eBayの巨大SANを構築した日立データシステムズ

2003/7/23

日立データシステムズの上席副社長 グローバル戦略担当 クリスティーン ウォリス氏

 日立製作所のストレージ関連の子会社、日立データシステムズ(HDS)の上席副社長 グローバル戦略担当 クリスティーン ウォリス(Christine Wallis)氏は、7月22日〜23日開催の「日立ITコンベンション2003」で講演し、「特定の目的に合ったストレージの利用が今後広がる」との考えを示した。データ内容に合った機能を持つストレージを利用するのがポイントで、ウォリス氏は「いつも同じスタイルでデータを保存することは意味がない。データの価値は劇的に変わる」と強調した。

 ウォリス氏はストレージのリソースを仮想化し、必要なときに必要な分だけ利用するユーティリティコンピューティングについても説明。ストレージのデータ配分を平均化し、管理を効率化するために、「インテリジェンスをネットワークのスイッチに持たせることがよいのではないかと考えている」と述べた。

 ウォリス氏はHDSの導入実績も紹介した。事例として紹介したのは米金融機関のバンクオブアメリカと、インターネットオークションのeBay。バンクオブアメリカは、オンラインでの取引が増加し、月ごとのインターネット取引は2500万トランザクションまで増えていた。結果として、2003年までの3年間でネットワークのトラフィックは2倍に増加。さらに必要なデータ容量は3年で3倍になったという。

 HDSはこれら急増するトランザクションと、データ容量の圧迫を解消するためにSANを構築した。特に災害時のディザスタリカバリを考慮し、非同期のマルチサイト・カスケード接続を導入した。バンクオブアメリカはこれまで、自社のデータセンターと近隣のデータセンターをカスケード接続し、データを同期させていた。しかし、米政府は現在、金融機関に140マイル以上離れた場所でデータを保存するよう求めている。そのため、HDSは、最大で30マイルしか距離を話すことができない旧来の方法ではなく、140マイル以上離れた場所でデータを保存できる非同期の方法を選択したという。

 eBayは、2001年1月にデータバックアップシステムの故障で11時間もサービスが停止したトラブルをきっかけに、HDSのストレージを導入した。HDSはサン・マイクロシステムズ、ブロケード コミュニケーションズ システムズと協力し、2300台以上のブロケードのスイッチでSANを構築。374テラバイトのデータを管理している。ウォリス氏によると、eBayは直近の2四半期で99.93%の可用性を実現しているという。

 ウォリス氏はストレージの今後のトレンドについて、「統合、集約が進む」と指摘。「データのライフサイクルを考えて管理する必要がある」と述べた。

(垣内郁栄)

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