計算クラスタ、分散アプリ環境にアップルという選択肢

2003/4/15

Xserveクラスタノードモデル+Xserve RAID

 科学技術研究に求められる最適なクラスタリング計算環境とは? アップルコンピュータは、Xserveシリーズに、数値演算クラスタ環境および分散アプリケーション環境向けの「Xserveクラスタノードモデル」を追加することで、1つの解答を示した。Xserveの機能のうち、クラスタ環境では必要とされないものを省き、クラスタノードとして将来的な拡張ニーズに応えられるスタイルと価格(36万4800円)を設定しての挑戦である。

 選択できるプロセッサは、シングルまたはデュアルの1.33GHz PowerPC G4で、2GBまで拡張できるDDR SDRAMメモリ、2基の64ビット/66MHz PCIスロットを持ち、2基のギガビットイーサネット(GbE)、FireWire800、USB、4基のApple Drive Module内蔵ベイを用意するなど、スペックは、クラスタノードとしての必要最小限に絞った。とはいえ「Xeonを搭載した他社の同クラスのサーバと比較してもパフォーマンス面では圧倒的に優れている」とプロダクトマーケティング PowerMac担当課長の鯉田潮氏は自負する。処理能力は、1U最大19ギガフロップスで、標準的な42Uサーバラックでは、合計約800ギガフロップスの処理能力を実現する。拡張面では、最大720GBまで可能、2003年2月に発表したXserve RAIDシステムと接続することで、最大2.5TBまで拡張が可能となっている。

アップルコンピュータ プロダクトマーケティング PowerMac担当課長の鯉田潮氏

 同社では、BLAST検索(DNAフラグメントの遺伝子配列をマップ化されたゲノムのデータベース対して照合する作業)を実行した際のXserveのパフォーマンス力をアピールするため、他ベンダのハードウェアとのテストを実施。IBM eServer xSeries335やSun LX50 Serverと比較して、4倍以上の速さでDNA配列を照合した、とのテスト結果(2003年2月アップルにより実施)を公表している。

 ターゲット市場は、「一言で言えば“バイオ”でくくれるすべての市場」(鯉田氏)だ。すなわち、薬品、食品、生物、化学、科学、化粧品など多岐にわたる。だが、(本格的な科学技術計算分野で)サーバをクラスタ化するほどのニーズは今のところ「市場の1%にも満たないのではないか?」(鯉田)というほど、ニッチな市場でもある。というのも、クラスタ環境の現段階のニーズはまだ、スーパーコンピュータが握っており、IAのブレードサーバやXserveが狙う「数台から100台以上、予算にして数百万円から数千万円程度のクラスタ環境」(鯉田氏)のニーズはこれからだからだ。

 同社では、この市場を「これからの市場」と見ており、新規市場開拓と同時に、IAサーバからの乗り換え需要を狙っている。「Windowsから乗り換える際に、例えばLinuxと同様、Mac OS Xも選択肢として上るような位置付けを獲得しなければならない」と鯉田氏は、エンタープライズレベルでのアップルの存在感をさらに強めていきたいとの考えを示した。

(編集局 谷古宇浩司)

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アップルコンピュータ:Xserve

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