失敗体験の積み重ねがオブジェクト指向開発スキルを向上させる

2002/10/26

 日本ラショナルソフトウェア(以下ラショナル)が展開するオブジェクト指向開発実践トレーニングコース「ラショナルユニバーシティ」には、J2EEのアーキテクチャの実装に関する理解やオブジェクト指向に基づいたモデリング方法などを学習する「Roseを用いたJ2EE分析設計」がある。モデリングから実装に至る一連の開発作業に関する学習のニーズは高くなりつつある。実装における言語は特にJavaの人気が高い。

 同トレーニングコースのOEM提供を受けて、J2EEシステム開発にRUPを適用する実践コースを運営するのがコスモ・サイエンティフィック・システムだ。同社フレームワーク・ソリューション事業部 清水康斗氏は「(人気は高いものの)受講者の多くはUMLおよびJ2EE開発の未経験者が多い」と話す。一部、JSP、Servlet経験者もいるが、受講者の大半は、今後社内プロジェクトでオブジェクト指向開発を適用していこうとする企業のエンジニアが中心で、現段階ではクライアント/サーバベースの開発プロジェクトに従事する人が多い、という。同社がラショナル・ユニバーシティのトレーニング研修コースを開設したのも2002年6月。つい最近のことである。オブジェクト指向開発のニーズは非常に高いが、開発現場の状況はニーズに追いついていないという現状がみえる。

 清水氏によると、オブジェクト指向開発スキルの向上に必要不可欠な要素は「失敗体験の積み重ね」だとする。例えば、某物流会社のWebシステム開発において、コンサルティングファームがあるシステムの設計書を書いた。これを実装する案件が清水氏のもとに持ち込まれた。コンサルティングと実装が別々に発注されるのはよくあるケースだろう。しかし、問題はその設計書をベースに実装を行おうとしても、不可能であることがわかった。「こういうケースを回避するためにも、システムの中身を理解できる人が設計書を書かなくてはならない。そしてできれば、UMLで書く必要がある」。このようなことは、実際に失敗してみなければなかなかわからないものである。だが、プロジェクトが走り出していなければ、失敗さえもできない。

 「そのためには、社内に小さなトライアル・プロジェクトを立ち上げるのが最も有効だと思う。開発規模は要員が3〜5人程度が適当。このプロジェクトでRUPに沿った開発プロジェクトを始動させ、成功に導くこと」。途中には失敗を起すだろうが、その経験は次に生かされる。また、成功体験は、社内にオブジェクト指向開発を普及させる啓蒙活動の一助ともなるだろう。

(編集局 谷古宇浩司)

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コスモ・サイエンティフィック・システム

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