[IDF Fall 2003開催]
地味に確実に、主軸の強化に努めるインテル

2003/9/18

 インテルの開発者会議「Intel Developers Forum Fall 2003」(IDF)が米国カリフォルニア州サンノゼにて、9月16日〜18日までの会期で開催されている。同カンファレンスは、米国で2回、それ以外にも日本を含む世界中で開催され、同社の最新技術や戦略をアピールする場としての機能を果たしている。そのIDFにおいて、今回はどのような発表が行われたのだろうか。

キーワードはやはりConvergence

壇上で聴衆からの質問に答える米インテルCOOのポール・オッテリーニ氏

 IDF最初のキーノートスピーチで壇上に立ったインテルCOOのポール・オッテリーニ氏(Paul Otellini)がまずスライドで示したのは、「Convergence」というキーワードだ。この「Convergence」(統合)という単語、近年のIDFで毎回登場するばかりでなく、同社のエグゼクティブがほかのカンファレンスでスピーチの行う際にも頻繁に用いるものだ。

 7年前にアンディ・グローブ(Andy Grove)氏が社長を務めていた時代は、1億台のPCがネットワークに接続され、4年前には現CEOのクレイグ・バレット(Craig Barett)が1億台のPCならびに携帯機器がネットワークに接続されたと語った。そしていま、データ通信が可能な携帯電話の台数は、PCのそれを上回りつつある。コンパックからのStrongARM部門を買収して以降、XScaleなどの組み込み機器向けプロセッサや、周辺回路のシングルチップ化、ネットワーク・プロセッサへの傾注など、PC以外の分野のビルディングブロックへも、着実に足を伸ばしつつあるインテルのいわゆる全方位戦略をあらためて確認することができた。

モバイル、デスクトップ、エンタープライズ

 インテルは、本来のコアであるPC向けプロセッサのさらなる強化も進めている。すでにGHzプロセッサが当たり前になり、大きな変化がなくなったPC向けプロセッサにおいて、さまざまな付加機能の提供をすることで、さらなる利便性の向上を推進しようとしている。そのOver GHzプロセッサ時代に向けた技術として、「HT(Hyper-Threading Technology)」「CMT(Intel Centrino Mobile Technology)」「LT(LaGrande Technology)」「VT(Vanderpool Technology)」の4つを紹介、インテル関係者はそのすべてを合わせて「T's(ティーズ)」と呼ぶ。

 前者「HT」と「CMT」の2つはすでに製品に組み込まれているものだ。HTはさらに進化を進め、近々登場する予定のサーバ向けデュアルコア搭載プロセッサ「Tulsa(次世代Xeon)」「Montecito(次世代Itanium)」時代には、デュアルコアがHT動作を行うことで、1つのチップ内で最大4つの論理プロセッサが動作する形になる。

 新登場の「LT」は、アプリケーションにさらなるセキュリティ機能を持たせる技術である。例えばハッカーが、あるクライアントPCに悪意のプログラムを置いてバックドアを仕掛けて、キー入力やスクリーン情報のトラッキング、メモリダンプなどの情報を解析するような行為を行った場合、現状のPCでは簡単にデータを抜き取られてしまう。だがLTを搭載したPCならば、それらの行為を防止できるようになるという。ただしその要件としては、LT対応のOSが必要になるという。もう一方の「VT」はPCの可用性を高める技術で、クライアントPCやサーバなどにおいて、いわゆる「バーチャリゼーション」(仮想化)を実現するものになるという。

 プロセッサ自体の微細化技術も進めており、2003年現在は90nmプロセスがすでに商用ベースに乗っている。今後も2005年に65nm、2007年に45nmと順次微細化が進んでいくという。CPUのクロックがGHzベースに乗るまでにはいろいろ派手な展開が繰り返されたが、以後は地味に確実に、その主軸の強化に努めるインテルの姿がそこにある。

(鈴木淳也)

[関連リンク]
インテル

[関連記事]
インテル、エンタープライズ市場に全方位戦略 (@ITNews)
消費電力80%減のモバイル用無線LANチップ登場 (@ITNews)
日本の技術が握るバッテリ寿命の未来 (@ITNews)
プロセッサ開発の主戦場はPCから情報家電に、TI (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)