漏えいした社内メモから明らかになったMSの対Linux戦略

2002/1/10
Monday, January 7, 2002, 2:19 PM ET InternetWeek By Mitch Wagner

 “マイクロソフトはLinuxとの競争体制を強化する。具体的には、社員を増強して競争力のあるリソースを提供する。さらに、LinuxとWindowsの両OSの運用コストの比較調査をアナリストに依頼する”――こういった内容の電子メールが米マイクロソフト内で配信された。

 この電子メールは、米マイクロソフト Windows事業部担当上級副社長 Brian Valentine氏が12月26日付で発信したもの。同氏はこの電子メールの中で、「取り組み強化の目的は対IBM戦での勝利だけではない。Linuxにも勝利するためだ」と書いている。

 この電子メールは、同社の営業担当者に対し、カスタマーを綿密に調査し、カスタマーがIT担当幹部の公認を得ることなくLinuxを導入しそうな場所を探し出すことを勧めている。

 「Linuxが諸君の一部顧客で導入されていても気付かない場合がある。そのためにも、カスタマーベースにおけるLinuxの現状把握に対する従来のアプローチを修正する必要がある。一段と積極的な体制で顧客を詳細に調べなくてはならない」(Valentine氏)

 Valentine氏は営業担当者に対し、自由回答型式の質問をすることで重要なプロジェクトと戦術的な小規模作業の両方に向けてカスタマーが何の評価を進めているのか探り出すよう促している。

 「“コネクタ”となる部品に関する質問をすれば、その周辺にLinuxが見えてくるかもしれない。この手法はLinuxについてだけでなく、ノベル、サン(・マイクロシステムズ)、オラクルといったライバル各社が関与するほかのITプロジェクトに関しても探り出せる非常に有効な手段なのだ」(Valentine氏)

 Valentine氏は、「顧客のデータセンターを歩き回るといった単純なことを実行し、サンやIBMのマシンを見つけたらその用途を尋ねてもらいたい」と呼びかけるとともに、知らないソフトウェアが運用されている「見慣れないサーバ」を見かけたら、何がそのマシン上で動作しているのかを尋ねメモを取るよう指示している。

 「可能な限り早急に、カスタマーとこのような話をする機会を持つよう各自に要望する」(Valentine氏)

 Valentine氏の記述によると、IBMでは、Linuxと「よりハイエンドの非PCシステム」に乗り換えるよう、顧客に強く勧めているという。「現在の経済環境では、どのカスタマーもほぼ例外なく、高価なレガシーUNIXシステムを処分してPCエコノミーの波に乗るための方法を詳細に調べている。マイクロソフトはカスタマーの選択肢の1つとなり、ビジネスのいかなる側面でもWindowsプラットフォームが最高のプラットフォームであることを実証する必要がある」(Valentine氏)

 Valentine氏の記述によると、Linuxとの競合に備えて社員向けの社内Webサイトの構築を計画しているという。このサイトは、最優良事例の検索や質疑応答などの機能を持つものとなる。

 大口カスタマーに関しては、このWebサイトが役に立たない場合、「Linux/UNIX Escalation Team」に支援を求めることができる。「このチームは1営業日以内の初動を約束している。このチームの担当者たちはUNIX業界に関する深い知識を持ち、これまでもUNIXやLinuxと競合しながら契約を勝ち取ってきた」(Valentine氏)

 Valentine氏の電子メールからは、同社が“Linuxは無償”という認識を覆すことも目指していることがうかがえる。同社は、調査会社の米D.H. Brown Associatesにサーバの整理統合に関する調査を依頼しており、上がってきたレポートをカスタマー配付用に準備することも計画している模様だ。同氏によると、米IBMは、複数のサーバ上で動作するアプリケーションをLinuxが動作する1台のメインフレーム上に整理統合することを企業に提案しており、この対抗策となるようだ。

 また、同社が依頼したもう1つのレポートは、Web、ファイル、プリントといった各種サーバ用途でWindowsとLinuxを運用するにあたっての比較運用コストに関するもので、5月報告予定で調査が進んでいるとのことだ。

 「このレポートは、Linuxに対抗してWindowsソリューションの価値を売り込む際に役立つ素晴らしいツールになるだろう」(Valentine氏)

 また皮肉にも、このメモの中には、以前、同社内で行き交ったLinuxとの競合計画に関するメモが流出した事件について社員をとがめたくだりもある。部外秘となっている自分の友人やカスタマーの連絡情報が含まれていたこの事件に関し、「激怒している」とValentine氏は書いている。

 「面識のないLinuxファンからの嫌がらせのメールやジャンクメールが送られて来たり、自分の電子メールアドレスがありとあらゆるリストサーバに登録されるといったことは職務上仕方がないので構わない。だが、自分の友人が同じ嫌がらせを受けるのは我慢できない」(Valentine氏)

*この記事は一部編集しています。

[英文記事]
Microsoft Describes Linux Battle Plan In Leaked Internal Memo

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