AMDプロセッサで作る世界最高スパコンの実力

2003/7/16

 AMDが4月に発表した64ビットプロセッサ「AMD Opteron プロセッサ」を1万個使ったスーパーコンピュータの開発が米国で進んでいる。2004年にも納入される予定で、現在スパコンで世界最高性能を誇っている日本の地球シミュレータ(開発はNEC)の性能を追い抜く可能性もある。

クレイのバイスプレジデント ブライアン・コブレンツ氏

 スパコンは、米エネルギー省のサンディア国立研究所の依頼を受けて、米クレイが開発している。クレイのバイスプレジデント ブライアン・コブレンツ(Brian Koblenz)氏によると、コード名で「Red Storm」と呼ばれるこのスパコンでは、核兵器の開発シミュレーションや、仮想実験を行う予定。核兵器開発を、危険が伴う地下実験からコンピュータ上に移すプログラムの中心的なシステムとして、Red Stormを利用する。このプログラムは「ASCI」(Advanced Simulation and Computing[ASC, formerly Accelerated Strategic Computing Initiative])と呼ばれている。

 ASCIプログラムでは過去に、インテルのPentiumやIBMのPowerPC、ヒューレット・パッカードのAlphaを使ったスパコンが利用されてきた。クレイが開発するRed StormはAMD Opteronを1万368個搭載。ピーク時のパフォーマンスで40T Flopsを実現する見込み。108のコンピュータノードキャビネットと、16のサービス、I/Oキャビネット、16のスイッチキャビネットで構成する。設置には300平方メートルの広さが必要。10Tバイトのメモリを搭載し、OSはコンピュータ・ノード用にLWK (Catamount) を利用、サービス、I/O用にはLinuxを使う。

 スパコンのベンチマークを掲載しているWebサイト「TOP500」によると、2003年6月現在のトップは、NECが開発した地球シミュレータで、ピーク時のパフォーマンスは40T Flops。コブレンツ氏は、「地球シミュレータはとてもよいマシンだ。(スパコンが担当する)問題の内容によっては、Red Stormのほうがよりよいパフォーマンスを記録するだろう。しかし、別の問題では地球シミュレータが上回るかもしれない」と述べた。Red Stormは、最大3万個までプロセッサを搭載できる拡張性があり、稼働状況によっては世界最高を更新することになりそうだ。

 コブレンツ氏は、Itanium 2やAlphaなどプロセッサがある中でAMD Opteronを選択した理由として、ハイパートランスポートなど高性能なI/Oを挙げた。AMDとしては高性能スパコンに採用されたことをアピールし、エンタープライズ分野でプロセッサを普及させるきっかけにしたいところだ。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
日本AMD
クレイ・ジャパン・インク
サンディア国立研究所 ASCIプログラム

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