「適した分野が異なるため、用途に応じて使い分けられるだろう」(和田氏)。

 OMGではWebサービスに関してSIG(スペシャル・インタレスト・グループ)を立ち上げ、CORBAおよびCWM(データウェアハウスのモデリング標準)との統合を図るための仕様を策定中という。

(編集局 末岡洋子)

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OMGジャパン

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