アジャイルプロセス議論の最前線

2003/7/10

左から、永和システムマネジメント取締役 平鍋健児氏、エクイティ・リサーチ取締役 大槻繁氏、テクノロジックアート代表取締役 長瀬嘉秀氏、アッズーリ取締役 濱勝巳氏、豆蔵取締役会長 羽生田栄一氏

 アジャイルプロセスの国内普及活動を行う「アジャイルプロセス協議会」(会長 豆蔵代表取締役会長 羽生田栄一氏)は7月9日、設立記念セミナーを開催した。講演は全部で4つ。同協議会の会長、副会長を務めるアジャイル開発の著名人がそれぞれの特徴を生かした発表を行った。

 豆蔵取締役会長 羽生田栄一氏は、「パターンランゲージとアジャイル開発の不思議な関係 −スローなアジャイルプロセスを目指して−」と題する講演を展開した。現行のアジャイルプロセスの弱点を補完し、パターンランゲージを積極的に導入することで、ソフトウェア開発がより効率的に行えることを訴えた。「アジャイルは、要件獲得や(顧客との)合意形成プロセスを甘く見ている側面がある」と羽生田氏は批判、パターンランゲージの概念を取り入れることで、現行のアジャイルプロセスを顧客参加型の自己組織化プロセス(要求獲得=合意形成=設計=施行をスムーズに展開する)へ改善すべきだとの提言を行った。また、アジャイルプロセスは必ずしも「fast」ではなく、むしろ「slow」であるべきであるとの考え方を示した。

 テクノロジックアート代表取締役 長瀬嘉秀氏は、「ASDEアジャイルソフトウェア開発エコシステムの概要」とのテーマで、ジム・ハイスミズ(Jim Highsmith)の新しい著書の内容を基に、アジャイル開発の最新状況を概観した。永和システムマネジメント取締役 平鍋健児氏は1月25日〜28日に米国で行われたAgile Development Conference in Salt Lake Cityの参加報告、エクイティ・リサーチ取締役 大槻繁氏は「アジャイル開発へのパラダイムシフト −伝統的領域における障壁は何か−」でシステム開発プロジェクトの実態を考察した後、アジャイル開発の有効性を説いた。

 日本全国から集まったセミナー参加者達は、現在のソフトウェア開発プロセスが抱える問題と解決策のヒントを講演から探し出そうと熱心に聞き入っている様子だった。
 
 ただし、アジャイルプロセスに関する最先端の話題を取り扱っているためか、講演内容はやや抽象論に陥りがちな傾向が若干見られた。今後、同協議会が推進するアジャイルプロセスの普及を促進するうえでの課題は、より実践レベルでの議論を深めていくことかもしれない。

(編集局 谷古宇浩司)

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アジャイルプロセス推進協議会

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