[ICカードフェア2002開催]
日本発のスマートカードで、「国際市場の50%以上を獲得」

2002/10/1

東京工業大学 フロンティア創造共同研究センター 共同研究機能情報系分野教授の大山永昭氏

 クレジットカードや電車の乗車券、さらにはセキュリティ分野などと、本格的な導入が始まったスマートカードについての展示会「ICカードフェア2002」(主催:財団法人ニューメディア開発協会)が9月26、27日の2日間、東京の科学技術館で開催された。2日目の27日に総括講演を行った東京工業大学 フロンティア創造共同研究センター 共同研究機能情報系分野教授の大山永昭氏は、「スマートカードはインターネットで自由と安全を保障する際の、安全のキーデバイスになる」と述べ、スマートカードの社会的な重要性を訴えた。

 スマートカードは日本が世界に率先して技術開発を行ってきた分野。大山氏が代表を務め、通信会社や電子機器ベンダ、システム会社が組織する団体「次世代ICカードシステム研究会」は「NICSSフレームワーク」と呼ばれるスマートカードの規格を策定し、日本をはじめ、世界に導入を呼びかけている。

 大山氏は講演の中でスマートカードの規格について、「日本発のデファクトスタンダードを取るためにも導入が進んでいるEUのほか、VISA、マスターなど世界的カード会社との連携が不可欠」と強調するとともに、今年8月に始まった住民基本台帳ネットワークで将来使用される「住民基本台帳カードがきっかけとなり、社会でスマートカードが広がる」との認識を示した。住民基本台帳カードは、NICSSフレームワークで作成されることがすでに決まっている。

 大山氏はさらに「住民基本台帳カードが、行政連携カードとしても利用できるようになり、1枚のカードが多目的に使えるようになる」と予測した。

 政府のIT戦略会議のメンバーでもある大山氏は、スマートカードについて日本が目標とすべきこととして、「スマートカードシステム産業の育成、国際市場の50%以上の獲得、マルチアプリケーションカードの実用化、情報家電を含むすべての電子機器にセキュアICチップを埋め込む」ことを挙げて、「国として方向性を打ち出すべき」と主張した。

 JR東日本のSuicaやソニーが開発したスマートカード「Edy」など民間分野でのスマートカード利用は広がりつつある。しかし、住民基本台帳カードなど公的分野の利用は、システム投資の大きさや発行枚数の多さなど、需要の大きな喚起になるのは間違いない。

 大山氏によると、すでに始まっている行政での電子署名サービスに続いて、2004年にも公的個人認証サービスが始まる見通し。いわゆる印鑑登録制度を電子化して、個人の身元をスマートカードを使って確認するシステムで、社会の仕組み自体を大きく変えることになりそうだ。

 公的個人認証サービスが始まるときには、スマートカードは社会的なインフラとして確立されているだろう。大山氏は「スマートカードのインフラは利用者、サービス提供者、ベンダのすべてに有益である」としたうえで、「ビジネスの環境を向上させて、新規ビジネスの創出につながる」と述べた。スマートカードに関するビジネスの芽は、公的分野、民間分野を問わず、見つけられそうだ。

(垣内郁栄)

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ICカードフェア2002

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