プロセッサ開発の主戦場はPCから情報家電に、TI

2003/7/30

 テキサス・インスツルメンツ(TI)の会長、社長兼CEOのトーマス・エンジバス(Thomas J.Engibous)氏は、今後のプロセッサ開発について「これまではTIの最先端技術はPC市場向けに開発され、その後にほかの製品分野に応用されてきた。しかし、現在はワイヤレス製品が技術革新のけん引役なっている」と述べ、プロセッサ開発の主戦場が情報家電に移っているとの考えを示した。

テキサス・インスツルメンツの会長、社長兼CEOのトーマス・エンジバス氏。「TIの中でデジタル情報家電の比率が高くなっている。日本のベンダと積極的に協力したい」と述べた

 TIが現在、力を入れているのが、携帯電話などワイヤレス機器向けのデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)。DSPは、アプリケーションごとにプログラミングが可能なプロセッサで、特定用途向けのASICと異なり、さまざまなデバイスに搭載できるのが特徴。TIは携帯電話のほかに、ネットワーク機器やデジタル・オーディオ機器、映像処理、DVD機器、テレマティクスなど、多くの分野にDSPを提供している。「PCは過去に電子機器産業をけん引してきたが、今後はこれまでのような成長のけん引役とはならない。最前線に進み出ているのはモバイルやポータブル・マルチメディア、自動車、医療用などのアプリケーションを実現するシグナル・プロセッシングだ」というのがエンジバス氏の考えだ。

 TIが情報家電向けのDSPで推し進めているのが、プロセッサのワンチップ化だ。これまで複数のチップで提供してきたネットワーク機能やメモリ、電源管理、アプリケーションなどの機能を集約し、1つのチップで提供することを目指す。ワンチップにすることで、システム設計が簡単になったり、部材費の削減、低消費電力、デバイスの小型化などが実現できるという。ワンチップへの取り組みで進んでいるのが携帯電話。エンジバス氏によると、数年前の携帯電話には電源管理やメモリなどアプリケーション別に200個近い部品が必要だった。しかし、TIは現在、これらの機能を4個のチップとパワー・アンプに集積していて、さらにワンチップ化を目指している。

 エンジバス氏は、デジタル情報家電についても、「メイン・エンジンがカスタムLSIやASICから、機器設計に柔軟に対応できるシグナル・プロセッシングへの移行が進んでいる」と述べ、情報家電の分野で世界的なベンダが多い日本市場を特に重要視する考えを示した。日本TIは昨年2月、デジタル・コンシューマ・エレクトロニクス・ソリューション・カンパニー(DCES)を設立。DVDや映像処理、デジタル・オーディオ、カメラ搭載携帯電話などの分野で、国内ベンダとパートナーシップを組んで開発からマーケティングまで共同作業を行っている。

 NTTドコモの第3世代携帯電話「FOMA」で、NEC、富士通、パナソニック製の携帯電話には、TIのプロセッサが搭載されている。今後は、次世代のOMAPプロセッサを搭載することで、毎秒24〜30フレームのビデオをサポートできるようになるという。エンジバス氏は、「エレクトロニクスの成長は主に情報家電によってもたらされている。デジタル情報家電の心臓部は日本。今後5〜7年、TIは日本の動きによって左右されるだろう」と述べ、日本重視の姿勢を強調した。

(垣内郁栄)

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