情シス部をリストラするだけのアウトソーシングは終わり

2003/12/25

 野村総合研究所(NRI)の営業開発部 上席コンサルタント 袖山欣大氏は、国内のITアウトソーシング事業について、「市場の伸び率は低め。今後はアプリケーション、ネットワークインフラ管理のアウトソーシングがけん引する」との見方を示した。日本IBM、NTTデータが主要プレーヤーとして市場を引っ張る一方で、NECや富士通などほかの大手ベンダのアウトソーシング戦略は「戦略が見えない」と指摘した。

野村総合研究所 営業開発部 上席コンサルタント 袖山欣大氏

 IDCジャパンによると、2003年の国内ITアウトソーシング市場は2兆8489億円の規模で成長率は前年比2.1%。2002年の成長率3.9%と比較して大きく低下した。ただ、国内ITサービス市場全体の成長率が0.1%であることを考えると「伸びている」と袖山氏は指摘。国内ITサービス市場全体の約50%をITアウトソーシング市場が占めていて、比率は今後さらに高まるとの見方を示した。今後はアプリケーションと、ネットワークインフラ管理のアウトソーシングが伸びるという。

 国内のITアウトソーシング市場を引っ張るのは日本IBMとNTTデータだ。コンピュータ・リソースの提供から、コンピュータの保守・運用、システム開発までを手がけるフルアウトソーシングの国内案件を見ると、「2001年まではIBMの独壇場、2002年からはNTTデータが目立つ存在」(袖山氏)となっている。IBM、NTTデータ以外のベンダは、「アウトソーシングを引き受けた後に苦労しているケースがある。ケースバイケースの対応が多く、企業としての戦略が見えない」という。日本ユニシスなど多くのコンサルタントを抱えて、上流も含めたアウトソーシングを提案するベンダもあるが、本業が苦境で、アウトソーシング事業に注力できないケースもある。その結果、IBMを除いて国内ベンダで上流も含めたフルアウトソーシングを実施しているベンダはほとんどいないということになる。

 一方、米国のアウトソーシング市場は、システムのホスティングや保守・運用を行う単純なアウトソーシングから、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やBTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)など、より上流で付加価値の高いサービスへとシフトが始まっている。アウトソーシングの料金は2000年から2003年にかけて20〜30%低下。ベンダやシステム・インテグレータは顧客の戦略の近いところで、上流を含めた高度なビジネスを提供することが求められているのだ。IBMによる2002年の米PwCコンサルティング買収などもベンダによる高付加価値サービス提供の流れを示している。
 
 企業がIT部門を売却し、アウトソーシングを利用すること自体がニュースになる日本と異なり、米国ではアウトソーシングを利用するかどうかの議論は終焉。「どのようにアウトソーシングサービスを利用するかが問われている」(袖山氏)という。その際のポイントは3つ。「料金モデル」「オフショア」「ガバナンス」。料金モデルは、アウトソーシングの技術や価格で差をつけることが難しくなり、料金モデルの違いが他社と差別化する源泉になりつつある。現状では固定料金、従量課金、固定+従量課金などの料金モデルが多いが、今後は業績や収入、コスト削減効果など各種パフォーマンスをベースにした料金モデルが増えると袖山氏は予測している。

 また、オフショアでは今後、開発に加えて運用のオフショアが増えると予測。例えば、米国の金融業界では今後5年間で雇用の8%分が海外に流出するといわれ、袖山氏は「米国の海外向けアウトソーシング市場は2005年には2003年の3倍に拡大する」と指摘した。オフショア先もインドからイスラエル、アイルランド、中国、ロシア、フィリピン、東欧などに広がるという。ITガバナンスの見地からアウトソーシングに関する企業での統一した利用モデルの整備も進む。各部門ごとのアウトソーシングやオフショア開発の利用ガイドラインではなく、企業や業界として統一された基準やスキームが確立される動きがあるという。

 これら米国の動きは確実に日本にも押し寄せている。国内のアウトソーシング市場は堅調に推移するが、「どのアウトソーサにとっても長期契約、確実な収益が見込める“おいしい”ターゲットは少なくなってきている」というのが現状。今後は各社が戦略を打ち立てたうえで、サービスの質にかかわる競争になる。その際のポイントは米国同様に料金モデル、オフショア、ITガバナンスになると袖山氏は見ている。IT部門のリストラを目的とした単純なアウトソーシングから「事業創発型」のアウトソーシングへの転換が国内ベンダには求められているようだ。

(編集局 垣内郁栄)

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