アクセンチュアも中国に開発拠点設置

2003/3/14

アクセンチュア 事業開発グループ統括兼ソリューションズオペレーションズ統括パートナー 大上二三雄氏(左)、中国プロジェクト統括パートナー 吉田昌弘氏(右)

 アクセンチュアは3月13日、中華人民共和国(中国)の大連市にデリバリーセンター(システム開発、保守・運用および間接業務アウトソーシングのサービスを提供するセンター)を設立したと発表した。漢字圏(中国、韓国)市場を視野に入れたオフショアの開発拠点という位置付けである。マネジメント層をアクセンチュアが派遣し、現地採用で人員の育成を行っていく。開設当初は50人体制だが、2005年までに1000人強の体制に拡大する予定。

 アクセンチュアが中国に本格的な進出を果たしたのは1992年。現在、上海、北京、香港、台北(台湾)の4拠点に500人強のスタッフが常駐しており、大連が5番目の拠点となる。ただ、大連のデリバリーセンターは、上海、北京などと違い、日本企業の受注を中心とした開発案件の下位工程を担当する拠点となる。主な機能は、アプリケーション開発や運用・保守のほか、経理、人事、総務などのアウトソーシングを請け負う間接業務、アジア地域向けのアナリストやコンサルタント向けの教育など。日本語、中国語、韓国語、英語でビジネス展開を行えるのが特徴で、例えば日本企業から受注した案件の場合ならすべて日本語での対応を行うことになる。
 
 アクセンチュアでは、このようなソリューション・デリバリー・センターを全世界40カ所以上で展開している。もちろん、東京にもあるが、日本の高価な賃金水準では価格優位性を追求するとしても限界があるのだろう。「現在の中国は、日本の1960年代から2003年に至る激動の歴史が凝縮された状態である。あるいは、明治維新期の日本はこうだったのではないか、と思えるほどのエネルギーが溢(あふ)れている」と同社 事業開発グループ統括兼ソリューションズオペレーションズ統括パートナー 大上二三雄氏は話す。そもそも同社の狙いは、中国に進出する他の大手ハードベンダと同様、廉価な人件費と反比例する中国の人材の質(ITの技術力、語学力)にある。その中で、開発拠点にあえて大連を選択したのは、北京、上海以上に人件費が廉価であり、東北3省からの人材流入による人件費高騰率の抑制という点、インフラ面の充実、大連市政府のサービス業誘致に対する強いコミットメントなどの要因が挙げられるだろう。

 この人件費削減という要因を数値でみると、日本市場との人件費の内外格差はおよそ50〜90%、それに管理コストや通信費などを追加しても単純に30〜60%のコスト削減が可能になる。要件定義や設計といった上流工程を日本で行い、開発、インテグレーション作業を大連に移管することで、「品質はよいが、価格が高いのがネックだった」(大上氏)同社のビジネスに、価格優位性を持たせようとする戦略の一環として、同社は大連のデリバリーセンターに期待をかける。

(編集局 谷古宇浩司)

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