[Interview]
マイクロソフトのエバンジェリストが語る.NETの“真の姿”

2002/12/4

米マイクロソフト Director、.NET Framework and Visual Studio .NET Evangelism アラン・ジェントローム(Alain Gentilhomme)氏

 12月3日から2日間、マイクロソフトはデベロッパ向けのプライベートカンファレンス「Application Server Conference 2002」を開催している。同社では、2003年1月にリリースを控える「Windows .NET Server 2003」を起爆剤に、XML/Webサービスを核としたエンタープライズシステムインフラの構築にまい進する意思を強力にアピールしている。来日した米マイクロソフト Director、.NET Framework and Visual Studio .NET Evangelism アラン・ジェントローム(Alain Gentilhomme)氏に、エンタープライズ市場における.NETの現在のポジション、Windows .NET Serverの今後のロードマップなどを聞いた。

――「企業アプリケーション開発の新基準」と題する基調講演で、J2EEと.NETの両開発環境におけるコード量の違いに言及していたが。

ジェントローム氏 プラットフォームの生産性について指摘をしたかったのだ。同じ機能を持つ、まったく同じアプリケーションをJ2EEベースと.NETベースで開発してみた。開発条件はほとんど同じなのだが、結果的に.NET環境で開発したアプリケーションのコード量は、J2EE環境のコード量を大幅に下回った。(余計な仕事量を増やさないという意味では).NET環境の方が明らかに生産性が高いという結論を得た。そもそも、なぜJ2EEはそれほど多量のコーディング作業が発生するのかを私は知りたいね。

――しかし、現実には、エンタープライズのシステム構築という分野において、J2EEの浸透率が.NETを上回っている。異論は多々あるだろう。しかし、開発者の平均的な感覚では、エンタープライズ分野ではJ2EEが優勢、というのが現状の認識なのではないだろうか。

ジェントローム氏 マイクロソフトが本格的に.NETのエンタープライズ向けビジネスを展開し始めたのはおよそ9カ月前だ。にもかかわらず、フォーチュン500社にランクする大企業の多くが、.NET環境によるシステム構築の導入実績を持っている。たった9カ月なのにもかかわらずだ。この現状を私はとても満足している。まずは成功だと言ってもいいと思う。成長率は、J2EE陣営とは比較にならないほど高いはずだ。

 世間の一般的な感覚がJ2EEに流れていることの要因の1つに、.NETへの信頼性に対する疑問がある。拡張性がないと言われていることも知っている。しかし、先ほど引き合いに出したフォーチュン500社におけるマイクロソフトのユーザーに直接、感想を聞くとまったく反対の答えが返ってくる。生産性、パフォーマンス、拡張性、どれをとっても決してUNIXなどにひけをとるものではない、と。一度使ってみればわかるのさ。

――J2EEでシステム構築を行っている企業を.NETに引き寄せる戦略はあるのか。

ジェントローム氏 戦略と言えるほど複雑なものではない。とてもシンプルだよ。さまざまなプロジェクトにかかわっていくというのがその答えだ。見込み顧客の中には、.NETかJ2EEか迷っている場合が多いものだ。例えば、セブン-イレブン(米国法人)。当初はJ2EE環境で、Webベースのサプライチェーンシステムを開発しようとしていた。しかし、3カ月経っても成果は一向に上がらなかった。結局、.NETに切り替えた。結果は成功だよ。もちろん、パートナーの力が大きいことは言うまでもない。日本では、特にアクセンチュアや日本ユニシスなどと協力をしている。

――開発者を取り込むには、魅力的な開発環境を提供する必要がある。ただし、現在ではオープンソースのプロダクトで開発環境を整えることが可能だ。特にJ2EEでは。マイクロソフトのオープンソースに対する立場はどのようなものなのか。

ジェントローム氏 マイクロソフトの目標というのは、素晴らしいプラットフォームを提供し続けるということに尽きる。マイクロソフトが提供するツールは、そのようなプラットフォームとの強いきずなから生まれてくるものだ。だからといって、マイクロソフトがオープンソースのソフトウェアを排除するかというとそんなことはまったくない。.NETの開発環境対オープンソースソフトウェアという図式はあまりにも極端で現実的ではない。だから、結局は、取り組みの違いということに尽きるのさ。

――IBMがEclipseをオープンソースコミュニティに寄贈したように、マイクロソフトがそのような姿勢を見せる可能性はあるのか。

ジェントローム氏 IBMの戦略は、Linuxに対する戦略と同様だ。つまり、プラットフォームやツールはほとんと無料だが、サービスは有料。IBMが展開する大規模なプロジェクトにおいて、ツールのコストは全体の何%を占めるだろうか。ほんのわずかだ。しかし、プラットフォームやツールをただで手に入れてもうまく使いこなすことができない。それで、IBMはサービスもセットで提供する。何百万ドルかかるか、私にはわからないが。そういうビジネス戦略とマイクロソフトのビジネス戦略はまったく違う。マイクロソフトは、アプリケーションを顧客に購入していただくというビジネスモデルだ。

――.NET Serverの今後のロードマップは。

ジェントローム氏 まずは、2003年に出荷予定のWindows .NET Server 2003だ。およそ2年間のスパンで、新バージョンの投入を計画している。次の製品Longhorn(開発コード)は、クライアントサイドの開発に注力していく製品になる予定だ。しかし、完全に計画を立ててビジネスを展開しているわけではないし、変化し続ける顧客の要望も取り込んでいかなければならない。Windows .NET Server 2003を使ってもらい、フィードバックを採用しながら、次世代の製品コンセプトは形つくられていくと考えて欲しい。

(編集局 谷古宇浩司)

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