Webブラウザの限界を乗り越える手段、リッチクライアント

2004/1/28

 現在では、グループウェアやCRM、SFAといった多くの企業内アプリケーションがWebブラウザから利用可能になっている。その一方で、Webブラウザの静的な画面の限界を超えて、より高度なユーザーインターフェイスやアプリケーションの柔軟性を実現しようという動きがある。アットマーク・アイティは1月27日、Webブラウザに続く新しいクライアントソリューションをテーマにしたイベント、「リッチクライアントソリューション カンファレンス Spring 2004」を開催した。

パネルディスカッションでは、Webブラウザの限界が指摘された

 アットマーク・アイティ代表取締役 藤村厚夫氏は基調講演で@ITの読者調査を引用、「開発者の視点からはすでに1割がリッチクライアントによる開発に着手しており、予定/検討している開発者も6割近くにのぼる」とし、すでに多くの開発者がWebブラウザに続くソリューションとしてリッチクライアントに高い興味を持っているとした。

 続くパネルディスカッションでは、パネリストからWebブラウザの限界が指摘された。ヤマト運輸 オペレーション部 情報システム課長 小佐野豪績氏は、各拠点に配布していた業務アプリケーションをVisual Basic(VB)からWebブラウザベースに切り替えた途端に「使いづらくてよく分からないという非難がユーザーから山のようにきた」という。つまり、Webブラウザではアプリケーションの配布がVBよりも容易な一方で、ユーザビリティに難があるということだ。

 メディア情報開発の代表取締役社長 山田隆信氏は「業務システムでは、左手で伝票入力して右手で伝票をめくるような場面が数多くある。こうしたことに対応できなければならない」と、Webブラウザによるアプリケーションの限界を指摘。一方でアドビ システムズ インテリジェント ドキュメント部 フィールド プロダクト マネージャー 小島英揮氏は「定型業務だけでなく、非定型なワークフローも取り込めるような、システムを新しくするメリットを顧客に提供できなければ、なかなか投資してくれないのではないか」と、Webブラウザを超えた柔軟性がリッチクライアントに求められるとした。

 ヤマト運輸の小佐野氏は「Webブラウザのアプリケーションは使いづらい」という問題の解決策として、リッチクライアントが非常にうまく機能したと発言。Webブラウザ上で機能するモジュールを導入してリッチクライアントを実現した結果、画面のレスポンスなどが大幅に向上し、「ユーザーからの評判もよくなり、さまざまなユーザーの要求にもこたえやすくなった」という。リッチクライアントを導入することで、アプリケーション配布はWebブラウザと同様にサーバから動的に行われる一方で、VBのような高度なユーザーインターフェイスを実現できることが利点だとした。

 リッチクライアントの1つであるFlashを提供しているマクロメディアのサーバーテクノロジー マネージャー 須賀正明氏は、「Flashで業務システムを開発するのは難しくないか?」という質問に対して、「JavaScriptに準拠したスクリプト言語などが備わっており、最新バージョンではVBのようなビジュアル開発機能も用意した」と、同社のリッチクライアントソリューションが企業向けにも十分対応できることを紹介。

 Biz/Browserを提供しているアクシスソフトのマーケティンググループ ジェネラルマネージャ リッチクライアントエバンジェリスト 山形浩一氏は、「Webブラウザでミッションクリティカルな企業アプリケーションを実現することにフォーカスした」と同社の製品コンセプトを紹介したうえで、Webサービスに対応させた新製品や、サーバ側のフレームワークまでも含んだ提案をしていくと今後の予定を語った。

 ディスカッションの総括として藤村氏は、リッチクライアントの採用は、Webブラウザだけで構築したクライアントと比べて、定型業務でのユーザビリティや効率の向上や伝票印刷品質の向上、非定型業務での適用分野の広がりといったユーザー側のメリットと同時に、開発するエンジニアにとっても、開発生産性の向上と柔軟性の向上で、ユーザーとのポジティブな関係を作りやすくできるといったメリットを挙げた。そして、リッチクライアントが今後の企業システムにおける1つのトレンドになっていくとの考えを示唆した。

(編集局 新野淳一)

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