サンがエッジコンピューティング市場を狙うわけ

2002/8/20

左から、Executive Vice President、Marketing and Business Development Chief Strategy Officerのマーク・トリバー(Mark Tolliver)氏、理事、製品・サービス事業統括本部 本部長 ジェームズ・ホワイトモア(James Whitemore)氏、Cobalt&Linux製品事業本部 本部長の北島弘氏
 サン・マイクロシステムズは8月19日、x86べースの汎用Linuxサーバ「Sun LX50」を発表した。これまで同社が販売してきたLinuxサーバアプライアンス「Cobaltシリーズ」の機能を別系統に拡張した製品である。

 Cobaltシリーズが、利便性を重視するためにWebベースのインターフェイスを重視する一方で、OSとして搭載してきたRedHat Linuxの存在を意図的に隠す製品設計を行っていたのに対し、Sun LX50では、システムインテグレータが独自にアプリケーションをポーティングすることが容易にできる仕様に変更、汎用Linuxサーバとしての体裁を整えた。Sun LX50に搭載される「Sun Linux5.0」は、RedHat Linuxをベースにサンが手を加え、Cobaltシリーズに搭載してきたSun Linux4.0を拡張したものである。

 ターゲット市場はCobaltシリーズと同様で、エッジコンピューティング市場、すなわち、電子メールやWebサーバ、分散処理による科学技術演算分野、アプリケーション開発、教育・公共市場となる。米サン・マイクロシステムズのExecutive Vice President、Marketing and Business Development Chief Strategy Officerのマーク・トリバー(Mark Tolliver)氏は、これらエッジコンピューティング市場について、「エッジコンピューティング市場は、Webサーバ、ファイアウォール/VPN、電子メールなど企業のフロントエンドにあたる。この市場をおさえることは、企業におけるITシステム全体のカバーを目指すサンにとって重要課題」とその重要性を説く。実際、サンにはエッジコンピューティング市場で最適なコストパフォーマンスを発揮すると言われる32ビットサーバのラインアップを持っていなかった。今回、Sun LX50をラインアップに加えることで、トリバー氏の言う「企業のITシステム全体をカバーする」体制を整えたことになる。しかも、システムインテグレータが自社のアプリケーションを組み込んで販売できる汎用型は、まさにサンが望む製品ラインアップだったといえるだろう。

Sun ONEとエッジコンピューティング市場の相関関係(クリックすると拡大します)
 しかし、実際に販売を行うには困難がある。特に日本市場でサンの販売パートナー大手といえば、富士通などのハードベンダや伊藤忠テクノサイエンスといった大手システムインテグレータだが、これらのパートナーはすでにエッジコンピューティング市場に向けた製品を販売している。メーカー系パートナーであれば、すでに自社製品のラインアップを持っている状況である。サンはこの市場に対して、後発組の負い目がある。

 サン・マイクロシステムズ Cobalt&Linux製品事業本部 本部長の北島弘氏は「メーカー系パートナーに扱ってもらうのは難しいと感じている。実際にはハードに依存しないシステムインテグレータに頼ることになるだろう。できればこの市場を全部サンのものにしたい」とその胸中をのぞかせた。

 サンとしては、案件の足がかりとなる可能性の高いエッジコンピューティング市場を皮切りに、ストレージ、メインフレーム系へと同社システムの導入を加速させたいところだろう。これはつまり、同社が定義する「S1」(ストレージ)、「H1」(Web系)、「V1」(メインフレーム系)市場の支配を意味する。

(編集局 谷古宇浩司)

[関連リンク]
サン・マイクロシステムズの発表資料

[関連記事]
サンの新しいフラグシップ「Sun Fire 15K」 (@ITNews)
サン、Javaアプリ実行技術「Java Web Start」 (@ITNews)
「Solaris 9は囲い込みを狙うものではない」とサンは強調 (@ITNews)
サンのハイエンド・サーバ「はっきりいってIBMとは競合になってない」 (@ITNews)
コバルトが集中管理用アプライアンスを発表 (@ITNews)
サン、コバルト・サーバの最上位モデルを発表 (@ITNews)
サンから、買収後初めてのCobalt Qubeが登場 (@ITNews)
すべての問題を解決してくれるアプライアンス・サーバ (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)