米SCO社長がIBM訴訟を激白、「死ぬまで戦い抜く」

2003/7/10

 自社がライセンスを持つUNIXのコードが、ライセンス先のIBMからLinuxに流用されたとして、IBMを相手取って訴訟を起こしている米SCOの社長兼CEO ダール C. マクブライド(Darl C. McBride)氏は、日本のパートナーに対する説明会で、「(UNIXコードが流用された)Linuxのおかげで大変な被害を被っている。被害に対する賠償として(IBMに対する訴訟など)主張をしている」と述べ、UNIXコードのライセンスを最大限に生かす考えを示した。マクブライド氏は、「死ぬまで戦い抜くつもりだ」と強調した。

米SCOの社長兼CEO ダール C. マクブライド氏。過去に在籍した米ノベルで日本法人立ち上げにかかわり、日本語が堪能

 マクブライド氏によると、IBMは、SCOのライセンスを受けたUNIXのコードが含まれる「AIX」から派生したテクノロジを、SCOとの契約に違反してLinuxコミュニティに提供。結果として、SCOが知的所有権を持つUNIXの数百のコードがLinuxのカーネル2.4以降に含まれることになったという。

 IBMがLinuxコミュニティに提供したとSCOが主張しているのは、NUMA(Non-Uniform Memory Access、Non-Uniform Memory Architecture)やRCU(Rea-Copy Update)、JFS(Journaled File System)、SMP(Symmetric MultiProcessor)などの技術。SCOの調査ではLinuxのカーネル2.2には、SCOが知的所有権を持つUNIXのコードは含まれないが、2.4や2.5では数百コードが含まれているという。マクブライド氏は「IBMがLinuxコミュニティに提供したコードは、Linuxでハイエンドのスケーラビリティを実現できるようにする重要なコードばかり」と説明。「カーネル2.2は問題視していない。しかし、2.4以降は疑いの余地なくSCOの著作権とUNIX System Vの契約上の権利を侵害している」という。

 SCOは調査の結果、複数のベンダがUNIXのコードをLinuxに提供したと判断。今年に入ってから大手ベンダと協議した。サン・マイクロシステムズとマイクロソフトとは、解決した。ヒューレット・パッカードとも近く解決する方向にあるという。しかし、IBMとは決裂し、提訴となった。

 一方で、マクブライド氏は提訴という解決法に戸惑いもあったようだ。「提訴は自分のキャリアにそぐわないと考えた。訴訟に対する考え方は日本人と同じ。訴訟はやむをえない最後の手段だ」と述べた。だが、LinuxコミュニティによるSCOへの攻撃は激烈を極めている。SCOのWebサイトへのDoS攻撃やチャットでの悪口はもちろん、マクブライド氏個人の住所をWebサイトで公開されたり、電話をかけてきて“決闘”を申し込まれることもあったという。

 マクブライド氏は、「Linuxのムーブメントを止めてほしくないと、Linuxコミュニティが怒るのは分かる。コミュニティにとっては試練のときだ」と語り、「Linuxはこのような問題でより強いものになるだろう。きちんと解決することは将来の問題を防止することになる」と述べて、自らの主張の正当性を強調した。マクブライド氏は、中断している自社のLinuxビジネスについても「再開の可能性はある」と述べ、問題解決への期待を述べた。

 では、SCOはこの問題に対してどのような解決策を想定しているのか。1つは、UNIXから提供されたとするコードはそのままLinuxにカーネルに残し、ベンダなどがSCOに損害賠償するという策だ。もう1つは、UNIXコードをカーネルから除外し、カーネル2.2当時のLinuxにすること。しかし、マクブライド氏は「それは望まない。Linuxはエンタープライズにいくべきと考えている」と述べ、損害賠償の支払いを求める考えを示した。

 実際、SCOのビジネスはRedHatなどの躍進で、かなりの苦境に陥っているようだ。マクブライド氏は、「Linuxの攻勢を受けて会社として低迷し、危ういところまできてしまった。ここでとりあえずは被害についてはUNIXの知的所有権を武器に賠償してほしいという切実なる願いがある」と述べた。マクブライド氏は「UNIXに関するわれわれの知的所有権は数10億ドルの価値がある」と強調した。

 今回の訴訟騒ぎでSCOがLinuxコミュニティや、Linuxを推進するベンダを敵に回したのは確実だ。マクブライド氏は、「次のステップとしてSCOがどうするのか。全面戦争に突入すると指摘する人もいるが、われわれとしては業界の皆さんといい将来へ向けて協同していきたい」と述べたが、SCOにとっては、進むも戻るも“いばらの道”といえるのではないだろうか。

(垣内郁栄)

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