シスコがIPテレフォニーベンダに変貌する日

2003/6/4

シスコシステムズの代表取締役社長 黒澤保樹氏。「日本の国際競争力を向上させるにはITが不可欠」と述べた

 シスコシステムズの代表取締役社長 黒澤保樹氏は同社が「アドバンスト・テクノロジー」と位置づけるITテレフォニーなど6分野について、「3年後には、6分野の製品は(シスコ内で)ルータ、スイッチと同じくらいのレベルになる」と述べ、現在主力のルータ、スイッチに並ぶ製品分野になるとの考えを示した。

 同社ではIPテレフォニー、セキュリティ、オプティカル、ストレージネットワーク、ワイヤレス、コンシューマを、主力のルータ、スイッチに対して、アドバンスト・テクノロジーと位置づけている。コンシューマ分野は3月に買収を発表したリンクシスが展開しているワイヤレスLAN製品が中心。

 シスコの執行役員 マーケティング担当 山中理惠氏によると、現在シスコの研究開発費は40%がこの6分野に当てられ、売り上げベースでは18%が6分野で構成される。今後3年でこの比率をルータ、スイッチと同じ50%程度まで引き上げることを目指す。

 アドバンスト・テクノロジーの国内展開は企業ニーズに合ったソリューションを構築し、売り込む。50人以上のエンジニアが常駐する検証施設「AVVIDソリューションセンター」を東京・新宿に開設。IPテレフォニーのソリューションを構築する際に、パートナー企業の製品とシスコ製品との相互運用性を検証し、ソリューションの品質向上につなげる。また、世界的な広告キャンペーンを開始。国内でも1億円以上の広告費を投入するという。山中氏は「IPテレフォニーは既存のPBX電話のリプレースではない」として、「独自のアプリケーションやソリューションの展開を積極的に行う」と述べた。

シスコの無線IP電話機「CP-7920」(右下)

 また、シスコは企業内のワイヤレスLANで利用できる無線IP電話機「CP-7920」を7月に発売すると発表した。企業内でシスコのIP電話を使っている企業は、ワイヤレスLANのアクセスポイントを設置すれば、簡単に導入できる。機能は同社の卓上用IP電話機と同等だという。

 CP-7920は社内の内線電話として利用。一般の内線電話と同様に外線通話もできる。形状は一般的な携帯電話と同じ。ワイヤレスLANが整備されていれば、持ったまま社内の会議室などに移動し、通話できる。シスコのIP電話ソフト「Cisco CallManager」と連動して使う。

 利用するワイヤレスLAN規格はIEEE802.11b。802.1x/EAPベースの認証方式を採用している。価格は1台当たり8万5000円と高額。企業の内線用には、すでに構内PHSが普及しているが、シスコでは「IPネットワーク上で動作するアプリケーションを提供して差別化する」としている。

(垣内郁栄)

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シスコシステムズ

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