「3年前は希望の星だった」、伸び悩むマーケットプレイスの今後

2003/3/13

 プラットフォームの開発に比べ、実際のビジネスで利用が期待されていたほどは進んでいないといわれる企業間の電子商取引。経済産業省は企業間ネットワーク取引が2002年に約40兆円規模、2006年には130兆円に達すると見ているが、どのような形で発展していくのか。野村総合研究所の経営情報コンサルティング部 上級コンサルタント 水野隆一氏は、BtoBの将来について、「コラボレーション型の取引が期待できる」と指摘した。

野村総合研究所の経営情報コンサルティング部 上級コンサルタント 水野隆一氏

 水野氏は伊藤忠テクノサイエンスが主催し、日本BEAシステムズが協賛したセミナー「製造業向けERP/SCM-B2Bi ソリューションセミナー」で講演した。水野氏は「Many to Manyでやりとりするオークション型や逆オークション型のマーケットプレイスは、3年前には希望の星だった。商品の値下げや業界のオープン化につながると見られていたが、期待通りには伸びていないのが実際だ」と指摘。「マーケットプレイスで取引されているのは、日米とも規格外品や返品、過剰在庫などが多い」として、「日本の大企業は情報格差を利用して、商取引を行うという慣習がある。マーケットプレイスは中小企業も同じ情報を持つことができる。そのため大企業にとってはマーケットプレイスはうれしい存在ではない。結果として、マーケットプレイスには通常の取引品が流通していない」とBtoBの普及を阻害している要因を説明した。マーケットプレイスが今後伸びる条件として水野氏は、「最大のバイヤーである政府の電子入札」を挙げた。商品の仕様が明確で、公正を期することが求められるため、大企業、中小企業ともに同じ条件で参加できるオープンな環境になりやすいのが理由だ。

 水野氏が企業間の電子商取引で今後、普及すると見ているのは、事前登録した特定企業間で取引を行うプライベートBtoBだ。オープンな電子商取引が普及しない背景には、主要な企業はすでにEDI(電子データ交換)など電子的な商取引の仕組みが普及していて、オープンな電子商取引を新たに始める動機が企業側で見つけられないことや、信用情報や与信情報不足で企業が不特定多数の取引に慣れていないという要因がある。そのため水野氏は、企業の電子商取引について「オープン取引といわれながら、結局は特定企業間の連携強化に動く傾向が強い」と指摘し、今後プライベートBtoBが普及するとの考えを示した。

 さらに水野氏は「本格的なeサプライチェーンを実現するには」として、「コラボレーションの強化が必要だ」と提案した。BtoBを行う場合に、商品の受発注情報だけでなく、販売計画や生産計画などの情報を企業間で共有することで、BtoBの本当の効果を出すことができるという。水野氏によると、そのうえで重要になるのは、社内プロセスの効率化だ。外部とのやりとりを電子商取引で効率化しても、社内のビジネスプロセスが停滞していれば、全体のスピードは低下する。水野氏はBtoBのコラボレーション強化には、「柔軟性があり、スピードのあるビジネスプロセスをいかに作るかが課題だ」と述べた。

(垣内郁栄)

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伊藤忠テクノサイエンス
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