日本のシステム開発が抱える構造問題

2003/12/25

 日本におけるシステム開発の危機が叫ばれて久しい。納期、品質、価格という開発の基本が守れず、また顧客が要求したものができない、思わぬトラブルが納品後に明らかになる、といった類の話は実に多い。こうした問題の背後にあるのは何だろうか。

マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン 代表取締役社長 山中義晴氏

 テストツールベンダであるマーキュリー・インタラクティブ・ジャパン 代表取締役社長 山中義晴氏は、それを日本のプロジェクトが抱える構造的な問題と指摘する。「これだけプロジェクトに問題が起きている。しかし、なぜ起きているのか。その原因分析がしっかりとなされてない」と語る。「SE個人は問題に気づいているが、原因分析した結果を開発プロセスの改善に生かそうと提案を持っていこうにも、どうやって行えばいいのか、それ自体がプロセス化されていない」

 山中氏はさらに、「日本では原因分析をしても結局犯人探しになる。つまり個人の責任にされ、それがエンジニアの(人事)評価にもつながってしまう」と手厳しい意見を述べる。本来は原因を分析し、その原因を特定できた場合、個人に責任を押し付けるのではなく、それを次の開発のプロセスにどう生かすのかに注力すべきである。が、日本では責任追及の場となり、そして個人や事業部、さらには外注先など、どこかしらに結果責任を負わせようとする。これでは真の原因分析にはならないし、次のシステム開発に生かせない。

 日本のシステム開発は、メインフレームやオフコン上での開発からクライアント/サーバでの開発、さらにはオープンシステム開発へと急激にシフトしてきた。山中氏はその点を指摘、「ダウンサイジング以降、(システム開発は)複雑化し、難しくなっているが、開発の体制が変わっていない。なおかつ開発コストも在来工法のため変わらない。本来は、開発手法も変えなければならない」と述べる。

 ここで山中氏がいう在来工法とは、「注文建築のようなもの」。汎用機時代と同じように、あの家を建ててほしいと注文を受けてから、実際に木を切り出して建築していく、そんなイメージだ。つまり、パッケージやオープンシステム開発のはずが、お客さまの要望を聞いたうえで、毎回スクラッチで最初から作り上げる。これではオープンシステム開発といっても開発費用は膨らむ。

 それでは、システム開発におけるテストについて山中氏はどのように見ているのだろうか。インタビューの途中、山中氏は日本のシステム開発の場に、トヨタ自動車など最先端の品質管理の工程を入れるべきだと何度も力説した。「日本には、テスト方法論がない。ツールを使えばいいわけではない。自動車メーカーの工程管理や品質管理をプロジェクトマネジメントに取り入れた方がいい」

 そしてテストをどれだけ行っても、「それを評価する仕組みがない」と山中氏は述べ、ここでも評価や組織といった問題に帰着するという見方をする。

 さらに指摘するのは、開発と同様の属人的なテスト方法だ。それを批判したうえで「標準化されていない。マニュアルはあっても古い。テストは大なり小なり、同じプロセスを踏まねばならない。それでなければ知識を共有できない。ノウハウの知識、チェックポイントとして何を共有できるのか、それが重要だ」と山中氏は語る。

 テストツールを導入して利用するに当たり、これを開発のプロセスに組み込んでいくのに時間がかかる。これは、ユーザーが新システムを導入するに当たって、新システムに拒否感を示したり、導入するに当たって新しいことを覚える大変さを理由に新システムを否定したがるのと同じことだ。「それさえ乗り切れば次のプロジェクトからはだいぶ楽になる」のだが、なかなかそうはならない。

 テストツールを導入する際、どこが購入するかによっても問題になることがあるという。それは、プロジェクト単位で購入するのか、それとも部署全体で購入するのかだ。「部署全体で購入した場合、どうしてもそのツールを常に使うようになる。しかし、エンジニアはそれを嫌がる」と語るのは、マーキュリーの技術部 ディレクター 小崎將弘氏だ。

 マーキュリーの主張は、システム開発の上流の設計段階からテストやユーザー側の受け入れテスト、運用管理までを含めて考えておくべきだというもの。だから同社はテストだけではなく、プロジェクト自体に目を向けることになる。さらに、「日本では開発とテスト、さらには顧客の受け入れテストさえ、SIerの同じ部隊がすべて行うことが多い。そんな国は日本以外ほどんどない」と山中氏は述べる。理想を述べればテストプロセスはSIerのテスト専門部隊が品質検査を行い、ユーザー側も受け入れテストを別の業者(専門会社)に依頼する。

 しかし、現実にすぐにエンドユーザー、SIerにこうしたことを求めるのは難しい。そこで山中氏は国のプロジェクトで推進する、またはそれを政府案件の調達条件にする、という提案をする。そうした関与がないと、民間だけでは厳しいかもしれないとの認識があるからだ。

 このようなマーキュリーの主張は、夢のままで終わるのだろうか。

(編集局 大内隆良)

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マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン

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