[Interview]
MSの顧客は、「Oracle Collaboration Suiteに乗り換える」

2002/11/21

 ITのビジネスは、常に変わり続けることがサバイバルの秘けつだという。とすれば、オラクルは今後もサバイバルできるのだろうか?

 今年のOracleWorldで、オラクルが最もアピールしたのは、Oracle9iでもOracle E-Business Suite 11iでもなく、Collaboration SuiteとLinuxプラットフォームだった。つまり、オラクルがグループウェアを売り、Linuxを推す。これまでの同社の歩みを知る者にとっては、違和感がなくもない。では、その意図はどこにあるのだろうか? そこで、米オラクル チーフ・マーケティング・オフィサー マー ク・ジャービス(Mark Jarvis)氏に、その点を聞いた。


――なぜオラクルがグループウェアを一生懸命ブッシュするのでしょうか? この分野で競合企業に追いつくには、参入が遅すぎると思いませんか?

米オラクル チーフ・マーケティング・オフィサー マー ク・ジャービス氏

ジャービス氏 思いません(笑)。われわれはマイクロソフトを最大の競合相手と考えていますが、オラクルとマイクロソフトの間には、ビジネスで大きな違いがあります。それは、オラクルがソフトウェアを売ったら、そのライセンスは永久に顧客のものですが、マイクロソフトが売ったソフトウェアに関しては、顧客は3年ごとに新しく買い直さなければなりません。

 われわれは、次のようなExchange Serverについての面白い点に気づきました。それは、今年の12月31日をもってマイクロソフトはWindows NTとExchange Server5.5のサポートを打ち切るのです。その結果、何百、何千の顧客が突然意思決定を迫られます。

 そこで、もう1つの選択肢をわれわれが提供するのです。米国での話ですが、旧バージョンからExchange Server 2000へのアップグレードには、ユーザー1人当たり455ドルがかかります。これをオラクル製品に変更することで、移行費用を含め150ドル以下で済むのです。ですから、われわれはマイクロソフトの顧客がオラクルに乗り換えるとみています。マイクロソフトの製品を使い続ける3分の1の価格で済むのですから。

――では、この分野で1番になれるのは、いつごろになるのでしょうか。

ジャービス氏 このモデルがいかに成功しているかを知れば、みんな驚くと思います。Exchange Serverはこの5年間、何のイノベーションも施されていません。基本的にはいまだに電子メール機能だけです。

 われわれはそこにボイスメール、ファイル共有、カレンダー管理などを加え、すべてを統合しました。次期バージョンでは、iMeetingも加わり、インスタントメッセージ(IM)なども可能になります。つまり、これまで別々の製品で提供されていたものをすべて統合しました。はっきりいって、これはマイクロソフトが5年前にしておくべきことでした。賭けてもいいですが、彼らは今後2年以内にわれわれと同じことをすると思います。

――日本での出荷は考えていますか。

ジャービス氏 現在は欧米市場にフォーカスしているのですが、日本にも参入することになると思います。日本の電子メール製品市場はほかの国とかなり違っているので、その機会を慎重に探る必要があるのです。

――Linuxについて質問させてください。数年前、オプションの1つにすぎなかったLinuxが、今やオラクルが最も勧めるプラットフォームになりました。Linuxの何がそんなに魅力的なのですか?

ジャービス氏 経済状況のせいで、人々の考え方が大きく変わりました。その証拠に、デルコンピュータの業績はすごく伸びている一方、Linux対応に遅れたベンダは苦しんでいます。われわれは、市場で最初にLinuxプラットフォームで稼働するデータベースやアプリケーションを出荷したベンダです。Linux対応のインテルチップ上でRACも構築しました。


 こうした筆者の疑問は、OracleWorldの来場者の疑問でもあったようで、同社 CEO兼会長のラリー・エリソン(Larry Ellison)氏へのQ&Aタイムの最初に話題に上った。その時のエリソン氏の回答は次のとおりだった。

――Collaboration Suiteについて

エリソン氏 Exchange Serverは、PC向けとして成長した製品だ。そのため、数千、数万ユーザークラスの大規模利用には向いていない。セキュリティ、信頼性、拡張性への対応は、マイクロソフトにはできない。今や電子メールはミッションクリティカルなシステムで、ビル・ゲイツ自身、電子メールはデータベースに入れるべきだといっているが、われわれの製品はボイスメール、ファイル共有、シングルサーチなどの機能が統合されてデータベースに入っている。

――Linuxについて

エリソン氏 Linuxは、iDCの分野でUNIXをおびやかしつつある。流通や金融業界でも使われ始めている。これまでは信頼性が唯一の課題だったが、それについて考える必要はもうない。なぜなら、Oracle9i RACでクラスタ化することで、堅牢性の高いシステムが構築可能だからだ。オラクルはLinuxをアンブレイカブルにする。われわれは、今年中に中間層のサーバ群のほとんどを2プロセッサで動くLinuxサーバにする。その方がコストが安く、速い。LinuxはITマネージャへの新しい答えだ。


 しかし、実際のLinuxに関していえば、エリソン氏がいうほどではないようだ。米ヒューレット・パッカード 副社長兼CTO マーティン・フィンク(Martin Fink)氏がテクニカルセッションで明かしたデータによると、市場でのLinuxの普及状況は、複数のディストリビューションの存在、拡張性への不安などが阻害要因となって、それほど普及が進んでおらず、Webサーバやファイアウォール製品のプラットフォームとして、またエンジニアや映画制作者など、一部専門家のデスクトップPCのOSレベルでの利用にとどまっている。

 現在、オラクル、HP、レッドハットが協力して、4CPUのOracle9i RAC環境下でLinuxプラットフォームのベンチマークテストを行い、リニアにパフォーマンスが向上することを実証しているところだそうだ。

 データベースを売るにはエンジニアを説得すればよかったが、グループウェアを売るにはエンドユーザーを説得しなければならない。Linuxビジネスを知っている企業は、UNIXビジネスを知っている企業と違う。すでにインテルやHPという強力なサポーターを得ているが、これまでと違うタイプの顧客とどうダンスしていくのか。それが、これからのオラクルに課せられたテーマになる気がする。

(吉田育代)

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