ホームシアターがストリーミングで実現、マイクロソフト

2002/6/11

 マイクロソフトが6月6日に発表したWindows Mediaテクノロジー「コロナ(Corona):開発コード名」は、ブロードバンドを通じて家庭のPCにホームシアターレベルのAV環境を実現する。同社は現在までのWebストリーミングの歴史を3段階に分け、「コロナ」の登場で第3世代に到達すると意気込む。なお、第1世代とは音声ファイルをダウンロードして聞くだけの環境であり、第2世代とは音声ファイルとともに映像ファイルをダウンロードして視聴する環境である。

 米マイクロソフトのアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデント 古川亨氏は「今後、クライアントはPCに限らなくなるだろう。PC、PDA、携帯電話、テレビなどあらゆるデバイスがブロードバンドで接続され、Windows Mediaテクノロジーをつうじて、劇場レベルのAV環境が享受できるようになるだろう」と次世代ストリーミング市場における同社の強みを強調した。

マイクロソフト コーポレーションのアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデント 古川亨氏

 「コロナ」のプラットホームは、「Windows Mediaサーバー」と「Windows Media Player」、「Windows Media A/V CODEC」、「Windows Mediaエンコーダ」、「Windows Media SDK」で構成される。

 このうち、「Windows Mediaサーバー」は、Windows .NET ServerのWindows Media Servicesとして搭載されている。現段階ではベータ版で試験利用ができる。2002年夏までにほかのテクノロジーのベータ版を提供し、2002年度内に「コロナ」プラットフォーム正式版を提供する予定だ。

 「コロナ」プラットフォームの主な機能は、音声・映像のコーデック技術と配信技術が核となる。以下、その特徴を挙げる。

  • Windows XPベースのPC上で5.1チャンネル・サラウンド・ステレオ・サウンドを実現
  • 「24ビット量子化/サンプリング周波数96Khz」オーディオを128〜768Kbpsのデータ転送速度で実現
  • フル・サラウンド・ステレオ・サウンドの複数の長編映画を1枚のDVDに保管することが可能
  • 従来バージョンより20%以上の効率化を実現し、720p(走査線720本)のHDTV並の映像を配信
  • バッファリングによる遅延のない即時配信の実現
  • ネットワークの過負荷によるバッファリングの可能性を削減することで、中断することのない再生環境を実現

 「コロナ」登場と同時に同社では、具体的なビジネス展開に向けたパートナーとの提携、協業体制も発表した。

 ソニーとは、VAIOユーザーに向けたeラーニングサービス提供でパートナー契約を締結、Windows Mediaによるストリーミングを活用して、オンラインでソフトの使い方を教える教育サービスを提供する。NTT東日本とは、「Bフレッツ」および光ファイバサービス向け「フレッツ・スクウェア」を利用したストリーミング配信サービスの提供で提携を結んだ。@niftyは、Windows Mediaサーバーを使用し、個人向けのストリーミングサービスを開始する。エイベックスは、Windows Mediaテクノロジーを採用した新譜楽曲のオンライン・ダウンロード販売を7月1日に開始する。さらに、松下電器は同社の全AV製品にWindows Mediaテクノロジーを採用する。

 こうしてみると、マイクロソフトのストリーミング市場戦略は、エンドユーザーとして家庭だけを対象としているように感じられる。しかし、同社がWindows Mediaテクノロジーと並行して開発する著作権管理技術「(Digital Rights Management(DRM)テクノロジー」は、必ずしも音声や映像などのAVコンテンツの権利保護だけに限定されはしない。

 古川氏は「今後、企業内で配布されるテキストなどのドキュメントについても著作権の権利保護が必要になってくると予測できる。つまり、Windows Mediaテクノロジーを利用して、社内で閲覧できるドキュメントにアクセス制御をかける仕組みができあがっていくのではないか」と話す。このような環境でカギを握るのが、XMLだろう。

 実際、デジタル著作権管理言語開発企業であるContent Guard社は4月、「OASIS」(XMLの相互運用性に関する標準を推進するコンソーシアム)に、eXtensible rights Markup Language (XrML)を提供している。

 XrMLとはデジタル著作権を管理するための言語であり、デジタル・コンテンツやサービスの利用、保護に関する権利と条件を規定する共通の手段を提供するものである。既存・新規を問わずあらゆるDRMシステムとの統合が可能であり、汎用性の高い著作権管理言語として注目を浴びている。

 家庭から企業へ、Windows Mediaテクノロジーが浸透することにより、マイクロソフトにとっては、Windows Mediaテクノロジーと.NET戦略との整合性がきれいにとれるようになるのである。

(編集局 谷古宇浩司)

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