各社が競うストレージ仮想化技術、IBMはハードで実現

2003/6/5

 日本IBMはSAN(Storage Area Network)環境でストレージを仮想化し、管理の一元化を実現する「IBM TotalStorage SAN ボリューム・コントローラー」(SVC)を7月25日に出荷すると発表した。IBMによると、ストレージ関連のコストは初期導入費が20%程度、運用管理費が80%を占める。ストレージを仮想化し、管理することで運用管理費を大きく下げることができるという。

 SVCは、Linuxを搭載した2台の「IBM eServer xSeries」をクラスタ構成にしたコントローラで、仮想化ソフトを搭載する。SANのネットワーク内に配置。SVCを使うとSANの複数の物理的なストレージを、1つの論理的なストレージにまとめることができる。つまり実際には10台のストレージディスクを使っていても、SVCを導入することで、サーバから見た場合、1つのボリュームとして認識する。出荷時に対応するストレージディスクはIBMの「エンタープライズ・ストレージ・サーバー」と「FAStT ストレージ・サーバー」だが、年内に他社のストレージ製品もサポートする予定。

 SANに異なるベンダのストレージ製品が混在すると、製品ごとに管理が必要でコストがかかる。しかし、仮想化することで、ストレージごとの運用管理が不要になる。また、仮想化でディスクの使用率が平準化され、一部の高性能なディスクだけが集中して利用されるようなケースをなくせる。結果的にストレージのトータルでの利用効率を向上させることができるという。

日本IBMのクロス・ソリューション事業部 戦略ストレージ・ソリューション・グループの専任ソリューション・スペシャリスト 佐野正和氏

 SVCは2Tbytesの論理ボリュームを最大1024個サポートする。つまり、2Pbytesまでのディスクを管理可能となっている。2台のxSeriesで1セットになっていて、最大で2セットまでの拡張に対応する。2セットでも1つの仮想ストレージとして利用可能。日本IBMのクロス・ソリューション事業部 戦略ストレージ・ソリューション・グループの専任ソリューション・スペシャリスト 佐野正和氏は、「他社のソフトを使ったストレージ仮想化技術では複数のコントローラを組み合わせた仮想化は不可能」と述べ、他社との違いを強調。「ソフトを使った仮想化ではマルチベンダ環境での相互運用性の保証が不十分だ」と指摘した。

 SVCには、複数のディスク間でファイルを高速コピーする「FlashCopy」機能もある。本番用には高可用性を持つディスクを利用し、バックアップ用には低コストなディスクを使うなど使い分けができる。コピーは1秒〜2秒で終了し、管理者はすぐに利用可能。ほかのSVCのボリュームに対してもコピーできる。

 SVCのサポートOSは、AIX、Windows 2000、Linux、Solaris、hp-ux。価格は1044万円から。IBMは、SAN ボリューム・コントローラーとSANファイバ・チャネルスイッチ、FAStT ストレージ・サーバーを搭載した「SANインテグレーション・サーバー」も7月25日に出荷開始する。仮想化ストレージ構築に必要な機能を一体型で提供する製品。価格は2400万円から。

 IBMは年内にも「SANファイル・システム」と呼ばれる新技術を使って、UNIXやWindowsなど異なるファイル・システムを含むストレージを仮想化する別の製品を発表する予定。ストレージ管理では仮想化技術が花盛りで、各社がソリューションを提案している。実際の運用管理を考えると、どのレベルでストレージを仮想するかがポイントになるだろう。

(垣内郁栄)

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