BEAの新戦略製品は「デベロッパーの給与を上げる」

2003/7/17

 7月16日に日本BEAシステムズがリリースを発表した「WebLogic Platform 8.1」は、企業アプリケーションで必要とされる開発、統合、運用、管理のすべての機能を1つのプラットフォームとして提供する「アプリケーション・プラットフォーム・スイート」という新しいカテゴリに分類される最初の製品となる。「BEAシステムズとほかのアプリーションサーバベンダとの最大の違いは、われわれがイノベータだということだ」。米BEAシステムズの創設者で会長兼CEOのアルフレッド・チュアング(Alfred Chuang)氏は、BEA WebLogic Platform 8.1の記者発表会場で、新しいカテゴリをリードする同社の立場を強調した。

米BEAシステムズの会長兼CEO アルフレッド・チュアング氏

 WebLogic Platformには、アプリケーションサーバ「BEA WebLogic Server 8.1」を中核に、開発環境「BEA WebLogic Workshop 8.1」、EAI製品「BEA WebLogic Integration 8.1」、エンタープライズポータル製品「BEA WebLogic Portal 8.1」が含まれる。

 日本BEAシステムズが都内で開催しているイベント「BEA eWorld JAPAN 2003」には、チュアング氏をはじめとする米BEAシステムズのエグゼクティブが登場し、WebLogic Platform 8.1のワールドワイドでのリリースをアナウンスした。同社のテーマは「コンバージェンス」(収れん)であり、それは同社の製品が「アプリケーション開発とアプリケーション統合」や「オープンとレガシー」などの架け橋となることを意味する。

 チュアング氏は「いままで企業内のアプリケーション統合はシニアコンサルタントの仕事であり、業務アプリケーションを開発するデベロッパーはこの問題とは関係ないところで開発を行っていた。しかしWebLogic Platform 8.1を導入すれば、デベロッパーもアプリケーション統合のエキスパートになれる」とした。「これでデベロッパー自身の給与が上がっても、礼はいらない。それはBEAシステムズの製品を支持してくれたことへの当然の見返りだ」(チュアング氏)。

 こうした、統合や開発を「コンバージェンス」するというWebLogic Platform 8.1の特徴がもっともはっきりしたのは、開発環境の「BEA WebLogic Workshhop 8.1」のデモンストレーションが行われたときだ。WebLogic Workshop 8.1は、WebLogic Platform 8.1に含まれるアダプタを利用してSAP R/3やシーベル、メインフレームなどと接続したコンポーネントを、画面上でアイコンとして並べていくことでワークフローを構築でき、ここからJSPのページフローを生成できる。これでビジネスプロセスに基づいた企業内のアプリケーション統合を実現し、さらにそれをポータルデザイナー機能で企業内ポータルに発展させ、またWebサービス機能で外部との連携を実現する、といったことが1つの開発環境内で完結する。既存の企業アプリケーションの統合と、新しいアプリケーションの開発がシームレスに行えることを示した。「ポータルやEAIなどの機能を寄せ集めたのではなく、全体が1つの開発方法論、1つの開発手法、1つのフレームワークでできている、完全に統合された開発環境」(日本BEAシステムズ チーフテクニカル ストラテジスト 伊藤敬氏)。

 アプリケーションサーバは、eコマースサイトなどインターネットアプリケーションの基盤として導入が始まり、現在はそこから発展して企業内アプリケーションの基盤としての地位をERPやEAIアプリケーションなどと争っている。「イノベーター」たる同社は、こうした市場の変化に先んじて製品戦略を展開。アプリケーションサーバ単体の「WebLogic Server」よりも、企業内アプリケーション基盤となるスイート製品「WebLogic Platform」へと注力する戦略に昨年から切り換えている。そして、本格的なスイート製品として統合されたのは実質的には今バージョンからだ。同社が本当にイノベータとして成功できるかどうかは、この製品が市場にどう評価されるかにかかっているといえるだろう。

(編集局 新野淳一)

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日本BEAシステムズの発表資料

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