「アプリケーション開発を変える」、BEAが新フレームワークを発表

2002/2/27

 米BEAシステムズは現地時間2月24日、今年で7回目となるユーザー・カンファレンス「eWorld 2002」を開催した。今回のカンファレンスでは、Webサービス関連新製品や開発者向け新プログラムを発表するなど、Webアプリケーションサーバ・ベンダからの脱皮を図る同社の方向性を意識させる内容となった。

 Webアプリケーションサーバ市場は、その先のWebサービスでの戦略を含め加熱状態にある。現在、J2EE準拠アプリケーションサーバではシェアトップとされる同社だが、背後には巨人IBMが猛烈な攻勢をかけている。また、ヒューレット・パッカード、オラクル、そしてサン・マイクロシステムズなどの大企業が次々に参入、それに景気の低迷が加わり、BEAにとって予断を許さない状況が続いている。

基調講演を行うチュアング氏。“BEA”の“A”にあたる3人の創業者の1人

 そんな状況下、昨年10月CEOに就任したのがアルフレッド・チュアング(Alfred Chung)氏。創業者であり社長を兼任する同氏にとって今回のカンファレンスは、就任後初のビッグイベントとなる。

 初日の基調講演で同氏は、「BEAは、アプリケーション開発を変える」と宣言し、リーダーシップを改めて示した。キーワードはシンプル、統合(ユニファイド)、拡張性(エクステンシブル)。この3つの特徴を備えたアーキテクチャを提供するという。

 チュアング氏は具体的に次の2点を発表した。

(1)Webサービスのフレームワーク「BEA WebLogic Workshop」
(2)初のスイート製品となる「BEA WebLogic Platform 7.0」

 (1)のWebサービス用の開発フレームワークは、これまで“Cajun”というコード名で呼ばれてきたもの。JavaとJ2EEのインターフェイスを持つ統合開発環境で、COBOLやVisual Basicといった非Javaプログラマでも、J2EE上で動くアプリケーションの開発やテストといった作業が行える。開発チーム全員が同じコードを共有できるため、開発の効率が向上し、生産性が増すという。ほかのベンダのツールとの併用を想定している。「あらゆる言語の開発者が、新しくJavaを勉強し直すことなくJ2EEベースのアプリケーションの開発が可能となる。アプリケーション構築をトップダウンで変えるものだ」と、チュアング氏は説明している。ベータ版は同社Webサイトより入手が可能。

 (2)に関しては、BEAはこれまで主力製品「BEA WebLogic Application Server」を土台に、ポータル構築製品などを提供してきた。今回それらを統合し、スイート製品として提供する。これにより、開発の効率が増し、コスト削減も実現するという。米国での発売は今年前半を予定しているが、価格は未定。WebLogic Platformに含まれる製品は、「WebLogic Application Server」「BEA WebLogic Portal 7.0」「BEA WebLogic Integration 7.0」と「WebLogic Workshop」。

 同社はこのほか、業界初のJ2EE 1.3完全準拠製品となるWebLogic Application Serverの新バージョン(7.0)、開発者向け新プログラム「dev2dev」、スウェーデンのJava VM企業Appeal Virtual Machines買収などの発表も行った。

 プレス向けのQ&Aセッションでは、IBMとの戦いについて「ピュアなプレイヤーが必ず勝利してきた」と述べ、普及しつつあるWebアプリケーションサーバ市場制覇に向けての自信を示した。

 今後、同社の戦略の要となるのは、フレームワークであるWebLogic Workshopだろう。製品のターゲット市場規模は、Visual Basicなど非Javaプログラマを含む広大なものであるうえ、デモで公開されたベータ版の画面を見ると、使いやすさという点での完成度は高そうだ。1995年の創業から、Javaの進展とともに大きな成功を収めてきた同社、今回のカンファレンスを見る限り、“ベンチャー企業”の域を脱しつつあるといえる。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
米BEAシステムズの「BEA WebLogic Workshop」の発表資料
米BEAシステムズの「BEA WebLogic Platform 7.0」発表資料
米BEAシステムズのユーザー・カンファレンス「eWorld」のWebページ

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