IBMがソフト戦略を方向転換、ソリューション重視を加速

2004/2/17

 米IBMのシニア・バイス・プレジデント兼グループエグゼクティブで、同社のソフトウェア事業を率いているスティーブン・ミルス(Steven A. Mills)氏は「個別ブランドのテクノロジを連動させて個別業界向けに提供する」と述べ、従来のブランド別の製品戦略を転換し、業界別ソリューションの提供に力を入れる考えを示した。

米IBMのシニア・バイス・プレジデント兼グループエグゼクティブ スティーブン・ミルス氏

 IBMは「DB2」「Lotus」「WebSphere」「Tivoli」「Rational」の5つの製品ブランド別に製品戦略を展開してきた。しかし、今後はこれらブランドの個別製品を組み合わせて、金融や自動車、小売などの業界別に適切なソリューションを提供することになる。ミドルウェア上で動作するアプリケーションのベンダとも協力を強化。顧客に対して「包括的な価値を提供する」(ミルス氏)というのがIBMの売りだ。ブランドの各製品を組み合わせることでフレキシブルなソリューション設計が可能になり、「ビジネスパートナーにとってもうまみがあるだろう」と述べ、パートナーにとっても歓迎すべき施策との認識をミルス氏は示した。

 もっともミルス氏によるとIBMはブランド別の戦略ににこだわってきたわけではなく、「ソリューションへのフォーカスは過去から行ってきた。ただ、2004年から方向転換を加速することになった」という。方向転換を強める理由の1つは顧客が、より柔軟なシステムを求めているから。ブランドの個別製品やパートナーのアプリケーションを組み合わせて構成する業界別のソリューションは62種用意しているといい、「われわれの市場での競合優位性を向上させるだろう」とミルス氏は新戦略に自信を見せた。IBMのソフトウェア事業の2003年の売り上げは150億ドル。そのうち120億ドルはミドルウェア関連の売り上げで、今後もミドルウェアへのフォーカスを強めるという。

 ミルス氏はLinuxビジネスを強化する方針も明らかにした。IBMはLinuxを「長期的にはUNIXタイプのOSの中でNo.1になる」とみている。2003年に企業の基幹システムなどミッションクリティカル分野での採用が始まり、2004年は採用の動きが加速するという認識だ。LinuxのクライアントPCでの利用についても「サポートを拡充する」という。

 ただ、ミルス氏はミドルウェア分野でのオープンソースソフトの普及については懐疑的。「顧客から見た場合、システムの要件を満たすのにオープンソースのミドルウェアが適切かどうか」が問われるとして、商用ミドルウェアと比較してオープンソースのミドルウェアがミッションクリティカル分野で、性能、信頼性が低いとの認識を示した。廉価なミドルウェアを求めて、オープンソースのミドルウェアを検討する顧客に対しては、「低価格で使いやすいWebSphere、DB2を提供している」といい、「顧客には費用対効果を見て採用いただける」と自社ミドルウェアへの自信を見せた。

(編集局 垣内郁栄)

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