MS新社長はパートナー戦略に活路

2003/6/26

 マイクロソフトは、「Windows Server 2003」のパッケージ製品を発売したと発表した。同時に11のハードベンダがWindows Server 2003を搭載したサーバを近く発売すると発表し、Windows Server 2003を中心としたパートナー戦略が順調なことを強調した。7月1日にマイクロソフト日本法人の代表取締役社長に就任予定の米マイクロソフト バイスプレジデント 日本担当 マイケル・ローディング(Michael Rawding)氏は、「今日のメッセージは業界全体が(Windows Server 2003)に準備万端ということだ」と述べた。

7月1日にマイクロソフト日本法人の代表取締役社長に就任するマイケル・ローディング氏

 ローディング氏は、Windows Server 2003を「日本のITの課題に対する解だ」と紹介。ワールドワイドで100以上の顧客との共同開発や1万台以上の実稼働サーバでのテスト、100万を超えるベータ版の配布など「パートナー企業と連携し、3年前から品質の向上に努めてきた」と述べた。ベータ版の配布は国内でも12万以上になるという。

 日本IBM出身で5月に取締役 エンタープライズビジネス担当に就任した平井康文氏は、すでに本番稼働しているか、その準備に入っているWindows Server 2003の早期導入企業が、カブドットコム証券やJTB、NTTコミュニケーションズなど国内13社に達していることを明らかにした。

 その中で、平井氏は、Windows Server 2003上で稼働するビジネス・インテリジェンス(BI)ツールのSAP BWを導入した富士フイルムコンピューターシステムの事例を紹介。システム・インテグレートとハードを担当したNECの執行役員常務 小林一彦氏は、「NECはIPF(Itaniumプロセッサ・ファミリ)とWindows Server 2003を基幹システムの中核プラットフォームとして、開発、拡販に注力する」と述べて、パートナー重視を強調するマイクロソフトへの協力姿勢を示した。

 SAPジャパン 代表取締役社長の藤井清孝氏も、「本日のWindows Server 2003の発売を、SAP R/3のWindows Server 2003 64bit対応版の一般発売日にしたい。ほかのコンポーネントも順次、64bitに対応させていく。日本のサーバベンダもWindows Server 2003 64bit版でSAP R/3の認定作業を続けている」と述べて、マイクロソフトとの連携を強調した。平井氏は、「5月の着任以来、多くのCIOと直接会い、Windows Server 2003とマイクロソフトに対する期待を実感した。パートナーとの連携、協業を強化したい」と述べた。

 マイクロソフトも、ハードベンダ、アプリケーションベンダとのパートナーシップを強調した。マイクロソフトの取締役 眞柄泰利氏によると、6月中にWindows Server 2003を搭載したサーバを出荷するサーバベンダは11社で、75モデルが登場する。そのうち、10モデルがインテルの64bitプロセッサ Itanium 2を搭載したモデルになる。Windows 2000 Serverの発売時は、OSをプリインストールして出荷されるサーバは15モデルだったといい、パートナーとの協力が順調なことを示唆した。

 また、マイクロソフトによってWindows Server 2003で適切に動作することが確認され、「Certified for Windows Server 2003」に認定されたアプリケーションは、32社の40製品となった。Windows 2000 Serverの出荷時はマイクロソフトから認定されたアプリケーションは7製品だったといい、パートナーから強力な支援があることを印象付けた。マイクロソフトは販売パートナー各社の7000人にWindows Server 2003の販売トレーニングを実施。さらに9月までに8000人に対して新たにトレーニングを実施するという。

写真右からSAPジャパン 代表取締役社長の藤井清孝氏、NECの執行役員常務 小林一彦氏、ローディング氏、マイクロソフト 取締役 平井康文氏

 マイクロソフトはパートナー重視を強調することで、サーバベンダやソフトベンダ、販売パートナーの協力を得ようとするのが狙い。電子政府向けや企業向けで競合になるLinuxについて眞柄氏は、「マイクロソフトはWindows Server 2003の製品出荷に向けて、さまざまなパートナーと準備してきた。業界の理解を十分に得たと考えている」としたうえで、「Linuxはガバナンス(統治)を誰が持っているか理解できない。マイクロソフトはWindows Server 2003に関して、ガバナンスを業界に説明したうえで製品検証や顧客への提供、トレーニングをしてきた。そのこと自身が価値になる」と業界の協調体制に自信を見せた。

 Linuxについては、ローディング氏も「安いという話やセキュリティがよいという、“うわさ”があるが、調査などから全体のTCOは必ずしも安くないと認識している。セキュリティについてはLinuxに対する攻撃があったり、ぜい弱性の検証が行われていない」と指摘し、Windowsの優位性を強調した。

 阿多親市氏の突然の社長退任発表から約3週間。ローディング氏がマイクロソフトの今後の方針について説明を行うとも予想されたが、それは「別の機会」ということになった。Windows Server 2003を発売し、パートナー重視を鮮明にしたマイクロソフトがどの方向に進むのか。ローディング氏の“施政方針演説”が待たれる。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
マイクロソフトの発表資料

[関連記事]
「苦労は尽きない」、MSのサポート部隊が本音トーク (@ITNews)
今夏登場、MS OffceはXMLでどう変わる? (@ITNews)
CE .NETを3ドルにしたマイクロソフトの危機感 (@ITNews)
「オープンソースはソフト産業を壊滅させる」は正しいか (@ITNews)
開発者が最新Windows Server OSを6万円で入手する方法 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)