MSが語る.NET開発、コツは「適材適所と柔軟連携」

2003/8/8

 マイクロソフトの開発者向けイベント「Microsoft Tech・Ed 2003 YOKOHAMA」で講演した米マイクロソフトのPlatform Strategy Group General Manager クリフ・リーブス(Cliff Reeves)氏は、「XML WebサービスがROIを最大化する」と述べ、サービス指向アーキテクチャへの移行の重要性を強調した。

米マイクロソフトのPlatform Strategy Group General Manager クリフ・リーブス氏。過去にロータス、IBMで副社長を務めた

 リーブス氏は「企業はこれまでのIT投資の結果、多くの資産を持っている。XML Webサービスを活用することで、これらをリンクさせ、パワーを発揮させることが重要だ」と指摘し、「業界標準のXML Webサービスをベースにすることでシステム開発がサービス指向になる」と述べた。

 リーブス氏はまた、マイクロソフトの.NET構想について「人やシステム、デバイス、情報を接続するソフトウェアと紹介」し、「マイクロソフトは標準化作業に当初から参加するWebサービスの実施者である」と強調した。

 リーブス氏は国内での.NETの事例を紹介した。紹介したのは、マイクロソフトのコンサルティング本部が手がけたNECの社内基幹業務システム「GAUSS」。GAUSSはWebアプリケーションを開発するシステムで、100人以上の業務SEと300人以上のデベロッパが参加し、10チームに分かれて分散拠点で開発している。それぞれのチームが開発したWebアプリケーションは東京・府中にあるデータセンターに集約され、ホスティング運用されているという。Visual Studio .NET 2003の早期適用を受けたシステムで、昨年8月に正式稼働し、これまで安定稼働している。

 GAUSSはVisual Studio .NET 2003やASP.NETをカスタマイズすることで、高開発生産性を実現しているというが、説明したマイクロソフトのコンサルティング本部 プリンシパルコンサルタントの赤間伸幸氏は、「高開発生産性はVisual Studio .NET 2003では当たり前」と言い切った。そのうえで「業務システム開発では“適材適所の開発手法の提供”と“さまざまなシステムとの柔軟な連携”が重要だ」と指摘し、解決法としてシンクライアントとリッチクライアントの両対応と、Webサービスを使ったシステム連携を挙げた。

 Webアプリケーションは、Webブラウザで利用することが多いが、GAUSSではリッチクライアントといえる「Microsoft Access」でもWebサービスを呼び出して、コアな機能を利用できるようにした。赤間氏は「端末数が少なく管理コストが低い場合や、リッチなユーザーインターフェイス、アドホックな開発が求められる場合には、適材適所でリッチクライアントを利用するのが適当だ」と説明した。システムをリッチクライアントに対応させたことで、高操作性のほかにプログラマでなくてもアプリケーション開発が可能になったり、スクラップ&ビルドがしやすいなど柔軟な開発手法を実現したという。

 GAUSSはWebサービスを活用したことで、ほかのシステムとの高い接続性も実現。世界各地にある開発拠点と自由に情報をやりとりできるようになり、マイクロソフト以外のプラットフォームともスムーズに接続できるようになったという。赤間氏はGAUSSについて、「柔軟性、接続性が高くなり、システムとしてつぶしが効くようになった」と評した。

 マイクロソフトにとって当面の課題は.NETの開発者を増やすことだろう。リーブス氏が示したデータによると、世界の開発者700万人のうち、250万人がVisual Studio .NETを利用しているという。リーブス氏は「2002年第2四半期は.NET開発者は全体の25%、Java開発者は30%だったが、2003年第2四半期に.NET開発者が37%、Java開発者が34%になり、初めて追い抜いた。業界標準に向けさまざまな努力をした結果だ」と述べた。

(垣内郁栄)

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