第2世代の光イーサネットは従来型MANの弱点を克服する

2002/3/9

 ノーテルネットワークスは3月8日、広域イーサネット接続サービス提供に必要なスイッチ「OPTera Metro 8000 Services Switch」(OM8000)と高機能イーサネット・サービス・モジュール「OPTera Metro 1200 Service Module」(OM1200)、それに関連製品のSONET対応光伝送機器「OPTera Metro 3500 Multiservice Platform」およびネットワーク運用管理ソフトウェア「Preside Ethernet Provisioning」の発表を行った。これら製品の組み合わせにより、従来型広域イーサネットの弱点を克服するソリューションの提供が可能になるという。

 近年、イーサネット技術は、光ケーブルによる長距離伝送の実現や多重化による大容量化、RPR(Resilient Packet Ring)による高速障害回避などの機能強化で、これまでATMやSONET/SDHが圧倒的優位に立っていたWAN接続サービスの分野に進出を果たした。強化されたイーサネット技術を利用して、各キャリアは広域イーサネット接続サービスを提供することが可能になった。企業LANとの親和性が高く、上位プロトコルを選ばないネットワーク構築の柔軟性というメリットにより、広域イーサネット接続サービスは大きな注目を集めつつある。

 だが、「従来型のイーサネット技術を広域ネットワークで使用するには、拡張性や信頼性、運用コストの面で大きな問題がある」とノーテルネットワークス ソリューションマーケティング オプティカルソリューションズ部長の亀田正博氏は説明する。いくつか例を挙げよう。一般的に、広域イーサネット接続サービスでは、共有型ネットワークをユーザーごとに分割して提供するために、IEEE 802.1Qのタグ付きVLAN技術を使用しているが、拡張タグで識別できるVLANは4096が上限となっており、それ以上のユーザー数には対応できない(拡張性の限界)。スパニングツリーの存在により、障害回復速度が遅く、リングやメッシュを構成できない(信頼性の低さ)。これら以外にも、帯域制御やセキュリティなどで多くの問題を抱えている。ベンダによっては、独自の拡張機能により弱点を克服する試みが行われていたりするが、相互接続性や拡張性という意味で、抜本的な解決策になっていないというのが現状だ。

 同社では、第2世代の光イーサネット技術の必要性を説き、今回発表した製品ラインナップはそれを実現するものであるとする。第2世代の光イーサネットでは、トラフィック・エンジニアリングにMPLSを使用するEthernet over MPLSの技術が中心になり、MPLSネットワーク上にイーサネットのフレームを送出する形態になるという。これにより、回線的には従来までのATMやSONET/SDHが使用できるほか、IP-VPNで構築したインフラやコア・ルータをそのまま転用できる。唯一の変更点は、IP-VPNでいうところのプロバイダのエッジ部分、つまりユーザー回線を収容してバックボーンへの接点となるエッジ・ルータにある。ここを機能拡張することで、イーサネット接続サービスの提供を実現する。

 さらに同社では、エッジ・ルータの部分を「PE Edge」「PE Core」という2つの要素に分け、それぞれに「ユーザーの収容」「MPLSラベル付与/トラフィック制御」という別々の役割を与えることで導入や拡張を用意にするソリューション、「Logical Provider Edge」を提唱している。PE Edgeに使用するOM1200は安価に提供されるため、ユーザーの増加にも容易に対応できるメリットがある。「サービス・プロバイダは既存設備を入れ替えることなく、最小限の投資で新たな付加価値を持ったサービスの導入が可能になる」(亀田氏)

 今回発表された製品の主な特徴は、下記のとおり。

●OPTera Metro 8000 Services Switch
 OM1200などで収容したユーザーのトラフィックに、ワイヤ・スピードでMPLSラベルを付与して、バックボーンへ送出するスイッチ製品。MPLS上でのany-to-anyのLAN接続サービスを提供する。プログラマブル・ネットワーク・プロセッサを搭載しており、ワイヤ・スピードを維持しつつ、仕様の変更に柔軟に対処可能。2002年第2四半期より販売開始。

OPTera Metro 8000 Services Switch

●OPTera Metro 1200 Services Module
 12ポートの10/100BASE-Tインターフェイスを持つ、PE Edge機能を提供する製品。ユーザーを収容するのが主な目的だが、VLANとは関係なしにポート間の通信を完全に遮断する高いセキュリティ機能を持っている。2002年第2四半期より販売開始。

OPTera Metro 1200 Services Module

●OPTera Metro 3500 Multiservice Platform
 4ポートの10/100BASE-Tインターフェイスのほか、2ポートのOC-48aインターフェイスを持つ、PE Edge向け製品。Ethernet over RPRやBLSR(Bi-directional Line Switched Ring)をサポートする。Release 9.0Jは出荷済み。新バージョン(10.1)は2002年5月より販売開始。

●Preside Ethernet Provisioning
 サービスの設定や管理を行うツール。ネットワーク上に接続されたOM1200などを自動探索する機能があり、エンド・ポイントといくつかのパラメータを設定すれば、すぐにでもサービスを開始できる簡便性が特徴。2002年第2四半期より販売開始。


 Ethernet over MPLSの技術はまだドラフト段階だが、間もなく標準化される。同社では、仕様の策定に積極的に関与しているという。「あまり知られていないが、ノーテルはMPLSの標準化において多くの活動を行っている」(米ノーテルネットワークス Vice President Intelligent Internet/Clive D.Foreman氏)。OM8000のネットワーク・プロセッサがプログラマブルなのは、この仕様変更に柔軟に対応するためでもある。

 広域イーサネット接続サービスやIP-VPNサービスは、その需要の高まりから、多くのサービス・プロバイダが市場に参入してきている。結果として、サービス単価は下がり、ユーザーにとっては喜ばしい状況だが、サービス・プロバイダにとっては収益の低下につながっている。にもかかわらず、技術は進歩を続け、サービス・プロバイダは巨額の設備投資を回収する前に、新たな追加投資に悩まされているのが現状だ。

 昨年、米国で多く見られた大手サービス・プロバイダの破産は、設備投資の回収フェイズでサービス単価の低下と不況に見舞われたことが原因であった。現在、日本をはじめとするアジア市場は、まだこの不幸な状況には達していない。ゆえに、多くのネットワーク機器ベンダは日本市場に着目しており、新しい技術を引っさげて自社製品のアピールに必死だ。今回発表されたノーテルの新製品は、使いやすい広帯域接続サービスを欲する市場ニーズと、不況という世相をうまく反映といえるだろう。

(編集局 鈴木淳也)

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ノーテルネットワークス

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