“信頼”を軸に第2の波に照準を当てるベリサイン

2002/3/7

 米ベリサインは、いまやPKI市場トップの地位を確立したといっても過言ではないだろう。1995年の創業以来、電子認証分野で積極的に事業を展開し、現在“第2の波”と同社が呼ぶWebサービスにおける認証分野でも主導権を握ろうとしている。3月6日、来日中の米ベリサイン 社長兼CEO ストラトン・スクラボス(Stratton Sclavos)氏が会見を開き、同社の戦略や今後の方向性について明らかにした。

ストラトン・スクラボス氏 4名でスタートした同社、現在の社員数は3500人を超えたという

 「創業以来、戦略はシンプル。“(電子上のコミュニケーションや商取引に)トラスト(信頼)を提供する”――これに尽きる」とスクラボス氏は言う。現在、サーバID発行、ドメインネーム関連に加え、最近では通信分野にも参入するなど、“信頼”と“セキュリティ”をキーワードに、事業を展開してきた。業界全体にとって厳しい1年となった2001年も全四半期を通じ増収を達成、現在ドメインネームへのリクエスト件数は1日あたり1254億、同社のサービスを利用した決済の金額総量は240億ドル(2001年第4四半期)に上る。「インターネットバブルがはじけ、インターネットビジネスへ否定的な声もあるが、世界中の人がWebを介してコミュニケーションなどのやり取りをする機会は確実に増えている。セキュリティとトラストはビジネスを維持・継続するために必要不可欠な技術。ベリサインはビジネスの基盤を支える技術を提供してきた」(スクラボス氏)。

 今年に入り、同社は2つの大きな発表を行った。1つはIBMとの包括的な提携、もう1つはWebサービス向けの認証サービスフレームワークである。

 特にWebサービスについては戦略的にも重要視しており、積極的に参画していく姿勢を見せた。「Webサービスは、ブラウザに次ぐインターネットの第2の波だ。われわれは創業時、中立的立場をとってIE、ネットスケープをサポートして成功した。Webサービスでも、IBMやサン(・マイクロシステムズ)、BEA(システムズ)、HP(ヒューレット・パッカード)などのプラットフォームを中立的にサポートする」(スクラボス氏)。個人認証技術に関しても、リバティ・アライアンスと.NETの両方をサポートするとした。

 今後はこのWebサービスのほか、セキュリティソリューションの強化、音声とデータサービスの統合、ディレクトリサービスの強化などに注力していくという。

川島氏 日本市場におけるサーバ用デジタルID発行数はほぼ倍々ペースで伸びているという

 同席した日本ベリサイン 代表取締役社長兼CEO 川島昭彦氏は、日本法人の現状を語った。その中で、川島氏はPKIに言及し、「PKIはあくまでもインフラ。プラグインの感覚で利用できるよう、使いやすい“ソリューション”の形での提供を目指す」と述べた。この背景には、PKI市場の中小規模企業、さらには政府機関への拡大がある。同社は現在、PKIのアウトソーシング・サービスとして「VeriSign OnSite」を提供しているが、今後はこれらPKI事業を拡大していく意向を見せた。それに加え、今年はドメインネームのモニタリングサービスの開始も予定しているという。

 本国の米国では成功しているといわれている同社だが、日本ではセキュリティにしろアウトソーシングにしろ、米国とは感覚が異なるといえる。電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)がスタートしてまもなく1年が経過するが、PKI市場は予想通りの盛り上がりを見せてるとはいえない。日本市場の成長のスピードと市場の特性やニーズをうまくキャッチして事業展開できるか、川島社長の手腕が問われている。

(編集局 末岡洋子)

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