SPARC、第3の革新が担うもの

2003/12/13

サン・マイクロシステムズ プロダクト・マーケティング本部 本部長 山本恭典氏

 サン・マイクロシステムズが声高に唱える「Throughput Computing(スループット・コンピューティング)」とは何か。さまざまな機会を通じて同社はこのコンセプトの解説を試みているが、いまだ存在感が薄い概念であることに変わりはないようだ。12月12日、同社は都内で記者会見を開催し、11月に米国で発表したAMDとの提携話をも絡めて、「スループット・コンピューティングに向けたプロセッサ戦略」と題する発表を行った。

 発表の骨子はこうだ。
 
 “従来型のアプリケーション”は1プロセス、1スレッドで動作する単純な構造だが、“Webサービス時代”といわれる昨今、ITによるさまざまなサービスは、複数のアプリケーションの混合による複数のプロセス、複数のスレッドが混在した複雑なシステムから提供されるようになる。問題は、パフォーマンスではなく、スループットである。ここでいうスループットとは、処理系の数×稼働率×パフォーマンスで算出される数値を指す。他方、CPUの処理速度はムーアの法則を持ち出すまでもなく、向上し続けているが、アプリケーションの速度が向上しないのはなぜか。メモリがボトルネックとなっているのだ。さて、これらの問題を一挙に解決するには、プロセッサを根本から見直さなくてはならない。そこで採用すべきは、従来のようなシングルスレッドではなくマルチスレッド技術である。そもそもスレッド技術に関して、サンはSolaris、Javaなどを通じて15年以上のチューニング技術の蓄積と実績を持つ。次世代のUltraSPARCこそが64ビットコンピューティングの本命のプラットフォームになる。

 サンがプロセッサにこだわりをみせる背景には、今後10年のITインフラの行く末を見据えたうえでの戦略が横たわっている。プロダクト・マーケティング本部 本部長 山本恭典氏は、1993年時点での、ある携帯電話会社の製品注文数が2003年では1000倍になったというような例をひき、
あるいは、同社製CPUの処理速度が10年前と比較して約1000倍になったと指摘する。つまり、現時点で10年先の市場を見据え、その市場のトップに君臨するための手段の1つに、ITプラットフォーム(特に64ビット環境の)市場でのイニシアティブ獲得を挙げているのである。

 同社が提唱する「スループット・コンピューティング」の概念は、乱暴にいえば、いまのコンピューティング技術と比較して1000倍の速さを実現する技術基盤をつくり上げる、ということを意味するのである。AMDとの提携もそういう戦略の一貫として語られる。「IA-32の正式な後継は実はAMDのOpteronなのである」(山本氏)という発言が象徴するように、同社は企業市場のクライアントおよびローエンドサーバ市場への再参入を、AMDと手を組むことで果たそうとしているのである。成功すれば、マイクロソフト帝国ならぬ、サン帝国の出現となるだろう。RISCからSMP(Symmetric MultiProcessor)、CMP(Chip Multiprocessing)へと変貌を遂げるSPARCが担うのは10年後のサンの未来である。

(編集局 谷古宇浩司)

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