新Itanium 2はRISCから市場を奪還できるか

2003/7/2

インテル代表取締役共同社長 吉田和正氏

 7月1日に発表した64ビットCPU「Itanium 2」でインテルは、サンが牛耳るRISCチップ市場の奪還に乗り出す。NEC、HP、日立製作所、沖電気工業、IBM、富士通といったハードベンダも、自社のサーバを「Itanium 2」に対応させ、積極的なプロモーション活動を展開し始めた。これにより、Itaniumベースのハイエンド・サーバの機種数は昨年と比較して倍になる見込みである。インテル代表取締役共同社長 吉田和正氏は「2007年には、1つのCPU上に10億個のトランジスタが集積され、計算処理能力はペタFLOPSにまで到達するだろう。ムーアの法則は今後10年以上継続する」と、インテルの技術力の優位性を強調した。

 「Itanium 2」および同CPU搭載ハイエンド・サーバが狙うのは、データベース、ERP、ハイエンド・コンピューティング、ビジネス・インテリジェンス、セキュリティなど、膨大な処理能力を必要とするアプリケーション市場である。IDCジャパンの調査では2002年の国内サーバシェアは、RISCチップ系ではサンが55.4%でトップを独走している。

 インテル コーポレーション エンタープライズ・プラットフォーム事業本部 エンタープライズ・マーケティング&プランニング・ディレクタ アジェイ・マルフォトラ氏は、「Itanium 2」のロードマップを示し、2005年には、デュアル・コアよりも大きなキャッシュを実現する次世代の64ビットプロセッサを発表するとし、インテル・アーキテクチャによるサーバ市場の“寡占”を狙う意気込みをみせた。
 
 「Itanium 2」対応サーバは、OSにWindows Server 2003に加え、Linuxを搭載することも可能で、独自のOS、アプリケーションソフトを必要とするRISC系サーバと比較してもコスト面で優位性を持つ。サーバ市場に第2の64ビット時代が到来したといえるだろう。

■各ベンダが新Itanium 2搭載サーバ発表

 インテルが新Itanium 2を発表したことを受け、ハードベンダ各社も搭載サーバを相次いで発表した。特にインテルとItaniumを共同開発し、64ビットOSを持つ日本ヒューレット・パッカードはOEM先の国産ベンダとともに新サーバ発表の会見を開き、「企業情報システムに求められるソリューションを提供するのが、HP-UXとItanium 2の組み合わせだ」(日本HP 代表取締役社長兼COO 樋口泰行氏)とアピールした。

Itanium 2を最大64CPU搭載する「HP Integrity サーバ Superdome」

 HPは、Itanium 2を搭載するサーバを発売する沖電気、日立製作所、NEC、三菱電機の4社と共同で新サーバを発表した。沖と三菱はHPからのOEM製品を販売。日立、NECの一部製品もHPのOEM製品だ。Itanium 2はHP-UX、Windows Server 2003、Linuxが稼働するが、HPは自社のHP-UXをアピール。HPの樋口氏は「HP-UXそのものが強力なUNIXとして進化する。HPを含めこの5社がHP-UXとItaniumアーキテクチャをこれからも推進する」と述べた。

 日本HPの執行役員 エンタープライズ ストレージ&サーバ統括本部の統括本部長 石積尚幸氏は、「HP-UX11iは初代Itaniumを正式にサポートした唯一のOS」だとして、「HP-UXとItanium 2がこれからの基幹システムの最高の組み合わせだ」と述べた。HP-UXとItanium 2のプラットフォームはすでに700社のソフトベンダがサポートを表明。2003年度末までに1000社がHP-UXとItanium 2のプラットフォームをサポートする見通しだという。

 HPは新Itanium 2に合わせ発表したサーバの新シリーズの「HP Integrity サーバ」。Itanium 2を最大2CPU搭載できる「HP Integrity サーバ rx2600」と最大4CPUの「HP Integrity サーバ rx5670」、そして最大64CPUを搭載できるハイエンド・モデル「HP Integrity サーバ Superdome」を7月下旬から順次出荷する。価格はrx2600が99万8000円から、rx5670は305万1000円から、Superdomeは4135万円からとなっている。秋には8CPUや16CPUのサーバも出荷する予定。NECや日立もItanium 2を2CPU搭載するサーバから最大64CPU搭載のハイエンドサーバまでフルラインで発表した。

 各社とも主要サーバをRISCプロセッサからItanium 2に乗り換えさせる考え。HPの石積氏は、「Itanium 2を搭載したサーバは早ければ2005年中にもRISCベースのサーバを(台数で)超えるだろう」と予測した。

(編集局 谷古宇浩司、垣内郁栄)

[関連リンク]
インテル
HPなど5社の共同発表資料

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