富士通社長に黒川常務、秋草氏は会長就任へ

2003/4/26

 富士通は4月25日、経営執行体制を変更すると発表した。発表では6月をもって代表取締役社長の秋草直之氏が代表取締役会長となり、経営執行役常務(4月25日付)の黒川博昭氏が代表取締役社長に昇格する。今後は2人で富士通グループ全体を統括していく。

富士通信社長に就任する経営執行役常務 黒川博昭氏(右)と現代表取締役社長の秋草直之氏

 秋草直之氏は「私があまりにも多忙だということがあり、これではたまらないと感じた。早いうちから次の後継者を指名しようと思い、黒川を指名した。私としては(突然の決断などではなく)予定通りだと思う」と述べ、富士通の業績悪化の責任で社長を辞めるわけではないと強調した。

 秋草氏は、黒川氏を後任に指名した理由について、「富士通にとって重要なお客さま第一主義が染みわたっている。これは当社にとってとても重要なことだ。真っすぐで、上にも下にも思ったことをいう。そして、馬力がある点だ」と指摘した。

 黒川氏は社長就任について「富士通は秋草氏の下で顧客視点の経営を貫き、スピードを上げてきた。この2点を富士通の企業方針として標ぼうしてきた。私はこの2点を実現するためにソフト/サービス部門でやってきた。今後もこれを続けることが、私のポリシーだ。私の役割はブルドーザーとしてこの2点を広げていくこと」と語り、秋草氏の経営を継承し、収益を回復させていくことを表明した。

 日本だけでなく米国や欧州などでも苦戦が続く富士通だが、秋草氏は「富士通は世界で戦っていく立場。日本の会社の中で、世界で戦っているソフトウェア・サービス、プラットフォーム、通信関係の企業は当社しかないと思う」とし、「(富士通は)心配ない」と同社の潜在的な底力をアピールした。

2期連続の連結最終赤字、「利益体質に戻りつつある」

 富士通が発表した2003年3月期連結決算は、最終損益が1220億円の赤字となった。2期連続の最終赤字。ソフトウェア・サービス事業の拡大などで経常損益は黒字転換したが、リストラ費用が直撃した形だ。

 売上高は4兆6175億円で7.8%の減少。営業損益は1004億円の黒字、経常損益も123億円で前期の赤字から黒字転換した。エンタープライズ向けの事業は軒並み売り上げが減少した。ソリューション/システム・インテグレータ(SI)事業の売り上げは9405億円で0.2%増だったが、インフラサービス事業は5.4%減で1兆852億円になった。富士通 代表取締役副社長の高谷卓氏は、「医療や電子政府関連、企業のアウトソーシングビジネスは堅調だったが、通信キャリアの投資抑制、金融の設備投資が一巡した」と説明した。

 サーバ関連の売り上げは、3828億円で26.5%減と大きく減少した。金融向け大型サーバの受注が減少したことが響いた。モバイル/IPネットワークはNTTドコモの第3世代携帯電話関係の投資が一巡したことから、21.6%減の1897億円となった。最も減少幅が大きかったのは、通信会社などで利用する伝送システムの分野。通信キャリアが光伝送システムなどへの投資を大きく減らしたために、42.6%減の2226億円となった。高谷氏は「通信市場は市場崩壊が続いている」と説明した。

 売り上げは減少したが、営業利益率は向上した事業が多かった。ソリューション/SI事業の「ソフトウェア・サービス」の営業損益は、前年から186億円増加して1765億円となった。営業利益率は1ポイントアップして、8.4%。サーバなどの情報システムや通信機器の「プラットフォーム」分野の営業損益も前期の赤字から9億円の黒字になった。営業利益率は0.1%だった。特に直近の第4四半期(2003年1月-3月)は、ソフトウェア・サービスの営業利益率が15.2%、プラットフォームが8%と好調。高谷氏は「第4四半期は予定通り。きちんとした利益体質に戻りつつある」と述べた。

 しかし、2004年3月期の第1四半期(4月-6月)は、イラク戦争や新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響で「見通しがつかない」(高谷氏)。第1四半期は売上高が前年同期を維持するが、営業損益は350億円の赤字を見込んでいる。高谷氏は「第2四半期からゆるやかに回復する」と述べた。2004年3月期の通期予想は、売上高が4%増の4兆8000億円、営業損益が49%増の1500億円、経常損益が4.8倍の600億円となって、最終損益は300億円の黒字になると予想している。

(編集局 大内隆良/垣内郁栄)

[関連リンク]
富士通の発表資料(役員人事)
富士通の発表資料(決算発表)

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