[Interview]
デルの次なるターゲットは“モジュラー・コンピューティング”

2002/7/12

 2002年におけるIAサーバの話題の1つは、各社が実際に発売し始めたブレードサーバだろう。ブレードサーバとは、サーバとしての最小限の機能(CPU、メモリ、HDDなど)を1枚のサーバブレードと呼ぶボードに収め、それをシャーシに複数挿して運用する、1Uサーバ以上に密度を高めた次世代の高密度サーバだ。

デルコンピュータの発表した「Power Edge 1655MC」のサーバブレード部分

 デルコンピュータも、次世代サーバを投入すべく、4月に同社初のブレードサーバ「Power Edge 1655MC」を米国で発表した。同製品の発売は、今年第3四半期となる。同製品は、CPUにインテルのPentium III 1.26GHzを採用(最大2基搭載)し、SCSI HDDを2基搭載、最大2GBまでメモリを拡張できる。高さ3Uの筐体には、6基のサーバブレードを挿すことが可能だ。

 デルの戦略では、ブレードのほか、ブリックと呼ぶサーバを含めて“モジュラー・コンピューティング”と呼んでいる。ブリックとは、ブレードをより密度や柔軟性を高めたサーバで、CPUやメモリ、HDD、I/Oなどがモジュール化され、それらをユーザーの要望で組み合わせて運用する。同社ではこの2つのコンセプトを持つサーバを、同社のサーバ戦略の中核に据えている。今回、米デル Enterprise System GroupのSenior Manager ダレル・ワード(Darrel Ward)氏に、そうした“モジュラー・コンピューティング”戦略などについて話を伺った。


――まずは御社のモジュラー・コンピューティングについて聞かせてほしい。

米デルコンピュータ Enterprise System GroupのSenior Manager ダレル・ワード(Darrel Ward)氏 初めての来日の感想を聞くと、「雨ばかり降っている」と、おどけて答えてくれた

ワード氏 デルにおけるモジュラー・コンピューティング計画は、2年ほど研究をしてきた分野だ。もともとiDC向けのコンピュータに、どのような問題があったのかを調査したものだ。具体的には、サーバの密度、導入時の問題、ケーブルマネジメント、過熱、冷却などについて、サーバの柔軟性と拡張性を損なわず、しかもコストを上げずに解決可能かを研究した。

 その結果、われわれは2つのモジュラー・コンピューティングのコンセプトを打ち出した。それがブレードとブリックだ。このブレードとブリックによって、ローエンドから4wayや8wayのようなハイエンドサーバまでをすべて対応できるようになる。実際には、ブレードサーバはローエンド市場に、ブリックサーバはハイエンド市場に対応する。

――もう少しブリックサーバについて説明してほしいのだが。

ワード氏 ブリックはブレードサーバを補完し、ハイエンド向けとして考えているサーバだ。ブレードサーバと同様に複数のサーバを1つのシャーシに収め、サーバの密度を高めている。

 ブリックサーバは、サーバ密度、ケーブル、導入までのスピード、そしてコストの削減といった要求を満たしながらも、柔軟性を犠牲にせずに実現できるサーバだ。こうした要求を、CPUやメモリ、ストレージ、I/Oなどのモジュラー化というアプローチで実現させる。それによって、ユーザーはシャーシに自由に、そして必要なモジュラーを追加していくだけで、最適なシステムを構築できるようになる。

――現在のブレードサーバは、なるべく多くのブレードを搭載できる高密度タイプと、ブレード当たりの性能向上を図る高機能タイプの2タイプあるようだ。そういった観点から見ると、御社の製品は高機能タイプだが、高密度タイプのアプローチを取らなかった理由は?

ワード氏 実際、当初はわれわれも3Uの筐体に1CPUのサーバブレードを18枚挿せる低電圧かつ高密度タイプの製品を投入しようと考えていた。しかし、社内のユーザー調査の結果では、低電圧で高密度のサーバ市場は小さい、という結論に達した。それよりも要求が多かったのは、Xeonの領域だった。

 確かに、現在は低電圧で高密度なブレードサーバの方が市場が大きく見えるが、2、3年後までには流れは変わり、われわれの狙っているセグメントの市場が主流になると考えている。それが理由だ。

――サーバブレードとエンクロージャとの間のインターフェイスやイーサネット・スイッチのボードなど、標準化されていないが、今後もこうした傾向は続くのか? それとも標準化は進展するのだろうか?

ワード氏 確かに、標準化されていないことは事実だ。唯一あるといえそうなのはヒューレット・パッカードが採用しているCompactPCIかもしれない。が、この規格はどちらかというと工業製品向けだ。この規格では、サーバブレードが大きくなってしまう欠点があり、現在のラック密度の高いIAサーバ環境には向かない。(CompactPCIで)標準化するにしても、CompactPCIをもっと小さくした規格の方がよい。

 現在、インテルやIBM、それに当社などが標準化活動を行っている。そのため、2、3年後にはこの状況は変わるだろう。ブレードサーバの標準化で意識しなければならないのは、ファイバ・チャネル、SCSI、InfiniBand、3GIOなどだ。しかし、CompactPCIではこうした通信技術を認識しているわけではない。

――ハイエンドサーバや高密度サーバでは、汎用機の独自技術を持っている企業が有利だとか、小型化の実装技術を持っている日本のベンダが有利だという人もいるが、それについてはどう考えるか?

ワード氏 確かに過去のデルの評判は、技術革新で知られてきた会社ではないことは認めよう。他社の研究開発成果を利用するということで知られてきたのであり、しかもそれを低価格で投入してきた。確かにサーバベンダの多くは、汎用機の技術を利用してビジネスを展開している。しかし、例えばチップセットなどでもインテルで標準化されれば、そうした強みは生かせなくなる。われわれは常に主流となった市場に製品を投入してきたのであり、そこでは必ず成功する。

――ブレードサーバやブリックサーバなどでは、サーバ管理が重要になるが、その対応は?

ワード氏 デルが提供する「OpenManage」には、サーバ管理ツールやストレージ管理ツールが含まれる。その中には当社が開発した機能もあれば、OEMで供給を受けた機能、ライセンスを受けてユーザーに提供している機能もある。そのため、そうしたサーバ管理などに不安はない。

 ここで、長期的な点から管理がどうなるかを話してみたい。例えばストレージでは、物理ディスクとは関係なく、バーチャルに管理されていることがあるが、サーバもストレージと同じように、リソースのプールとして管理されるようになってくるだろう。場所やユーザー別などのようにサーバが管理されるようになると思う。

――IA-64サーバ市場は、思っているほど盛り上がっていないようだが、その点どのように考えているのか?

ワード氏 まったくそのとおりだ。われわれが期待していた状況よりもはるかに下回っている。デルではItaniumサーバ「PowerEdge 7150」を発売したが、IA-64に対応したアプリケーションがあまり出てこなかったことなどにより、期待を裏切っている。

 それでも、IA-64サーバが今後2年の間に主流となるだろう。.NETが普及し、Linuxの世界でも64ビット・アプリケーションがサポートされるだろう。そうなれば、デルは再度IA-64サーバを投入することになる。それは、Madison(第3世代Itaniumプロセッサ・ファミリの開発コードネーム)がリリースされるころになる。

[関連リンク]
デルコンピュータ
デルコンピュータのブレードサーバの発表資料

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