“ラックの仮想化”が業界の注目を集める理由

2003/7/8

米Inkra Networksの「Inkra 4000」

 コンピュータリソースからストレージへと広がるバーチャリゼーションの流れが、アプリケーションインフラの分野まで及び始めたようだ。つまり、物理的なラックを仮想化し、バーチャルなラックを構築。利用に応じて複数のアプリケーションを提供するという考え方だ。米Inkra Networksの製品がその仮想化を実現した。

 データセンターや企業システムでは、ファイアウォールやIDS、VPNなどのサービスを複数のアプライアンスを使って提供していることが多い。しかし、アプライアンスが多くなると管理が大変。アプライアンスごとに管理ソフトを使う必要があり、コスト増になる。Inkraの「Inkra 4000」と「Inkra 1500シリーズ」は1台の筐体で複数のアプライアンスのサービスを提供する製品。つまり、物理的なアプライアンスを仮想化し、1つの筐体に納めて、必要な時に必要なアプライアンスのサービスだけを提供できるようにするのだ。Inkra 4000は1000のラックを仮想化可能。Inkra 1500シリーズは25のラックを仮想化する。仮想化したラックは利用するユーザーに合わせて提供するサービス構成を変更できる。

 米Inkraのバイスプレジデント セールス&ビジネス デベロップメントのマイケル・リバース(Michael D. Rivers)氏は、「既存のデータセンターや企業システムはコストはかかるが、稼働率が低い。ラックを仮想化することで複雑性を解消し、コスト削減につなげることができる。仮想化は歴史的な流れだ」と説明した。

 Inkra製品は各アプライアンスの機能をソフトモジュールの「Virtual Service Module」(VSM)で提供する。VSMにはルータやファイアウォール、VPN、ロードバランサ、SSLアクセレータ、IDP(Intrusion Detection and Prevention:不正侵入防御)など8つのソフトモジュールがあり、ユーザーは利用したいサービスを自由に組み合わせて利用できる。1つの仮想ラックには最大16のモジュールを収納可能だ。Inkraによると、モジュールは自社開発、またはオープンソースソフトを活用し開発している。
 

米Inkraのバイスプレジデント セールス&ビジネス デベロップメントのマイケル・リバース氏

 VSMは筐体ごとのライセンス体系。1度購入すれば、複数の仮想ラックでサービスを利用しても価格は同じで、コストを抑えることができる。ラックの仮想化は管理コストの低減にもつながる。Inkraでは「Center Point」という管理ソフトを利用する。各サービスの設定から、製品全体のシステム設定、変更などが可能。複数サービスを一括管理できる。また、企業システムにある既存のアプライアンスなども管理可能だ。

 Inkraのラック仮想化技術でキーポイントとなるのは、「HardWall」という仮想ラックをそれぞれ独立させる技術。1つの筐体の中で複数の仮想ラックを区切る技術で、1つの仮想ラックで起こった障害が別の仮想ラックに影響を与えないようブロックする。仮想ラックが不正侵入などを受けても別の仮想ラックは安全を保つことができる。InkraはHardWallの技術を特許申請中。Inkraのラック仮想化技術にはIBMなどが興味を持ち、オンデマンド構想のインフラとして採用されているという。リバース氏によると、「ほかの大手ベンダとも話を進めている」という。

 Inkra製品は国内ではNECシステム建設が販売、サポートする。Inkra 4000はデータセンターや大規模企業向きで、価格は3500万円から。Inkra 1500シリーズは小規模データセンターや中規模企業向きで、1500万円からとなっている。

(垣内郁栄)

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