今から分かるICタグ〜課題克服は可能か

2003/9/23

 物流管理や店舗の検品、履歴管理などSCMの効率化に役立つと各業界やベンダ、システム・インテグレータが大きな期待をかけている無線ICタグ。しかし、本格展開にはまだ課題がある。ICタグが普及し、社会に根付くためのハードルとは何か。

メリット生かすにはUHF帯

日本ユニシスのソリューションビジネス統括部 ユビキタスソリューション部 グループリーダ 松谷博氏

 ICタグが国内で普及するための条件としてベンダなどが指摘しているのは、周波数帯の整理だ。現在、国内のICタグ実験では主に135kHz、13.56MHz、2.45GHzの周波数を使っている。問題はその通信距離。135kHzは1メートル、13.56MHzも1メートルで、2.45GHzは2メートル。ビルへの入室カードなどには利用できるが、工場などで散らばる多数のICタグを同時にスキャンするには難しい。短い距離でしか無線通信ができないなら、既存のバーコードと同じような使い方しかできず、ICタグのメリットを生かしきれないのだ。

 ICタグ関係者は、政府に対して800/900MHzのUHF帯の開放を求めている。UHF帯を使ったICタグは通信距離が最大7メートル前後と長く、流通や店舗内、工場など幅広い利用が可能とされている。欧米企業が中心となって進めているオートIDセンターでもUHF帯を中心に実証実験を行っている。日本ユニシスのソリューションビジネス統括部 ユビキタスソリューション部 グループリーダ 松谷博氏によると、ICタグの導入を予定している国内企業は実証実験を13.56MHzで行い、法的な条件が整った段階でUHF帯に切り替えることを予定しているケースもあるという。

 では、UHF帯がICタグで利用できるようになるのは、いつごろか。総務省の「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」は、今年8月に発表した中間報告の中で、2004年度中にもUHF帯が利用できるようになるという見通しを明らかにした。利用するのは、今年3月末までKDDIが携帯電話サービスで使っていた950MHz〜956MHzの周波数。情報通信審議会が技術検証などを進めて、2004年度中にも利用の許諾を答申する見込みとなっている。ICタグの実証実験が先行している流通やアパレルなどは実験用免許を取得して、UHF帯を使った実証実験を始めるケースもありそうだ。

好循環でコストは下がる

 ICタグのコスト問題もめどが付きそうだ。ICタグが商品の1つ1つに付属するようになるには、ICタグの1個当たりの価格が低下することが条件と考えられてきた。現在、ICタグの1つ当たりの価格は低価格な製品で100円程度。しかし、各ベンダが低価格製品の開発に力を入れていて、低価格化の流れは続きそうだ。東芝テックが11月にも発売するICタグでは1億個のロットでICタグが1個当たり25円になる。ICタグのコストが下がれば、導入が進み、さらにタグの大量製造でコストが下がるという好循環が期待できる。

 それでもICタグが日用品の1つ1つに付くようになるには時間がしばらくかかりそうだ。オートIDセンターが行ったアンケートによると、小売業ではパレットやケース単位でのICタグの貼り付けが先行し、商品単位でICタグが付けられるのは早くても2004年。商品の取り違いを防止する目的も兼ねて製薬などで導入が進みそうだ。商品単価が比較的高額な電気製品や洋服などでもICタグが商品単位で付くのは2005年、食品では2007年を予測している。

 一方で、心配が広がっているのがICタグのプライバシー問題だ。商品に取り付けられたICタグをスキャンすることで、購入者がいつどこで、その商品を購入したかが他人に分かってしまう危険がある。また、ICタグを通じてデータベースに蓄えられた購入履歴やクレジットカード情報などが、外部に流出する危険も指摘されている。米ウォールマートは米ジレットと今年7月に共同で行うことを予定していた実証実験を中止した。中止の理由は発表していないが、消費者団体などが購入履歴が外部に漏れる危険がある、と抗議したことが原因の1つといわれている。イタリアのベネトンも抗議を受け、洋服にICタグを付ける実験を中止したと指摘された。

 ベンダのエンジニアなどは無線通信の暗号化や商品購入時にICタグ内の情報を消去する技術などを使うことで、個人情報が外部に漏れることはない、としている。しかし、技術的には万全でも、不適切な運用を行うことでミスが起きる可能性はある。ICタグを効果的に利用するには、適正な運用ルールの策定が重要というのがICタグベンダやシステム・インテグレータの共通の認識。本格導入を前に、実証実験などを通じて消費者が安心して利用できるような厳格な運用ルールの策定が必須になるだろう。

(垣内郁栄)

今だから分かるICタグ
今から分かるICタグ〜基礎編
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今から分かるICタグ〜課題克服は可能か(本記事)

[関連リンク]
オートIDセンター
総務省の発表資料
日本ユニシス

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