サイベース、シェアトップのiAnywhereでオープン戦略を貫く

2002/7/3

 RDBMSではオラクルやIBM、マイクロソフトにシェアを奪われ、トップグループに差をつけられたサイベースだが、モバイルデータべース分野では好調を維持している。米ガートナーがこの市場に関する調査を開始して以来、6年連続でシェアナンバー1を獲得しており、最新の調査結果ではマーケットシェアは68%とレポートされている。米国では2000年、この事業が好調なことから100%出資の子会社、アイエニウェア・ソリューションズとして独立、日本ではサイベース内で独立事業ユニットとして展開している。

 同社は7月2日、主力製品の最新版「SQL Anywhere Studio 8 日本語版」の発表に合わせてユーザー向けカンファレンス「iAnywhere Conference 2002」を開き、今後の戦略や新製品の機能などを紹介した。

米アイエニウェア・ソリューションズ Director of Worldwide Business Development Chuck Lownie氏

 「モバイル&ワイヤレス ソリューションの現実と成功のカギ」というタイトルでキーノートを行ったのは、米アイエニウェア・ソリューションズ Director of Worldwide Business DevelopmentのChuck Lownie氏とサイベース 取締役副社長兼アイエニウェア・ソリューションズ カントリー・マネージャー 早川典之氏。

 Lownie氏は、同社の現状および全体の戦略について説明した。米アイエニウェアの事業の柱は、モバイル、組み込み、ワークグループの3つのセグメントをターゲットに展開しているデータベースソリューション、モバイル・ミドルウェア・ソリューション、そしてmビジネスソリューションの3つ。そのキーワードとなるのは、“Always Available”、つまり必要なとき、可能なときに接続するというモデルだ。

 このキーワードについてLownie氏は、「コミュニケーション機能とリアルタイムでのデータアクセス機能により、必要な情報を必要なときに得ることを可能にする」と語る。そして、同社の製品は常時接続と随時接続のどちらにも対応しているため、「それぞれの接続形態の長所を組み合わせて利用できる」とした。具体的には、「サーバとのリンクなしに機能するアプリケーション、ローカルデータを最大限に活用する仕組み」となる。

 これを実現するものとして、同社は、mビジネスプラットフォームを提唱している。iAnywhereの製品群で構築される同プラットフォームは、Always Availableなアクセス、多様なデバイスとネットワークのサポート、DBやレガシーシステムなどとの接続性、信頼性、可用性、拡張性、そしてセキュリティを特徴とする。具体的には、データ管理層をベースに、データの同期、メッセージング、コンテンツ配信などの機能、そしてデバイス管理、電子メール管理などのソリューションで構成される。その上にアプリケーションフレームワークが載り、各種のデバイス、さまざまなアプリケーションに1プラットフォームで対応する、というものだ。DBは、サイベースはもちろん、オラクルなど主要な製品をサポートしている。

 同日、日本語版を発表した「SQL Anywhere Studio V8」は、データ管理、データ同期のソリューション。RDBの「Adaptive Server Anywhere」エンジンをコアとし、ハイエンド級の拡張性を実現する。どの製品でも貫いている設計方針である、エンドユーザーおよび開発者への使いやすさの提供、パフォーマンス、組み込み性、相互接続性やオープン性、クロスプラットフォームのサポートに加え、最新版ではパフォーマンスの向上が最大の特徴となっている。

 「全世界での使用実績は1万サイト以上だ。この成功は、あらゆるプラットフォームをサポートし、ベースから作り上げた製品だからこそ」とLownie氏は述べ、今後もmビジネスソリューションのワンストップ・ソースを目指すと語った。

サイベース 取締役副社長兼アイエニウェア・ソリューションズ カントリー・マネージャー 早川典之氏

 日本市場における同社のビジネスについて説明した早川氏は、代表的な事例として、POSシステムを拡張して、バーコードリーダーを実装したPDAを用いて顧客データベースをワイヤレスLANで同期する例などを挙げ、システムのモバイル化によるメリットを強調した。日本におけるライセンス数は46万件以上で、多くのSFAパッケージに利用されているという。

 日本では製品の全ラインナップが日本語化されておらず、進出に慎重な姿勢を取ってきたが、早川氏は同社の使命を以下のように語った。「日本では“できるところから埋めていく”という方針に基づき、モバイルeビジネスソリューションとサービス、モバイルおよびワークグループのデータ管理とデータの同期を図る製品を提供してきた。今後は、ワイヤレス・アプリケーション・プラットフォームとして展開していきたい」(早川氏)。そのために、予想されるPDAと携帯電話の収れんなどに備えて市場動向を注視し、「次の世代の波に乗る」と早川氏は自信を見せる。同氏はさらに、顧客シェアの獲得、生産性を向上させるソリューションの提供も目標に挙げた。

 モバイルは国や地域により特性がかなり異なるが、日本の市場については、モバイルeビジネス、ワークグループコンピューティング以外に、CPUの性能向上が著しい情報家電にも注目しているという。

 SQL Anywhere Studio V8は7月2日より出荷を開始。価格は、基本パッケージが9万2000円で、追加クライアントが2万5300円。

(編集局 末岡洋子)

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