[eWEEK] 「Lintel」プラットフォームとMSのLinux戦略

2002/12/26
by Peter Galli

 マイクロソフトが自社ソフトウェアをLinuxへ移植するかどうかにかかわらず、インテル互換ハードウェアを巡るWindows対Linuxの戦いには少なくとも1つのプラス効果がある。Windows版ソフトウェアの価格低下だ。

 調査会社のMeta Groupは先週、マイクロソフトが2004年後半までに一部の.NETコンポーネントをはじめとする各種ソフトウェア(SQL Server、Internet Information Services、そしてExchange Serverなど)のLinuxへの移植を開始すると示唆し、これが大きな波紋を呼んだ。

 コネチカット州スタムフォードにあるMetaの研究員によると、「リンテル」(Linuxとインテルの組合せ)プラットフォームが2007年にはサーバの売り上げの45%を占めるようになるため、(マイクロソフトのLinuxへの)ソフトウェアの移植は不可避だという。

 ワシントン州レドモンドのマイクロソフトでWindowsサーバ戦略を担当するシニアディレクターのPeter Houston氏は、そのような計画の可能性を完全に否定し、移行が技術的にどのようになるかについて言及することも拒否した。

 「1つだけはっきりさせておきたいが、顧客にとってはWindowsプラットフォームにフォーカスした方がビジネス的見返りでも、長期的なコスト面でも勝るとの確信は今後も変わらない。Linuxの製品を出す予定は全くない」(Houston氏)。

 ところが、マイクロソフトに近い情報筋がeWEEKに語ったところによると、Linuxへの移行はどのような形でも時間とコストがかかるという。この情報筋によると、「Linuxは先進性の面ではWindowsの足元にも及ばない。全く新しいコンポーネントモデルを開発するか、Java2 Enterprise Editionの採用を考えなくてはならないだろう」という。

 「Windowsプラットフォームを詳細に調べ、すべての共有サービスを全部まとめて移行しなくてはならない。これは大規模な作業になるうえ、ビジネス的見返りもない」(情報筋)。

 東京にある大手ネットワークソリューションベンダのエンジニア、David氏Blomberg氏などの顧客は、リンテルの脅威に対するマイクロソフトの対抗手段として、Linuxへの移行を検討するより前に大規模な価格引き下げを実施する可能性が高いという。

 「マイクロソフトによるFUD(ライバルに抱かせる恐れ、不確実性、疑念)や政治団体への資金提供は、もはや十分なものではなくなっている。彼らは自社製品の価格引き下げを実行するだろう。これはすべてのユーザーにとって朗報だ」(Blomberg氏)。

 マイクロソフトのHouston氏はこれに対し、Linuxが成長するとの予測は非現実的かつ極論であり、マイクロソフトはTCOを低く維持し、Linuxよりも高い価値を提供することで競争力を維持する、として反論している。

 マイクロソフトが今後もTCO削減をマーケティング戦略の全面に出してくるとの点で、同社のユーザーの意見はほぼ一致している。マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く国際コンサルティング会社のシステムマネージャ、Robert David氏は、CIO(情報統括責任者)にアピールできると考えてマイクロソフトが、今後もTCO削減を全面に出して対抗してくると予想している。David氏は、「だが、逆にCIOが価格を引き下げるようプレッシャーをかければ、マイクロソフトが不安になることは確実だと思う。この戦いは興味深いものになっていくはずだ。技術を使う立場としては常に選択肢が欲しいものだ」とし、マイクロソフトがLinuxサーバをサポートすれば選択肢が増え、サーバソフトウェアのすべての顧客にとってメリットがあると加えた。

 先週、eWEEKがLinuxおよびWindowsのユーザーに対してアンケートを実施したところ、マイクロソフトが一部の技術をLinuxに移植するのは避けられないとの回答を得たが、このような動きのメリットや有用性については意見が分かれた。

 ノーザン・バージニアの米国沿岸警備隊に所属するプログラマによると、マイクロソフトは「合法であろうとなかろうと、手段は選ばないだろう。法廷が悪事を簡単に片づけてしまったので、今後も彼らが変わることはないだろう」という。

 Blomberg氏は、「もうけ第一のコーディングしか行わないマイクロソフトには自社製ソフトウェアをLinuxに移植してほしくないし、製品化に要する時間やコストが開発に大きな影響を与えている限り、深刻なバグが減ることはないだろう」という。

 「自分はWindowsサーバの問題への対応ですでに手いっぱいで、Linuxでも同じような状況になるのは耐えられない。Windowsのソースコードを見ようとしても、マイクロソフトが将来的に奥の部分まで公表する可能性は低い。それとは対照的に、Linuxのコードはだれにでもオープンだ」(Blomberg氏)。

[英文記事]
“Lintel”Turns Up the Heat

[関連リンク]
マイクロソフト

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