インターネット遠隔医療、その最前線を追う

2003/1/18

慶應義塾大学 医学部 外科学教室 古川俊治氏

 慶應義塾大学病院と国立病院東京医療センター、フォーカスシステムズ、オリンパスプロマーケティング、シスコシステムズは1月17日、共同で研究・開発をしてきた遠隔医療システムの成果を発表した。インターネットを介した遠隔手術指導の臨床応用は世界で初めてのこと。国内における遠隔医療実証実験は1971年に和歌山県の山間地で行われたのを皮切りに、日本各地で行われてきたが、「INS64か専用線での閉じた回線を使用」(慶應義塾大学 医学部 外科学教室 古川俊治氏)するのが一般的という状況だった。

 技術的には、ADSLの普及により、データ転送速度の問題は解消されつつあったが、セキュリティ面での懸念が大きかった。慶應義塾大学を中心としたチームは、フォーカスシステムズのストリーム系共通鍵暗号「C4S」技術を利用することで、セキュリティ強度の高い情報伝送システムを共同構築した。
 
 C4Sの最大の特徴は、暗号強度と通信速度の両立が可能という点だろう。「暗号方式としてディファクトスタンダードといわれるDESや3DESは、強度としては申し分ないが、鍵長を長くすると転送速度が遅くなるという欠点がある」と古川氏は指摘する。C4Sは、転送速度に鍵長の影響をほとんど受けることがないのである。

 慶應義塾大学病院および国立病院東京医療センターは、2002年9月から月2回程度のペースで実証実験を行ってきた。2002年10月31日には、慶應義塾大学病院を指導側、国立病院東京医療センターを手術側として、腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を行い、動画情報の伝達が問題なく行えることを実証した。

映像や音声の遅延はほとんど起こらず、質も問題なかった

 今回、記者会見で行われたライブ・デモは、内視鏡を使った腹腔鏡下胆嚢(たんのう)摘出術の遠隔手術指導だった。映像や音声の遅延はほとんど起こらず、その質も問題なかった。国立病院東京医療センターの院長田中靖彦氏は、このようなインターネットを活用した遠隔医療の今後について、「病診連携上のネットワーク化、医学教育への展開、多施設間での会議、など幅広い応用が考えられる」と話す。医師間、病院間の技術間格差を埋める治療の標準化や、2004年から開始される卒後臨床研修の必修化に伴う遠隔医療システムとの連携など、具体的なメリットを想定できる分野は数多くある。

(編集局 谷古宇浩司)

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